06

柔らかなトゲ(side.秋月)


 ねみー。
 さみー。
 なんで学校来なきゃなんねーんだ。

 こんな朝早くに。
 叩き起こしやがって。


「……そう睨むな」
「るせー」


 キイチが叩き起こしやがった張本人。
 睨んで何がわりーんだよ。


「相浦が、生徒会とも関わりを持ったと報告してきたのはお前だろう。親衛隊が動いている可能性が高い」


 早めに釘を差しておかなければ。

 はりきっちゃって馬鹿みてー。
 釘を差す相手は、親衛隊。
 もう動いているはずだから、その現場を押さえるため。

 ご苦労なことで。
 で、なんで俺も巻き込まれねーといけねーんだか。


「相浦が心配ではないのか」
「全然」


 んなことで傷つくタマかよ。
 あの鳥が。

 話してる内に、教室に近づいてきた。

 2‐2。

 中にはもう誰かいやがる。
 話し声が聞こえた。
 キイチはドアに開けようとして、止まった。


『僕のクラスで、二度とこんなことしないでもらえるかな』


 聞こえてきた声。
 聞きなれた声。
 その中に、少しだけ含まれるトゲ。
 ……王子サマかよ。


『今すぐ、僕の教室から出ていってくれるよね』


 低くねー声。
 威圧してるつもりかもしれねーけど、全く怖さを感じねー。

 そう思ったのは俺だけか。
 背の低い親衛隊のヤツらは、後ろの扉からバタバタと逃げていきやがった。

 何が釘を差す、だよ。
 王子サマに先越されてるじゃねーか。
 キイチのヤロー。
 来た意味がなくなった。

 廊下に立ち尽くす俺とキイチ。
 教室で、鳥の席を見つめる王子サマ。
 表情は見えねー。
 握りしめた手が感情を物語っていた。

 昨日のこと。
 押し付けたこと。
 怒りをぶつけたこと。
 結局、謝ってねー。
 あの後授業に来なかったヤツが悪い。

 早朝の教室。
 ひとり片付けをする姿。
 見ていられなくなって、教室のドアを開けた。

 扉の音が無駄に響いた。

 

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