目薬


「うーん、上手くできませんね……」
「ちょっと、貸してください」
「えっ、そんな、悪いよ」

私は今、目薬を差そうとしている。そんな折、それを見かねたシュルクさんが手伝おうか?と提案してきたところだ。
ちなみにここは図書室であり、本を読もうと思った矢先、目がバシバシするので目薬を誘うと思っていたところでもあった。
目薬を差そうとするのに手助けがいるのかどうかは謎だが、私は「遠慮しておきます」と断った。
シュルクさんは残念そうな顔をして見つめる。そんながっかりしなくても。

「じゃ、じゃあ、目薬差すところでも見ます?」
「うーん、じゃあ、見てるよ」
「なんか恥ずかしいですけど……」

そう言って私は目薬を差した。目がキーンとした感覚に陥り、スースーする。
一方でそれを見ていたシュルクさんも「おっ!」と声をあげる。やっぱり見られてやるのって恥ずかしいな……。

「もう片方もやるんだよね?」
「うん」
「じゃあ僕にやらせてよ」
「人にやってもらうのはちょっと怖いのでやっぱりやめておきます」
「なんだ、じゃあ僕はななしを眺めているよ」

私はシュルクさんが見つめる中、もう一つの目にも目薬を差した。やっぱりスースーするな。
二回ぐらい瞬きをする。目薬が目に広まり、スーっとした爽快感が走る。
それを見ていたシュルクさんが「お疲れ様」と返してくる。

「ありがとうございます、シュルクさん」
「いや、そんなお礼言われるほどじゃないさ」
「ところでシュルクさんはなんか用事でもあったんじゃないんですか?」
「あ、そういや本を借りようと思ってね」

シュルクさんは思い出したかのように図書室の奥へ消えて行った。なんか恥ずかしいところをじっと、まじまじと見つめられたと思いつつ、私は赤面した。
こんな姿を人に見られるのはちょっと恥ずかしいな……と思いつつ、私も読みかけの本をまた読み始めるのだった。この顔の火照りはそうそう止まないかもしれない。

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