戦国BASARA短編 | ナノ
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▼ 擽り責め

「家康だけ、ずるいです」

そう言った名前は何故か不機嫌そうな顔をしていた。
そもそも何がずるいのか。最近家康に特別な命を下した事も、何か褒美を与えても居ないのだが。
半兵衛にはこれと言って思い当たる節は何一つなかった。

「名前君、何がずるいんだい?」
「家康は昔、半兵衛様に擽られたと聞きました」
「あぁ、そんな事もあったね。でもそんな事が羨ましいのかい?」
「はい。物凄く」

そう答えた名前の顔は至極真面目だった。
三成もそうだが、彼女も負けず劣らず自分の事が大好きなんだなぁと思う反面、彼女達の思慕が時々怖い。
擽られるなんて普通は嫌だろうに。
半兵衛は自分であれば誰にされても擽られるのは嫌だなとそう思った。
そもそも、家康を擽り倒したのは忠勝を豊臣に呼び込む為だったのだが。
それにそんな昔の話、一体何処で仕入れてきたのか。

「名前君、僕の真正面に正座で座りたまえ」
「はい」
「うん、良い子だね。でも、女の子がそんな事を口にしてはいけない」
「? 何故ですか?」
「君の身の安全の為を思って言っているんだよ」

そう言ってみるが名前は納得していないみたいだ。
本当は半兵衛が教える事ではないのだけど、これは半兵衛の口から性の話をした方がいいのか。
でも半兵衛大好きな名前の事だ。「半兵衛様だったら、いいです」等と言う言葉を言い出す場合だってある。
確かに半兵衛は名前の事を好いているが、彼女の傍に居て良いとは思ってはいない。
彼女にはもっとふさわしい人間が居る筈だ。病に蝕まれている自分よりも。
だからこそ、体をむやみやたらに擽るのは憚られる。

「まず大きな前提を言ってあげるとしよう。家康君は男で名前君は女の子。この違いは解るよね?」
「解ります。でも、男も女も差別はしないと常日頃から秀吉様も半兵衛様の仰っているではないですか」
「うん。でもそれは戦の話だ。擽る事とはまた別になるよ」

すると名前は納得いかないという表情をし、半兵衛に「でも」と言葉を投げかけた。
これがもう少し小さい、本当に六つ、七つ位の幼子なら擽って遊んでやるのになぁと思う。
が、名前はもう十五は過ぎている立派な女性。
女らしい体系になりつつあるのに、そんな事を出来る訳がない。
うっかり胸なんて触ってしまえばきっと半兵衛はいろんな意味で落ち込むだろう。

「三成や刑部であれば、大丈夫でしょうか」
「駄目に決まっているだろう。君はそんなに男に襲われたいのかい?」
「襲われる?」
「僕は色事には興味はないけれど、君の反応一つでその気になって体を汚す事だって出来る。無論それは三成君たちだってそうさ。無理に体を奪われるというのは、君が一番傷つく行為なんだ。僕はそれを抑える事は出来るけど、あえて抑えようとはしない」
「半兵衛様、顔が怖いです……」
「男はね、君が思っているほど馬鹿な物でもなければ優しい物でもないんだよ」

そう言って半兵衛は名前の両手首を拘束し、その場に押し倒した。
病に身を巣食われているとは言え、名前が男である半兵衛の拘束を解ける訳もなく。
少し怯えた顔で半兵衛の顔をじっと見つめていた。
まるで「私が知っている半兵衛様はこんな怖い事はしない」と言いげに。

「半兵衛、様?」
「そうだね……まずは首筋から擽ってあげようかな」
「え?」
「あぁ、それとも腋の下が良いかもね」
「や、半兵衛様っ、其処……やっ?!」

そのまま片手で名前の両手首を拘束し、もう片方の手で名前の横腹を愛撫する様に撫でる。
こうでもしないときっと名前はでもでもだってと言ってくるだろうから致し方ない。
本当に擽るつもりなんて半兵衛には微塵も無い。

なるべく、自分には無い柔らかな膨らみには触れない様に、そっと腋の下に手を這わせる。
するとそれだけでもう既にくすぐったいのか、名前はもぞもぞと体を動かす。
しかし、拘束されている所為かその動きは仰向けになった芋虫みたいだ。

「どうだい?くすぐったいだろう?」
「やっ……。あははは、半兵衛様っ、其処駄目です!」
「へぇ、此処、弱いんだ?今度から名前君のお仕置きはこれで良いかな」
「擽るのが、お仕置きですか?んっ……」

今までくすぐったがっていたのにいきなり名前の笑い声は止み、熱っぽい吐息が口から漏れた。
思わず半兵衛は手を止め、名前の表情を観察する。
頬は上気し、瞳は涙で膜が出来て潤んでいる。
これは笑い過ぎでこうなっているのに違いないと思うが、それであればさっきの吐息は一体何だ。

そんな時、間が悪いにも関わらず半兵衛の部屋の戸が開いた。

「半兵衛。この書簡についてだが……」
「か、官兵衛君」
「黒い、軍師さん?」

間が悪く半兵衛の部屋に訪れたのは二兵衛の内の一人・黒田官兵衛。
二人の状況を見て暫し思考も、その場の時も一緒に停止した。
半兵衛に両手首を固定され、顔を真っ赤にして組み伏せられている名前。
それに半兵衛の掌は官兵衛のから見た角度では見事に発育途中の胸に触れている様に見える。
何も知らない人間から見れば、それはどうみても二人は夜のお楽しみに興じている様にしか見えない。

「すまん。明日にでも出直す」
「何を誤解しているんだい?」
「いや、お楽しみの所を邪魔して済まんかった」
「今のは名前君が擽って欲しいとかそう言った子供の様な事を言うから仕方なくしてあげていただけだよ」
「お前さんらしくも無い冗談だな。どう見てもその体制は女を襲う男のそれだぞ」

官兵衛は不躾に半兵衛に指を指し、指摘をする。

「膝で押し込めるのは流石に止めておいた方が良いと小生は思うがね。いざと言う時つぶ……いってぇ!!こら、半兵衛何をするんじゃ!」
「うるさい、騒ぐな、黙りたまえ。名前君に下品な言葉を聞かせたくは無いんでね」
「あの、半兵衛様?黒い軍師さんは何を……」
「君はあの有象無象の言葉を聞き入れなくても良いよ。いや、耳を傾けてはいけないよ」
「……はぁ」

何だがよく解らないと言いたげな名前の頭を撫でると、「少し怖い思いをさせてしまったね。でも、これに懲りたら擽って欲しいなんて馬鹿な事は言ってはいけないよ?」と、優しく声を掛けて名前の上から降りる。
そして無表情で官兵衛の元まで行くと無言で彼の頭に拳骨を入れて部屋の外に引きずり出した。
その様を名前は呆然としながら眺める。

「……さっきの半兵衛様、凄く男の人らしかった」

片手で拘束された時に感じた、薄くだがしっかりと筋肉のついた体に、骨ばった男らしい手。
仮面を被ったままだったが、端正な美しい顔も間近で見れた。
それに擽る、とは半兵衛も言っていたが体に触れて触られた時のアレは擽りではなく愛撫だったと思う。

「どうしよう、あのまま半兵衛様に触られていたらおかしな事になってたかも……」

今も胸の鼓動が早鐘を打っている。
半兵衛が戻ってきたら、怒られる事を承知でまた同じ事を言ってみようか。
そんな考えすらも名前の頭の中に浮かんだ。


2014/05/07

お題配布元「モノクロメルヘン」

別に擽り責めていない件について
擽ると聞いてまっさきに半兵衛様が出てきました(2のアレ)