新人、来訪


「さて、そろそろ買い出しに行かないと」

私は買い出しに出ようと館のドアを開ける。
乱闘中でもストックが足りなくなれば買い出しに出かける。スポーツドリンクを切らしてしまったのでその買い出しに行く途中だ。
ドアを開け、風が強く吹いていることを確認した私は、吹き飛ばされないようにスカートを抑える。

「風が強いなあ……」

進もうとしたが前方に何かが飛んできていた。カービィだ。
確かカービィは今日は乱闘がないからって外で遊んでいたはずだ。風に吹き飛ばされてきたのだろう。
このままカービィがぶつかってくる。キャッチしようとするも間に合うどうか怪しい。
間に合わない!と思って目をつむるもカービィの柔らかい感触はない。恐る恐る目を開けると緑の髪の男の人がカービィを抱きかかえていた。
あれ?こんな人、館にいたっけ……?と疑問符が浮かび出る。確かそんな人はいなかったハズだ。
男の人はカービィを私に渡してきた。カービィは「ぽよ!」とお礼を言ってるようだ。

「大丈夫か」
「あ、はい、ありがとうございます」
「ぽよー」
「そうか、それはよかった」

男の人はそう言って、館に入ろうとする。素性の知らない人を館に入れる訳にはいかない。
そう思った私は扉の前で立ち止った。男の人は無表情のままこちらを見つめた。

「……そこをどいてくれないか」
「いや、その前にあなた何者なんですか」
「今日、こちらに来ると伝えたはずだが」
「そんなことマスターは一言も言ってなかったんだけど……」

私はマスターの言動を思い返す。「新しい人が来ますよ」みたいなことは一言も言ってなかったはずだ。
と、その時、通信が入った。マスターハンドだ。

『ななし、いるかい?』
「マスター、どうしたんですか?」
『今日、新しい人が館にくるらしいんだが……』
「もしかして、この人ですか?」

私はそう言って男の人にカメラを向ける。マスターはその男の人を見るなり『ああー!!』とフリップを上げながら大騒ぎする。
私と男の人、そしてカービィは無言でマスターを見つめる。マスターは『紹介が遅れてごめんねー』と謝罪のフリップを上げる。いや、前もって言ってくださいよ。

『ごめんごめん。彼はベレト君だよ。今日付けでこの館に住むことになった新しいファイターだよ』
「……ベレトだ。よろしく頼む」
「あ、私はななしです。先ほどはすいません」
「カービィ!」

私は自己紹介と共に不審者と間違えたことを謝罪する。ベレトさんと名乗った男の人は「いや、こちらこそすまない」と謝罪しかえした。
カービィもいつの間にか私の腕の中にすっぽり収まり、ベレトさんに挨拶をしている。
マスターは『じゃあ後はよろしくねー』と言って帰ってしまった。あまりにも唐突すぎないか。

「じゃあ、ベレトさん。よろしくお願いしますね」
「……ああ」

ベレトさんはこのまま館へ入っていった。カービィもこのまま私の腕から離れ、庭へ行ってしまった。
残された私もまた、買い出しに向かうべく、歩きだすのだった。


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