ナイショの林檎


私は控室を回っては掃除をしていた。今、ファイターのみなさんは食堂に行ったり、各々の部屋に戻ったりしている。
私は控室の1室を開ける。そこにはロイさんがいた。

「あれ、ロイさん」
「ああ、ななしか」

ロイさんは手を振った。私は一旦ロイさんの隣に座った。
「水でも持ってきましょうか」と声をかけた。ロイさんは「いいや、大丈夫だ」と返した。

「戻らないのですか?」
「いや、君を待ってたんだ」
「私を?」
「うん。これを渡そうと思っていてね」

ロイさんはそう言って林檎を取り出した。そういえば今日はグリーングリーンズがステージに選ばれていたんだっけなと思い出す。
私は「ありがとう」と言って林檎を受け取った。切るものを持ってこようとすると、ロイさんがちょっと待っててね、といった。一体どうするつもりなんだろうか。

「それを……こう!」

ロイさんは手に持ってる剣……ではなくどこからともなく出したナイフで林檎をスパッと切った。綺麗に六等分に割れた。
私は思わず感嘆の声をあげる。

「すごいですね……!」
「はい、切れたよ。ななしさん、どうぞ」
「ありがとうございます。ロイさんも」

私は切った林檎をロイさんに差し出す。私とロイさんは林檎を食べ始めた。
とても甘い、けど酸っぱい果汁の味が広がる。さすがはグリーングリーンズのウィスピーさんの林檎だ。

「美味しいです」
「それはよかったよ」
「マスターやみんなには内緒ですね」
「うん、そうだね」

私とロイさんは顔を見合わせて笑った。
その後、私とロイさんは林檎を食べ、談笑していた。そろそろ掃除に戻ろう、と思って立った時、ロイさんがこう呟いた。

「また、お話しましょう」

そう呟いて、ロイさんは控室を去った。私もまた、掃除に戻るのだった。

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