04

感情に扉を(side.秋月)




「紅狼!」


 るせー。


「オレを何処に連れていく気だ!」
「風紀んとこ」
「風紀!? なんで?」


 るせーんだよ。
 鳥だからって、ピーチクパーチク言ってんじゃねー。


「なんでだよ!」
「キイチがテメーを呼んでるからに決まってんだろ」
「へ? キイチさん?」


 呼んでっから探してやってたのに、生徒会室にいやがったとは。
 しかも、王子サマと一緒に。

 あーイライラする。


「なんで風紀?」
「キイチが委員長してるからに決まってんだろ」


 ちっとは頭を使え、この鳥頭。


「へー、キイチさんが風紀委員長……すっげぇ似合うな!」


 生きた化石かってくらいの堅物だからな。


「それはそうと、後でちゃんとマーヤに謝れよ!」


 ……マーヤ?
 あぁ王子サマか。


「るせーよ」


 どうせ、もう笑ってやがる。
 周りの人間にチヤホヤされて。
 そうに決まってる。


「謝れ! マーヤはデルタの総長に騙されただけだ!」
「はっ、どーだか」


 騙された? ありえねーだろ。


 古宮 晃大と、神原 真彩。
 初等部から鴫川に通う、いわゆるお坊っちゃま組。
 そん中でも異彩を放つ2人は、いつも行動を共にしていた。

 幼なじみだと公言してやがる。

 そんだけ一緒にいるヤツの嘘も見抜けねーのかよ。
 馬鹿みてー。


「ついた」
「おう! って、ノックくらいしろよ」


 るせーんだよ。
 別にいいだろ。
 どうせ中には、キイチしかいねーんだ。


「おい、連れてきた」


 五十部 輝一郎。
 風紀委員長であり、剣道部部長。
 絵に書いた堅物だ。


「ノックは礼儀だと思わんのか、秋月」


 睨むな。
 お前に払う礼儀なんてねーよ。


「キイチさん! 久しぶり!」
「あ、あぁ」


 鳥が笑いかければ、キイチの頬は弛む。
 堅物がなんて顔してんだよ。
 ……笑える。


 この2人が知り合ったきっかけは俺。
 鳥と街にいたときに、キイチと鉢合わせた。
 ただ、そんだけのこと。

 キイチは鳥に惚れたらしい。
 学校にいることを伝えれば、血相を変えて、呼べと言ってきた。


「じゃーな」


 これ以上、付き合ってらんねー。
 2人で仲良くしてろよ。


「あ、紅狼! 何処行くんだよ!」
「昼寝」


 メシ食った後は、ねみーから。
 さすがに屋上はさみーな。
 保健室でも使うか。


「授業はどうするつもりだ」


 5限目はとっくに始まってる。
 途中から入るのは、めんどくせー。

 俺が戻るなら、鳥も戻らねーと。
 転校初日から授業サボってるじゃねーか。


「授業に出ろ」
「あー、6限目にはな」
「秋月」


 凄んでみせても、恐かねーんだよ。


「風紀の名を使っても、庇えないものもあることは分かっているな」


 るせー。


「秋月!」
「わーったよ!」


 はぁ、と嘆息するキイチ。
 ため息つきたいのはコッチだっつーの。


「紅狼」
「んだよ」


 鳥まで。
 何か用かよ。


「ちゃんと、謝れよ」


 お前も大概しつけーな。


「へいへい……」
「絶対だからな!」


 だから、うるせーんだよ。


 返事をしながら風紀委員室を出る。
 後ろ手で閉めた扉は、バタンッと大きな音を立てた。



 揺れる瞳。
 押し付けた時の体温。
 残る感触に、イライラする。


 

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