戦国BASARA短編 | ナノ
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▼ 本音の行動

※学バサ5巻ネタ


騒がしかった体育祭も終わり、名前はげっそりした顔でBASARA学園近くの公園にあるベンチに座っていた。
元々名前は体を動かす事が余り得意ではない性質で、今日の体育祭も半ば無理矢理体を動かしていたに過ぎない。
雰囲気だけ、楽しめればよかったのに大波乱過ぎて巻き込まれてしまった。
折角、同じチームのまつや利家、元親が気を回して軽めの競技を回してくれたと云うのに。

「こんな所に居たのか」
「!! 三成」
「? どうした、顔色が悪いぞ」
「疲れすぎて気持ち悪い……」

「あぁ……」と言った三成は何かを悟ったらしい。
普段であれば、「具合が悪いなら何故本部に行かなかった!!」と逆上している所なのだが、保険医はあの天海なのだ。
いくら白痴気味の天然さを持っている名前と言えども自分の身を守る危機察知能力位は持ち合わせている様だ。
今日の天海は何時にも増してテンションが高かった。
もしあのテンションの天海の所へ名前が行っていたらきっと何かの贄にでもされていた気がする。

具合の悪い名前には悪いが今回ばかりは「行かなくて正解だ」と優しく言葉を投げかけた。
そして、眼前に手を差し出す。
普段であれば、絶対にしない行為だ。

「立てるか?」
「動きたくない……」
「何故そうなるまで無理をした」
「だって。皆でお祭り騒ぎしてて楽しかったって言うのもあるし、気が付いたら逃げられない所まで巻き込まれてたし……」
「そうなる前に何故、私に助けを請わなかった」

子供の言い訳の様な名前の言葉に三成は呆れる。
確かに今日の体育祭は面倒な位に盛り上がっていた。
名前の体力や行動の鈍さ(それは三成がそう思っているだけなのだが)を考えれば、逃げ出す事はほぼ不可能に近かった。

しかし、次の名前の言葉は三成の頭の中を真っ白にさせた。

「三成も凄く楽しそうだった。だから、声を掛けるに掛けられなくて……」

刹那。ぽかんと阿呆面になっていたが、すぐに意識が戻ってくる。
そして、何時もの様に勢い良く言葉が紡がれた。

「阿呆か貴様は!!貴様が倒れると迷惑する物がいる事に何故気付かない?!」
「……ごめんなさい」
「私は謝罪の言葉など欲しくは無い。私が楽しそうだったからと言って、自分を疎かにするな。お前は、其処まで体の造りは強くないだろう」
「珍しいのね。私の事を心配してくれるの?」
「!! 当たり前だ。お前は私の大切な人間だ」

その一言を告げた途端、名前の頬に赤みが仄かに戻ったのを確認した三成は「待っていろ」と言ってその場から離れる。
もしかしたら、また三成を怒らせる様な事を言ってしまったのかと、名前はしょんぼりと項垂れるが、別にそういうことではなかったらしい。
すぐに戻ってきた三成の手には今しがた勝ってきたばかりであろう、スポーツドリンクのペットボトルが握られていた。

「これでも飲んでいろ。水分と塩分が不足しているのも具合が悪い理由だろう」

ペットボトルのキャップを開けてやりながら、手渡してやると名前は嬉しそうに「ありがとう、三成」と微笑む。

三成はうっと言葉を詰まらせた。
この名前の表情に弱い事を自覚しているのだが、まさか此処まで弱いとは。
照れ隠しの様に顔を背けるが、無性に心臓が高鳴って仕方が無い。

「少しでも体調が良くなったら言え。家まで送ってやる」
「ありがとう、三成」
「フン。礼を言われる事ではない」


本音の行動


あれから程なくして名前の体調は回復した。
が、歩き方がまだフラフラとして危ないからと三成に半強制的に背負われた。
高校生にもなって恥ずかしいが、三成ご此処まで優しくしてくれるのが嬉しくて仕方が無い。
それだけの事なのに無償に特別な事にも思えてくるから不思議だ。

「いいか名前、これが最初で最後だからな」
「家まで送ってくれる事?」
「違う。こうして背負ってやる事だ」
「……うん。解ってる」

少し残念な気もするが、この場で「嫌だ」と言っても三成に一喝されるだけだから言葉にはしない。
本当は、もっとこうしていたいのだけど。

「名前」
「?」
「頼むから、今回の様な無理だけは二度とするな。約束出来んと云うなら、椅子に縛り付けてでも止めてやる」
「大丈夫だよ。三成に怒られるのは嫌だもの、もう無理はしない。それに、苦しいのも痛いのも嫌だし」
「フン」


2014/02/03