戦国BASARA短編 | ナノ
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▼ 過去縋りの無気力症候群

※死に関する描写有、夢主がメンヘラ気味、戦国時代の記憶リンクしてます


名前は無気力気味に机に腕と上半身を放り出して突っ伏していた。
流石に授業中は確りと授業は受けているが、休憩時間になると最近はいつでもこうだ。
元就はそんな名前に溜息を吐いた。

「何をしておる、名前」
「……もとなり、さま」
「机にへばり付くな、みっともない。最近弛んでおるのではないのか」
「そうですねぇ、最近気力の灯が消えかけていて」

「こうでもしていないとやっていけないです」と力も希望も無い声で呟く。
最初は部活に支障がなければ言いと、そう思っていた。
しかしこうも毎日目の前でだれられていては気になってしまう。
寧ろ目障り極まりない。
今も元就と話をしているが姿勢を正さないし、正そうともしない。
元就は名前の胸倉を掴むと無理矢理姿勢を正させる。

「名前、そなた……我を虚仮にしているのか?」
「してません。元就様、少し放っておいて下さい。私、言葉を発するのも嫌なんです」
「見事に堕落しておるな。だが、そのままだれられておっては迷惑だ。他所へ行き寝転がればよかろう」
「その移動すら億劫です」

がくんと糸の切れた人形の様に名前の体は前のめりになる。
机に頭がぶつかると思い、元就は咄嗟に名前の体と机の間に腕を挿し入れてそれを阻止する。
危ないものだ。そう思うが名前の瞳は未だにぼんやりとしたままだ。
このままでは今度は椅子から落ちる。

元就は名前の腕を自分の首裏に通しそのまま廊下に引き摺っていく。
音楽室であれば今日は授業で使わない筈だと記憶を辿り、音楽室へと引き摺っていく。

「元就様?何処へと向かっておられるのです?」
「音楽室よ。あそこであれば誰にも邪魔されずだれる事が出来る」
「……貴方様恩自ら私を連れて行く、と?」
「そうでもせねば動かぬだろう。面倒だが連れて行ってやると言っているのだ。感謝せよ」

吹奏楽部部長特権で常時手にしている鍵で音楽室を開け、名前を放り投げる。
床に叩きつけられて体全体が跳ねるが無気力の名前は何も言わないし、反応もしない。
面白くない。そう思った元就はがちゃんと業と大きな音を立てて音楽室の鍵を内側から掛けた。
そしてゆっくりと名前に近寄り、馬乗りになる。

流石に無気力を拗らせている名前も反応を示した。
反応、とはいっても矢張りそれは微々たる物で、気付かぬ人間には気付けない位の物なのだけど。
普段の名前であれば顔を真っ赤にして「止めて下さい、元就様っ!!」と大声で喚き散らすのに。
その反応が見たかった元就は強く舌打ちをして、無理矢理に名前の制服のリボンを解く。
「何を、されているのです?」
「無気力であれば、何をされても反応はしないのであろう?」
「?」

名前のブラウスのボタンを一つずつ指先で外して行く。
一体、自分は何をしているんだ。そう思うがボタンを外す指を止められない。
名前の事は確かに女として好いていた。
しかし、それは名前に言わなくても言い事だったし、言うつもりもさらさらなかった。

「元就様は、私の体が欲しいのですか?」
「! 黙れ」
「元就様のお好きなようになさって下さい。元就様であれば、この体、お好きなように使っていただいて構いません故……」

その一言に元就は嫌悪の色を示し、名前の頬を殴った。
しかし名前は殴られた事に激昂もしなかったし、痛みに表情を歪ませる事すらしなかった。
変わりに頬を染めて、喜んでいる様に見えたが。
その表情を見た途端に元就の背に冷たい感覚が迸った。

「貴様、壊れたのか?」
「壊れてなんかおりません。ですが、望んでいる事があるのです」

元就に細い腕を伸ばし、指先で頬に触れる。
そして鈴が震えるような、耳障りの良い音で元就に囁く。

「あの日の様に、私を殺してくださいませ。元就様」

そう言った名前の表情は残酷なまでに美しくて。
あの信長の妹・お市の様な危うさを急に醸し出す。
これは、名前ではない。そう思いたいが頬に触れている名前の体温も、ブラウスの下にある体も元就が知る名前そのものだ。
以前、うっかり名前が着替えている所を見てしまった事があったが、名前の腹に小さな切り傷の跡が残っていた。
その傷は遠い昔、名前が負った傷と同じだった。
腸がはみ出し、血も吹き出し生きていく事が困難な状態。
そんな名前を元就は輪刀で首を落として殺した。
転がり落ちた名前の生気を失った瞳に映っていた自分は、恐ろしい位に冷徹な表情を浮かべていた。

元就はその事を思い出し、切れ長の目を大きく見開きながら、ひゅうっと喉を鳴らす。
心臓の鼓動が五月蝿い。破裂しそうな位に高鳴っている。
そして元就は叫び声を上げながら名前の喉を両手で押さえ、締める。
その行動に名前は、あの時の、最期に浮かべた柔らかな笑みを浮かべた。

「我はそなたを殺したかったのではない!!」
「でも、あの時の貴方様は、躊躇など、無かったっ」
「黙れ……、黙らぬか名前!!」
「でも、私は、それが嬉しかった。がほっ……、元就様の、駒でいられたんだと、思ったから」
「我は、貴様が……、そなたが死に逝く様など見たくはなかった。だから、この手で、殺した」

名前の首から手を外し、今までその首を絞めていた両掌を見る。
その手は酷く震えていて、触れていない筈の血で赤く染まっていた。
名前はもう一度元就に手を伸ばし、今度は手に触れる。
酸素が頭に巡っていない所為か、酷くよろよろとしているが。

「……貴方様は、昔から、冷酷になれない部分があった。……ごめんなさい、この平和な世の中で貴方様を犯罪者にする様な事を口走って、ごめんなさい」
「……良い、気にするな」
「えへへ、元就様はやっぱり、お優しいですね。だから、今生でも、貴方様にお会い出来て嬉しかった。貴方様のいらっしゃる部に入ろうと思った」
「ならば今後無気力になどなるな。これは頼みではない、命令ぞ」
「……お優しいですが、手厳しい所も相変わらずなのですね」
「口を閉ざせ阿呆。そなたも相変わらず口が減らぬものよ。いや、昔よりも酷い」

その一言にいつもの様に「ふふっ」と笑う。
元の名前に戻ったかと一瞬だけ歓喜の感情が脳を支配する。
しかし、それは表に出さない。

「ねぇ、元就様。私の事を、如何思われておりますか」
「何ぞ、唐突に」
「気になったのです。元就様は以前から私の事を気に掛けて、今もこうして気に掛けて下さっておりますから。それに、嫌っていなければこうしてブラウスのボタンも外したまま、ましてや馬乗りになったままではおりませんでしょう?」
「……性格まで悪くなったか。貴様、矢張り壊れているな」
「貴方様がそう思われるのであらば、そうなのでしょうね」
「……勝手に壊れるなど、気に食わん」

そう言って眼鏡を外すと元就は前のめりになって、名前の唇に噛み付いた。

2014/07/28