戦国BASARA短編 | ナノ
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▼ 思い出色よ、燃えろ

※夢主が盲目


名前はフラフラと危うい足取りで、壁に手を付け、歩いていた。
顔は目を覆う様に白い布が巻かれている。

「みつなり、みつなり。何処?」

その声はいつもの元気の影など微塵もなく、か細くて弱々しい。
しかし、偶然にも近くにいたからなのか三成は名前の声を拾い、慌てて彼女の元に駆けつけた。
そしてぎょっとした顔をした後、思い切り名前の体を抱きしめる。

「っ?!名前!!貴様、何故部屋の外に出ている。死にたいのか」
「三成の熱を感じられないのなら、私は死んだも同然です。それに貴方を写せぬこの眼も死んだも同然。いっその事、抉り取って……」

名前は震えた手で目を覆う布を外す。
露になったその瞳は光など宿してはおらず、白く濁りつつあった。
ぼんやりとした瞳の色に、ただただ悲愴を浮かべる三成の表情だけが写る。

しかし、その三成の姿は名前の手によって遮断された。
弄る様に目玉を探す指先に三成は嫌な予感を感じた。
先の言葉通り、名前は本当に自らの目玉を抉り取るつもりだ。
そんな事はさせまいと、名前の手首をしっかりと掴む。
力を入れ過ぎてしまっているのか、名前の腕からはキシキシと骨が軋む音がした。

「止めろ。そんな事は私が許可しない。名前の目が見えなくなろうと私は変わらず貴様を愛す。それで十分だろう」

酷く優しい声音で。
少しでも名前を安心させられればこう言ったおかしな気は起こさなくなる。
しかし、名前は眉根をひそませ、下唇をきゅっと噛む。
これは名前が事象に納得していない時の顔。
今の三成の言葉に納得していないのか、名前は唇が鬱血する位に唇を強く噛んだ。

「嫌。嫌よ、三成の姿が見たい。あの日の貴方のあの笑みをもう一度だけ……。脳裏に刻まれた姿だけでは物足りないの」
「……」

名前が視力を失ったのは不運としか言い様が無かった。
唸り苦しむ位の発熱に自由に動かす事が出来ない体。
その時は苦しみながらも、朧な視界で三成の姿を視認する事は出来ていた。
三成もそれが永久に続く常だと、そう思っていた。
名前の熱も引き、また何時もの、秀吉と半兵衛の元で戦える日常に戻れると思いきや。
名前は子供の様に喚きながら自らの小太刀で目を突こうとしていた。
寸での所では三成が小太刀を叩き落としたが、あの時の名前の「殺してくれ」と訴えているかの様な顔が三成には忘れられなかった。

出来るのであればこの目を名前に差し出してやりたい。
だが、それは三成には出来ない事だ。
この両目が無いと秀吉と半兵衛の為に戦えない。
秀吉に生を誓っている三成にはそれはとても重要な事だ。
しかし、名前の世界が閉ざされた事も重要な事。
それならば、名前の目になってやれば良い話だが常に名前の傍に居てやる事も出来ない。

だが、名前はそれを望んでいる。
目が見えなくなった事で三成が傍らにいないと何もかもが不安で仕方がないみたいだ。

「い、嫌。三成、何か言って。其処に居るんでしょ?ねぇ……ねぇ!?」
「……安心しろ、私は此処に居る」
「良かった。また、三成が何処かに行ってしまいそうで怖かったの……」
「そうか。……だが名前、私にも秀吉様から賜った役目がある。ずっと傍には居てやれん」

背中に回された名前の腕が、少しだけ強く陣羽織を掴む。
まるでそれは「我儘なのは解ってる。でも……」と言いたげで。
この調子では離れたりしてはまた泣き始めるに違いない。

「安ずるな。今日はずっと傍に居てやれる」
「……私の我儘に無理に付き合わなくても良いんですよ?」
「構わん。私が貴様の傍に居たい、ただそれだけだ。気にするな」
「……ありがとう、三成。大好き」
「そんな言葉、一々口にするな」

そしてそのまま名前を横抱きにし、名前の部屋へと連れて行く。

「まずは食事を摂る。私が食わせてやる、何時も貴様が私にそうした様に……」
「……やだ、考えたら少しだけ恥ずかしい」
「私はいつもそうして辱められていたがな」
「でも、三成に食べさせてもらえるなら幸せかも……」
「……好き物が。名前」

不意に真面目な声で呼ばれ、視力を失う前のそれと同じように首を傾げる。
目蓋は何時もの様に開かれたままだが視力がなければ何の問題もない。
息を弱くし、優しく食む様に名前の唇を舐める。
下唇を強く噛んでいた所為か滲み出した血の味がする。

「三成……貴方、今」
「私が、何だ」
「今、何かした?」
「何もしていない。断じて何も」
「……うそつき。唇を舐めたでしょ」
「っ、やはり視力があるのではないのか、貴様」


2014/05/03

お題配布元「nightmare girl」

Twitterの「#うちのこが盲目になったら」タグにて発生のネタ