戦国BASARA短編 | ナノ
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▼ おクスリ革命

※本番がない媚薬ネタ


悪い事と予想だにしない事と言うのは何の前触れもなく起きるものらしい。
名前はしっかり着込んでいる着物を今すぐ脱いでしまいたい位に思っていた。
呼吸をする度、肌に摺れる布が憎らしい。
一層の事、空気か水の様な姿形がない物になってしまいたいとすら思う。

「皎月よ、様子はどうだ?」
「すこぶる悪いわ、刑部……。貴方、茶に一体何を盛ったの?」

吉継が名前に毒を盛る事はない事位は理解している。
それなりには吉継とは仲が良いし、意思の相通だって出来ている。筈だ。
頬を真っ赤に火照らせて、床に這い蹲って自分を睨み上げる名前に吉継は意地悪く笑った。
また、何か良からぬ事を考えているというのはすぐに名前も理解はしたが。

「これだけでも答えて。一体何を盛ったの?」
「その体の異変で気付かぬ主ではなかろ?」
「……答えが間違っていて欲しいから尋ねているの」

少しだけ纏う空気に怒りを混ぜる。
すると吉継は大仰に「おお、恐ろしや」とおどけてみせ、それから名前にガラス製の高そうな小瓶をちらつかせた。
中には桃色にも薄紫色にも見える綺麗な液体が半分程注がれていた。
しかし、綺麗なものには何時も何か裏がある。
名前はそれを知っていたから、その液体が矢張りよからぬ物だという事を理解し、警戒した。
尤も、警戒するのが遅かったのだけど。

「これは媚薬よ、ビヤク」
「!! やっぱり……。でも、そんな物を飲ませて一体どうするつもり?」
「三成がぼやいておったのよ。最近主が抱かれてくれぬと」
「……随分と下世話ね、刑部」
「ヒヒッ。大切な友の為よ」

そうは言っているがこれはただ単純に楽しんでいるだけだ。
そもそも、三成はそう言った事は他人に公言などしない。
それは名前だってよく解っている。

「そろそろ三成が来る時間であろ?その様に這い蹲っておったらまたどやされるぞ」
「これは、貴方が!あっ、こら、刑部!!何処に行くつもりですか!」
「主はこれにて退いた、退いた」

面白がったまま部屋を出て行く吉継を追いかけようとするが、体から力が抜けて立ち上がる事が出来ない。
尺取虫の様に這い蹲ったまま追い駆けようとするが、体が敏感になっている所為で動く度に快楽が体を駆け巡り、その場に崩れ落ちた。
みっともない姿だと我ながら思うが、現状では仕方ないと涙を呑む。

「うぅ……、刑部覚えてなさい」
「何をしているのだ、名前」
「!」

顔を上げると其処には不可思議な顔をしている三成が立っていた。
その目は「何故這い蹲っている」と言いたげで、思わず目を逸らす。

「何だ、腰でも痛めたのか」
「そんなんじゃない……。刑部に盛られたの」
「何をだ?刑部が毒を盛ったと妄言を言うつもりか」
「毒なんかじゃない。……を盛られたの」
「? 聞こえん。もう一度言え」

媚薬と言う単語が恥ずかしくて口ごもったら、三成から再度その部分だけ口にする様に言われる。
しかし、それが何とも言えない羞恥にしか感じられず、口を噤んでしまう。
三成の事だから本当に何を言っているか聞こえなかったのだろうけど、地獄耳を持っているんだから今回もそれを使って欲しいと名前は顔を尚も赤くした。
その様に三成は心配そうな表情を浮かべ、しかし訝しげに眉根に一層皺を寄せる。

「名前、そんなに体調が悪いのか」
「体調は、悪くないの。でも、胸の奥が変に高鳴って、お腹の底がキュンって疼いて、何だか良くわからない感じ……」
「なっ。まさか、媚薬でも盛られたと言うのか?」

その一言に名前は無言で、控えめに頷くと三成は器用に耳だけを赤くした。
普段から名前が性に対しておおっぴらではない事は良く解っている。
それでなければ毎回閨で三成の腕から逃げようとしたり、言葉で行為をはぐらかせようとはしない。
三成は上手く言葉を発する事が出来ず、言葉になっていない声で呻きながら名前の顔を見つめていた。
内心では「余計な事を……」と思っているが、実の所今すぐ名前を抱いてしまいたいという感情もある。
白昼堂々と名前を抱くのは憚れるし、名前もそれを望みはしないだろうから。
名前には嫌われたくない。

だが、"据え膳食わぬは男の恥"という言葉だってある。
別に名前は自分から誘っている訳ではないのだけど。

「秀吉様、私は一体どうすれは良いのですか……!」
「秀吉様?何で?」
「いつも貴様は私に抱かれるのを嫌だと行動で示しているだろう。私は名前の嫌がる事はしたくはない。だが、今貴様を抱きたいと、そう思っている」
「……そんな、二律背反に苛まれなくても良いのに……」

快楽が体に走るのを承知で名前は体を動かした。
変に声が出そうになるが、それをぐっと我慢して。
そしてその場に横座りをすると、三成に向かって腕を広げた。

「三成の、好きなようにして。もどかし過ぎて、頭、おかしくなりそう……」
「……良いのか?無理はするな」
「三成だったら、許容出来る。こんな体見せるのは、恥ずかしいけれど三成なら、平気……」
「馬鹿を言うな。貴様の体は何一つ恥じる部分などない。薄っすらと残る傷跡も何もかも、名前の体にあるからこそ愛しく感じるの」

しゃがみ込み、正面から名前の体を抱きしめる。
その拍子に着物の帯を緩めて外し取ってから、その場にそっと名前を押し倒した。
押し倒された際に露出した足首から膝までをその手でゆっくりと、優しく愛撫する。
たったそれだけの事なのに先程自分が動いた時よりも強い快楽が奔った。

「ん……」
「媚薬の効能とは凄い物だな。此処まで感じているのは初めてではないのか、名前」
「それは、自分が下手だって言っている様な物じゃ……ひぅっ!」
「私が女の扱いなど心得ていないのは貴様が一番知っているだろう。だからこそ、閨でも手酷く扱ってしまう……。それを理解しているのではないか」
「あっ、はうぅぅ……」

いつの間にかぐちゅぐちゅといった粘着質な、名前が嫌いな音が鳴る。
足元の愛撫、前戯も程々にといった所だったのだろうか。
膣に埋められた華奢な指が中で動き、頑なになっている壁をほぐす。
その内にもっと大きな質量が欲しいと、淫乱よろしく邪な考えが頭に浮かぶ。

「どうした?随分と物欲しそうな顔をしている」
「やぁ……、指だけじゃ、足りない……」
「ほぅ?今日は殊勝な態度をとるな。だが、まだだ。私はいつも貴様に焦らされていた。だからもう少し、その物欲しそうな顔をしていろ」
「今日の三成、意地悪い……」
「言っていろ」

「そのまま私に身を預けていれば最高の快楽を与えてやれるから、今暫く待っていろ」。
耳打ちでそんな言葉を紡ぎながら、三成は優しげに微笑んだ。


2014/05/15

お題配布元「モノクロメルヘン」

いつも生殺しを食らっていた三成さんの反逆