02

鳥と、狼(side. 秋月)



 転校生は“鳥”だった。
 “緑鳥”と呼ばれる俺の仲間。

 ……てめぇかよ。
 無駄に目立ってやがる。


「あ、紅狼!」


 変な名前で呼ぶな。
 つーか、話しかけてくんな。
 俺を見つけんな。


「お前もこの学校だったんだな!」


 人懐っこい笑みに、毒気を抜かれる。
 俺にしては珍しく、受け入れている人間だ。
 ……自分でも何だがな。

 相浦 光。
 知り合って随分経つが、初めて本名を知る。


「おい、鳥」
「鳥ってゆーな!」


 ヒカルって呼べよ!

 鳥でいーじゃねぇか、鳥頭。
 ここは学校で、転校生だから目立ってることさえもう忘れてんだろ。

 それはそうと、


「俺も?」


 “も”って何だ。

 『凍鉄』の人間は俺だけ。
 お前を入れても、まだ2人目だ。


「そうだよ! 何で『デルタ』の総長が生徒会長やってんだよ!」


 訳分かんねー!

 叫ぶな。
 俺だって知るか。
 生徒会選挙で、アイツに投票した奴等に聞け。


「るせぇよ、席に戻れ」


 時計を見れば、もう始業のベルがなる頃だった。

 俺の席は、廊下側の先頭。
 鳥の席は、窓側の最後尾。
 ──対角線上の、最も遠い席。


「……ここに置かせとけば良かった」


 思い出す昨日のこと。
 そうすりゃ鳥は、俺の前の席だった。


「何か言った?」
「あ? 何も言ってねーよアホ」


 後悔先に立たず。
 席の場所を指摘したのは俺だ。


「後でな!」


 もう来んな。

 上機嫌のまま、鳥は席をつく。
 机の扱いが乱暴だ。
 ガタガタ音たててんじゃねーよ。

 折角王子サマが運んだっつーのに。
 親衛隊に告げ口すれば、鳥とはいえ無傷じゃすまねーぞ。
 もちろん親衛隊なんかに話してやる気はないが。


 机を運んだ本人を見れば、優雅に文庫本を読んでいた。
 蜂蜜色の髪が揺れる。

 黄昏王子。

 馬鹿馬鹿しい渾名。
 ぼーっとしてるだけの、お人好しだ。
 虫酸が走る。



 思い出すのは昨日の、
 机を運ぶ指が痛々しいほど赤かったこと。


 

 

[ 3/29 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]



main
top




「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -