×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

ダンテはその後も再度中に入り込んだテメンニグルで悪魔を狩り続けていた。
先程までいたエリアとは違う鬱蒼とした、黴臭さと埃臭さが混ざった部屋に入り眉間に皺を寄せる。グリーンの石で出来た固めの壁の四隅にはダンテが嫌いな生物が作り出した物の残骸が残っている。
いや、そんな訳が無い。残骸を見て、あの動物の姿の悪魔が居る筈が無いと考える。
だが悪い予感と言うものはいつでも的中する物だ。背後から影が覆い被さり、「キシャァァァァッ」と甲高くけたましい声が部屋一杯に響く。次の瞬間には鋭い爪の先端がダンテが今まで立っていた床に突き立てられていた。
機敏にその場から離れエボニー&アイボリーを構え、引き金を引く。魔力で作った弾丸はその白い肢体にぶつかるが特にダメージを与えた訳ではないらしい。弾丸の破片が金属特有の音を立てて床に転がり落ちる。

「やっぱりかよ!」

目の前に居る白い悪魔の正体はアルケニーと言う蜘蛛の形をした悪魔だった。しかも3体も姿を現しているし、その内の1体は体が大きく姿も他の2体と少し違う。恐らく蜘蛛社会の女王だろう。ダンテは苦い顔をした。

「蜘蛛は嫌いだ。足が多いからな」

嫌いな理由はそれだけではないのだけど。しかし蜘蛛が嫌いな事には変わりが無い。
近付きたくもないし、これ以上その姿を晒されのも生理的に嫌だ。受け付けない。絶え間なくエボニー&アイボリーの引き金を引き、アルケニーに弾丸を撃ち込む。
小賢しい事にアルケニーは糸をダンテに向け発射したり、飛び掛ってきたりで中々片は付かなかったが。
それでも物の5分程で白い女郎蜘蛛を倒し先へ進む。
この先もあの悪魔が出てくると思うと少しばかり気が重い。

埃臭い部屋を抜けると今度は屋外に出る。すぐに戻ってきた外にダンテは歓喜しながら新鮮な空気をその肺の中を満たす。
少し離れた所からは水が流れ落ちる音すら聞こえる。そういえばリバイアサンから出てきた時に沢山血を被った。それにレディにも「血の臭いがする」と言われたし自分でも生臭さを感じているから少しでも臭いを緩和出来るのであればありがたい。
そうとなれば急げ。ダンテは滝の方に向かい走り出した。
滝に辿り着いたダンテはコートを身に纏ったまま滝に飛び込む。冷た過ぎず、温くもない丁度いい加減の水に少しだけ表情が和らいだ。
しかし、ホッとしたのも束の間。滝の奥に空洞があり、奥に進めるようになっている事に気付く。
滝の奥は洞窟になっていた。この塔の構造は良く解からないが構造的に無理があるだろうとダンテは思う。しかしこれは魔界の建造物だ。魔界の力が作用しているのだろう。外壁はあくまで囲いでしかないのだとそう思うしかない。
洞窟の奥にあるドアを開けば、辿り付いたのは歌劇場だった。無数の蝙蝠が飛び交い、部屋のど真ん中に集まる。
そして蝙蝠の中から全裸の妖艶な美女が姿を現す。
しかし美女は人間ではない。明るい橙色の髪と瞳に水色の肌。悪魔である事は一目瞭然。
だが彼女は今までの悪魔とは違いダンテに攻撃を仕掛けてくる事はなかった。それどころか此処まで辿りついた事を労うかの様な言葉を掛けてくる。

『いらっしゃい。こういう所は初めて?』
「そりゃね。優しくしてくれるんだろ?」

女・ネヴァンは妖艶な笑みを零しながら水色の皮膚の手をダンテの頬に添える。

『勿論よ。きっと帰りたくなくなると思うわ』
「いいね。やる気が出てきた」

ダンテは笑みを浮かべリべリオンを手に取り、構える。
悪魔であれば敵。立ちはだかるのであれば容赦なく狩るまで。
それにダンテは気になっていたのだ。彼女が自分を見る時の目が攻撃的な目である事を。
ネヴァンもすっかり戦う気でいるのかダンテに背を向け、歌劇場の舞台に上がり、ダンテに向かい電撃を帯びた吐息を吐きつける。

『さぁ、おいで。坊や』

『Get ready(いくわよ)』。その一言を合図にネヴァンは電撃を纏った蝙蝠をダンテに向け何匹も飛ばす。難なくかわし、ネヴァンに接近しようとするとネヴァンはその場でくるくると回転しながら刃物状に変化させた蝙蝠でダンテを切りつける。

『How's this?(これはどうかしら?)』
「またその攻撃かよ!」

蝙蝠を避けながらスティンガーでネヴァンに突っ込んでいくも彼女の周りを飛び交う蝙蝠がリベリオンを弾く。
『Now you will become thed!(さぁ、堕ちるが良いわ!)』。その掛け声と共に閃光の塊がダンテを襲う。モロに攻撃を受けたダンテはその場に膝をつき、ネヴァンを睨み上げる。

