不器用だけど
「あれ、ヒカリさん?」
「あら、ななしじゃない。今日もお疲れ様」
「ありがとうございます。ヒカリさんは何をしているんです?」
私が訪ねると、ヒカリさんは指であるものを指していた。指の先を見ると、そこにはプリンが浮いていた。
プリンは風船ポケモンだけあってよく浮いている。気が付けば宙に浮いていることがほとんどで地に足をついているところを乱闘以外で知らない。
私が手を振ってみると、プリンは気が付かないのかそのまま風に流されるだけだ。
「多分遠くには行かないと思いますけど……」
「違うわ、あれを見て」
ヒカリさんがまた指をさす。指の先を今度は追えば、向こうからリドリーさんが飛んでくるのが見えた。
このままいけばプリンが吹っ飛ぶのが目に見えている。止めなければ。
「プリンー!リドリーさんがこっちに向かってきてます―!」
「プリ?」
「ダメね、まったく気が付いてない」
そうしているうちにもリドリーさんがプリンに接近していってきている。このままじゃプリンが飛んで行ってしまう。
その時、私の横から強い風が吹いた。一瞬何が起こったのかわからなかったが後ろを振り返ればヒカリさんの姿がなかった。
「世話が焼けるわね!」
「プリュ」
見ると、ヒカリさんが高速で動いてプリンを抱え、すばやく着地した。リドリーさんはこのまま突っ切っていってしまったようだ。
プリンは何が何だか分かっておらず、ヒカリさんをただ見つめるだけだった。駆け寄ってきた私にプリンを渡した。
「プリン、大丈夫?」
「プリィ」
「次からは気をつけなさいよ」
「プリ」
ヒカリさんはそう言ってプリンを撫でた。プリンは気持ちよさそうに笑っている。
私はそんな1人と1体を見て、フフッと笑った。
「ちょっと、何がそんなにおかしいのよ」
「ヒカリさん、優しいなって」
「そ、そんなことないわよ!じゃあね、ななし!」
ヒカリさんは顔を真っ赤にしてこの場を去っていった。残された私とプリンは顔を見合わせ、館に戻るのだった。
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