戦国BASARA短編 | ナノ
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▼ 甘美な誘惑

※軽く狂愛


北条の小田原を攻め落とせと、命を受けた。

名前も戦えるからと、無理を言って秀吉に従じ、この小田原攻めに参加していた。
「主は本陣に居よ」と秀吉にも言われたが、秀吉に受けた恩を何としても返したいと無理を言って戦場を駆けた。
きっとこれを知ったら秀吉を崇拝する、東北の守りに就いている彼は名前を叱咤し、罵倒するだろう。
その位の事は考えずとも脳裏に光景が浮かぶ。

その内に堅城・小田原城は豊臣の圧倒的な武力の前に陥落した。
それを祝う様に鬨の声が上る。
鬨の声、というよりは獣達の歓喜の咆哮と言った方が良いのかもしれない。

「お疲れ様、名前くん」
「半兵衛様!!」

名前が血に塗れた武器を片手に本陣に戻ると半兵衛が物腰柔らかな眼で名前を迎える。
半兵衛も名前が戦場に出るのを反対していたからこそ、彼女が無事に戻ってきた事に安堵をしている様だった。

「怪我はしていないかい?打ち身や捻挫は?」
「ありません。だから、安心して下さい半兵衛様」
「ふふっ、安心したよ。あ、そうそう。三成くんが君の事を探していたよ。早く行ってあげるといい」
「!! ……はい」

からかわれているのは百も承知だが、三成の名を出されて頬が赤らむ。
半兵衛に会釈して、すぐに陣の東北へ向かう。
すると程なくして天守を見上げ、恍惚とした表情で秀吉を見つめていた。
この状態の三成の邪魔をしては後後が面倒だと、その場で足を止め、三成を見つめる。

頭のてっぺんから爪先まで血に塗れている姿に、普段であればそれを恐ろしいと感じてしまうのに、今は酷く美しいと思ってしまう。

三成は名前の視線に気がついたのか、秀吉から名前に視線を移す。
そしてゆっくりと名前の方へ、ゆっくりと歩んでくる。
周りの兵士は戦々恐々とその様を固唾を呑んで見守る。

「名前か」
「三成、良かった。貴方も無事だったのね」
「フン。誰に物を言っている」

三成は視線を名前の武器に移した。
その刹那、三成は激昂した時と同じ顔をし、名前の肩を強く、強く鷲掴む。

「戦に出たのか!!」
「……私だって、戦えます。豊臣の世の為に、ひいては秀吉様の為に」
「……っ!!」

秀吉の名を出せば三成はぐぅの音も出せないのを知っている。
自分のこの性格が賢しいとは思いはしないが、今はこれが有用だ。
しかしそれでもネチネチと言ってくるから用心はせねばならないのだけど。
そう覚悟していたのだが、三成の手が優しく名前の頬を撫でる。
その感覚に心の底から歓喜してしまう。

「秀吉様の為に働くとは良い心掛けだ。だが、貴様が居なくなると秀吉様も半兵衛様も悲しむ。貴様はあの方々に好かれているのだ。それを肝に銘じておけ。……それに」
「?」
「……いや、何でもない。忘れろ」
「忘れろと言われても、そこまで言われて澱まれると気になる」
「忘れろと言っている」

名前は三成が不器用な事をよく知っている。
何せ三成とは豊臣に従事した時からの仲だから。
だからこそ心配していても、こうして言葉を澱ませる。

それは彼が数多の人間の返り血を浴び、それに塗れた手で自分に触れ、赤く汚したとしても。
こんな自分の感性がまともだとは思ってはいない。
だが、三成も大抵まともな感性を持っていない。
だからこそ彼が愛しく思う。

「行くぞ」
「何処に?」
「血を拭う。こんな姿を秀吉様の御前に晒す訳にはいかないからな」

折角血に塗れた姿が美しいのにと、少しだけ落胆する。
が、三成の言葉も尤もだ。秀吉に穢れの象徴たる血を見せる訳にはいかない。

「何を惚けている。早くしろ!!」
「今行く」

先行く三成の半歩後ろを着いていく。
名前が無理にでも戦に出たのは少しでも三成に気に掛けてもらいたかったからと云うのが本音だ。
それも少しは効果があった様だが。
嬉しくて、頬が緩む。

「……名前」
「まだ何か?お怒りの言葉なら今は不要よ、三成」
「違う。貴様は何故要らぬ言ばかり口にする」
「そういう性分だから。仕方が無いの」
「また減らず口を……。まぁ、良い。先程、私が忘れろと言った言葉だが気になるというならば何時か語ってやる」
「本当?」
「私を疑う気か。嘘は吐かん」

途端、三成の背がぴたりと止まる。
そして振り向くとじっくりと名前の顔を見つめる。

「な、何?」

問いかけてみても三成は無言のまま。
しかし、また三成は名前に腕を伸ばす。
今度は頬ではなく、体を抱き締める様に。
衣服や鎧越しの筈なのに冷ややかな体温が体に伝わってくる。

「みつな……」
「余り私に心配を掛けるな。私だけじゃない、秀吉様にも、半兵衛様にも、刑部にも」

「それさえ出来れば、あの言葉の続きを言ってやらん事もない」と、名前の後頭部にも手を回し、自分の胸に押し付ける。
名前も、血で塗れるのも構わずに三成に身を委ねた。

「三成。私は貴方が側にいないと駄目になってしまうかもしれない」
「無論だ。そういう風に手懐けているからな」


END

お題配布元「Nightmare Girl」

「ROAR OR DRAGON」5話ネタのつもり

2013/12/10