『ふふ。その程度なのかしら?あの子を倒したからもう少し手応えがあると思ったのだけど……期待外れだったかしら?』
「っ、あの子?」

彼女が指す"あの子"と言う単語に反応する。もしかしたら先程戦ったあの悲しい少女の事か。あの子の事を何か知っているとでも言うのだろうか。戦いの最中だというのに思考は少女・アスタの事を思い浮かべる。
去り際に2度目の「嫌い」を口にした時のアスタの顔は今にも泣き出しそうな位に歪んでいた。
もしかしたらこの目の前の電撃を扱う悪魔も何か1枚噛んでいるのではないかと、そう思う。

『さっき戦ったでしょう?アスタと』
「……記憶を操作してけしかけたとか言わねぇよな?」
『そんな事が私に出来ると思うかしら?』
「さぁね、悪魔ならその位の事はしそうに思うけどな」

リベリオンをその場に突き刺し、ケルベロスに手を掛ける。途端、再び電撃を帯びた蝙蝠が飛んでくる。

「同じ手がそう何度も通用すると思ってるのか?」
『!!』

サイドロールで蝙蝠を避け、其処からジャンプでネヴァンの頭上に飛び、エボニー&アイボリーを連射し、レインストームをお見舞いする。勿論主だった攻撃の為の攻撃ではない。レインストームは単なる目くらまし。そして彼女の周りを飛び続けている蝙蝠を剥がす事にある。
案の定ネヴァンの周りの蝙蝠は大分数が減り、ネヴァンは忌々しそうな表情を浮かべる。しかし彼女も曲がりなりにも強力な力を持った悪魔だ。それに彼女にも矜持がある。こんな所でスパーダの息子に負けるなど、考えたくもない事だ。
ダンテが地面に着地しようをとした場所にタイミング良く影刃を縦に繰り出す。「Shit!」とダンテが舌打ちを入れるのが聞こえたが彼は空中で身を翻し、上手く縦に突き出た影刃を交わす。そしてそのままケルベロスを手に取りリボルバーで回転しながらネヴァンに一撃を食らわせる。その攻撃でネヴァンが怯んだのを見計らい、ウィンドミルからサテライトを繰り出し一気にネヴァンの体力を削る。
彼女には聞きたい事がある。それは他ならない彼女、アスタの事だ。
ネヴァンの足元に影が大きく広がっていくと共に、魔力も同時に抜けているのかダンテと同じ位、もしくは少し小さい位のその体躯は小さくなっていく。

『やるじゃないの、坊や!!』
「曲がりなりにもデビルハンターさ。悪魔を倒すのが俺の仕事でね。このくらい出来ないとこの仕事は成り立たない」
『そう……。それなら、これはどうかしら?!』

ネヴァンは少しだけダンテから距離を取ると小さいままの体躯で両腕を大きく広げる。
一体何をしようとしているのか。ダンテは固唾を飲み、リベリオンをドライブの体制のままで構えた。

『You can't escape!(逃がさないわよ!)』

両手を広げたまま、音を立てずに此方に近付いてくる。
ダンテは本能が理性に何かを囁くのを感じていた。ネヴァンがダンテまであと数センチと言う所でダンテの体を抱き込む様に折る。
しかしネヴァンの腕はダンテを抱き締める事無く、そのまま赤い閃光に吹き飛ばされ、壁に激突した。衝撃で体が跳ね返る。
最後の力を振り絞りながらもネヴァン電撃に変換させた魔力を地面に流し。広範囲の攻撃をダンテにけしかける。だが、よろめく背後にまわっていたダンテからの鋭い斬撃に膝から崩れ落ちる。
そして悟る。『この坊やに負けてしまったのね』と。
ネヴァンが背面から地面に倒れ伏す前に腰に手を回し、受け止める。幾ら悪魔と言えど助成の姿をしている彼女には悪魔で紳士的な態度を取ってしまう。
それに扱いをぞんざいにして聞き出したい事が聞けなくなっても困る。

『あら、優しいのね』

しかし態度を一変させ、悪魔らしく隙を付いてダンテに噛み付こうとするもダンテは一瞬の内に手にしたアイボリーでネヴァンの腹、丁度子宮にあたる部分を撃ち貫く。
歌劇場にネヴァンの苦悶の声が響いた。

『んんっ……』
「そうでもないさ」

硝煙が立ち込めるアイボリーの銃口にフッと息を吹きかける。
ネヴァンはその様を見て妖艶に微笑む。本当はあの幼い魔女に、昔結んだ約束通り力を貸してやるつもりだったが、彼女はネヴァンが認める力量ではなかった。結んでいた約束も元々は"テメンニグルに来たアスタがネヴァンが認める力量を持っていれば力を貸してあげて欲しい"と言うものだったし。それに、もう一人のスパーダの息子と共に在るアスタと戦うのも一興。

『……気に入ったわ。力を貸してあげる。貴方のお父さん……スパーダは良い男だったけど』

余り好きではない父の名を出されダンテは不貞腐れながらネヴァンから顔を背けるもネヴァンはダンテの視線を無理矢理自分の視線に合わせる。

『貴方はどうかしらね?』

稲妻が弾ける独特の音が響くと同時にネヴァンの体が閃光を発し、変化していく。その姿は紫色のギターの形を成していた。ギターの形になっても彼女は稲妻を体に帯びている。
まるで『坊やに扱えるかしら?』とでも言いたげな、挑発的な態度だ。
だがダンテは口元を楽しそうに歪ませるとその場で飛び跳ね、ネヴァンをかき鳴らした。


2015/05/18