戦国BASARA短編 | ナノ
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▼ 好きだからこそ悩む

バレンタインの続き


先月、三成は名前からバレンタインのチョコを貰った。
別に付き合っているからそれは良いのだが、他に困った事がある。
それは名前に返す物をどうしたらいいかだった。
普段から人に贈り物などしないからどうすれば良いか解らない。
そもそもバレンタインもそのお返し行事、ホワイトデーも三成は興味が無いからどうしたら良いかなど見当が付かない。

「何を贈ればいい」
「無難に飴でも贈れば良かろ。皎月は甘いものをよく口にしている故、喜ぶであろうな」
「飴など贈って何が楽しい」
「……三成。ホワイトデーの返品は飴やクッキーが定番であるぞ」

誰もいない、放課後の生徒会室で三成から相談を受けていた吉継は面倒臭そうにそう言った。
吉継も名前からバレンタインのチョコを貰っているからお返しを用意しているのだが、それは彼女が好きそうな小さな熊のぬいぐるみが付いたキャンディーの詰め合わせを用意していた。
それはあえて口にはしないが。

「そもそも主は皎月と付き合っているのではないか。あやつが好きそうな物は検討がつかぬのか」
「あいつが好きそうな物など知らん」
「皎月が好きな食べ物は」
「知らん」
「……皎月が好きな動物は」
「名前がどのような畜生を愛でているかなど私は興味が無い」

この男は本気で言っているのだろうかと吉継は心配になると同時に、名前に同情した。
確かに三成は大切な友人だが、名前だって吉継の友人だ。
それに三成に関しての恋愛相談を名前から受けている。
その様が幸せ過ぎて、時々二人共に不幸の星が降らないかと思う事があるが。

三成が他人に無関心な事は吉継も重々承知しているが、流石にこれは酷い。
そして思う。この男は一体彼女の何処を好きになって、どうして傍に置いているのか。

「三成よ。主は一度皎月に泣かれながら頬でも打たれるが良かろ」
「何故私がアレに打たれなければならない」

意味を理解していないのか、真顔でそう言う三成に吉継は溜息を吐いた。

「どうして主らは恋人として付き合っている。我は理解に苦しむ、クルシム」
「なっ……。私達の馴れ初め等貴様には関係ないだろう、刑部」

「とにかくだ!!」と、三成は声を荒らげると机をバンッと叩いた。
逐一怒らないと何もできないのか。
しかし、それがこの石田三成と言う人間だから仕方が無い。
すると生徒会室のドアが開き、件の三成の恋人が入ってきた。

「どうしたの、二人とも。今、物凄い音がしたけど……」
「皎月」
「名前……。何でもない、気にするな」
「気にするなって、三成の怒鳴り声もしたんだけど」
「空耳だ」
「こら。平然と嘘吐かないの。廊下の皆も吃驚してました。それって空耳じゃないって事でしょ?」

名前は苦笑いを浮かべると、腕に抱えていた資料の束を生徒会長である秀吉の席に置いた。
そして「二人もそろそろ帰りなよ?」と言って、生徒会室から出ようとする。
すると、三成は名前の方へ何故かダイブした。
吉継が三成から行動させようと、数珠で三成の体を浮かし、名前の方へ放り投げたのが事実なのだけど。
本当に刹那の出来事だった。

それでも三成は名前を庇う様に咄嗟に名前の頭を腕で抱き抱える。
訳が分らない名前は「え?え?」と狼狽えながら三成の腕の中で目蓋をパチパチ開閉していた。

「刑部、貴様!!」
「済まぬなぁ。主がいい加減焦れったいからつい手を出してしまった」
「名前が怪我をしたらどうするつもりだった」
「済まぬ済まぬ。……さて、我は邪魔にならぬ様、外にでも出るか」
「ま、待て刑部!!話はまだ終わっては……!!」

吉継が生徒会室を出ると、ドアはピシャリとけたましい音を立てて閉じられた。
吉継の事だ。三成が名前から好きな物か何かを聞き出すまで生徒会室のドアを封鎖するつもりなのだろう。
漸く三成の腕から開放された名前は顔を真っ赤にして、その場にへたり座っていた。

「三成……あの、これは一体?」
「刑部の戯れだ。それよりも、名前。怪我はないか」
「う、うん。三成が庇ってくれたから」
「そうか。それなら良い」

暫く沈黙が流れる。
付き合っていると言うのに、こういう場所で二人きりとなると何故か会話が出来なくなる。
息が詰まりそうだ。今のこの空間が重苦しい。

「……おい」
「?」
「この前の、……バレンタインの礼がしたい。私に望む事はあるか?」
「三成に望む事?」
「物が欲しいのなら物でも良い。但し私に用意が出来る範囲の物だがな」

いきなりそんな事を言われても名前だって返答に困る。
そんな名前を尻目に三成は名前からの言葉を今か今かと待ち続けた。

「……それなら、明日一日三成とずっと一緒に居たい」
「そんな事でいいのか」
「そんな事って、結構辛いと思うけど」
「フン。貴様と二人きりの時間を苦だと思うのであれば、とっくの昔に貴様を手酷く振っている」

そう言い切った三成は耳を赤くしていた。
本当は照れ臭いのに、素直じゃない。
そんな三成が可愛くて仕方が無いのか名前は口元だけやんわりと緩めた。





「しかし明日一日と貴様は言ったが、私が名前の家に行った方がいいのか?それとも私の部屋に来るのか……、どちらだ?」
「私は出来れば三成の部屋に行きたい」
「解った。ならば家に帰ったら着替えを持って直ぐに私の部屋に来い。そうだな2泊3日分位」
「え?今日からお泊まりなの?」
「……不服か?」
「ううん、嬉しい」

2014/03/14