テニプリ短編 | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -


▼ いつかは純白のドレスを着た君と

※ペアプリピクチャードラマ【海原祭!】ネタ


「え、この前の海原祭の時の写真出来たって本当?」
「うん。後で日南の所にも写真持っていこうと思ってたんだ」

そんな何気ない話が発端で。
二人はゆっくり話をする為に海風館のラウンジで写真を広げる。
日南は写真をみてきゃあきゃあと海原祭の時の事を思い出しながらはしゃいでいたけど、幸村は少しつまらなさそうな顔をしていた。
と言うのも、日南があの"坊や"の話ばかりをするから。

「やっぱりこの越前君可愛いねぇ。来年立海に来てくれないかなぁ」
「……日南って、随分あの坊やの事を買ってるよね」
「だって弟に欲しいタイプなんだもん、あの子」

そう言いながら、ピンクのドレスを身に纏った越前が真田にお姫様抱っこされている写真を眺めている。
あの後の越前と言えばむくれて暫くの間機嫌を悪くしていたっけ。
そんな越前の機嫌を日南と桃城が頑張ってとっていたけど。日南も「もしよかたらコートでお姉さんとテニスしてかない?」なんて機嫌をとっていたけど、はっきり言って見ててつまらなかった。
その前に来年、万が一ない事だとだけど越前が立海に来たとして俺も日南も中等部卒業してるんだけどなんて頬杖を付きながら思っていた。
日南にこの事実を突きつけても良いのだけど少し可哀想だからと胸に秘めておくけど。
しかし日南はそんな幸村の気持ちを知ってか知らずか頬を僅かに上気させて越前の写真を眺めている。

「あーあ、弦一郎羨ましい。こんな可愛い子の王子役やっちゃってさ」
「元々は赤也の王子様だけどね。それに日南は王子様役と言うよりはお姫様役の方が似合ってるよ」

そう言うと日南は顔を真っ赤にして息を詰まらせた。
しかし、すぐにいつもの調子に戻り「お姫様かぁ。柄じゃないかな」なんて恥ずかしそうに笑った。

「でも魔女の魔法で綺麗になって、格好良い王子様のお相手して、魔法解けるからって逃げて、硝子の靴残して、見つけて貰ってハッピーエンドって言うのは小さい頃から憧れてたな。柄じゃないけど」
「確かに、シンデレラって言う感じではないよね。お姫様と言うか勇ましいオルレアンの戦乙女ジャンヌ・ダルクって感じかな。でも、日南は俺にしてみたら可愛いお姫様だよ」

微笑みながら紡がれた幸村のその一言に顔がまた真っ赤に染まっていく。
そんな日南を見て「可愛いなぁ」と思いながら、「そうだ」と日南の手に触れた。

「まだ、あの王子様衣装あるから俺が日南を抱っこしてあげようか?」
「え?」
「でも、お姫様の衣装が無いんだよね。それが少し残念だけど」

「あ、柳生とブン太が着てた衣装なら残ってるよ」と微笑みながら言う。
写真を掴んでいる手に幸村の一回り大きな華奢な手が重ねられて、思わず写真を机の上に落としてしまった。
そのまま幸村の方へ引き寄せられて、指に幸村の唇が触れた。
他の男がやったらただただキザったらしい行為でも幸村がすれば格好良いだけの行為になるから不思議だな思いながら幸村の顔を見詰める。恥ずかしくて余り直視は出来なかったけど。

「もし、女テニ合同で演劇出来てたら俺は、日南をお姫様に選びたかったなぁ」
「うん?ねぇ精市……何かさ、私がドレス着ていく方向に流れて行ってない?」
「うん、そうだよ。そっちの方向に流して行ってる」
「一応聞くけど、何で?」
「俺がそうしたいから。駄目、かな」

駄目かと聞かれたら別に駄目と言う事もないけど。
でも、あのドレスを来た自分の姿を想像したら似合わなくてぞっとする。
数回首を横に振ってから「駄目!絶対駄目、着ないからね!?」と必死に抵抗するも、「えー」なんて不服を零されたけど。
折角クラスの出し物でも部活の出し物でも仮装系は避けて来たのに、海原祭終了後にドレスを着る事になるだなんて想像もしていないし、着たくも無い。

「中学校生活の中で、日南と思い出が作れなかったから作りたかったんだけどそれでも駄目、かな」
「っ!!!」

そうだ。今は入院と手術のお陰で元気になっているけど、幸村は去年の暮れに病気が発病して長い間学校に来れなかった。
少しでも幸村に中学生活の思い出を作らせて上げたいし、日南自身も幸村との思い出を作りたいけど。
でも、似合わないドレスを着るのだけは勘弁被りたい。
気まずそうにチラッと幸村の顔を見ると悲しそうな、しょんぼりとした顔をしている。
そんな顔するだなんて反則だ。日南は「あー、もう!」なんて急に勇ましい声を上げて溜息を吐いた。

「……着るよ。精市の為に」
「本当?」
「だって、そんな悲しそうな顔されるとこっちまで悲しくなってくる。……この確信犯め」

最後だけ途轍もなく恨めしそうに怨念を込めてそう言ったけど幸村は嬉しそうに「ありがとう」と笑った。


===============


昼休みでは時間が足りないから、とドレスを着るのは放課後の話になった。
丸井がシンデレラの劇中で着ていた黄色いドレスを身に纏って、折角だからと友人に借りた化粧道具で化粧をして幸村が待つ講堂の舞台に出ると日南は顔を青くした。
何故か立海男子テニス部レギュラーの面々が勢揃いだ。

「……何でいるの」

日南が露骨に嫌そうな顔をしているそんな中で柳が先陣を切って説明する。

「いや、精市が是非とも写真を取って欲しいと言ってな」
「はっ?!」
「結構似合ってんじゃん。ま、俺の天才的着こなしには敵わないんだけどな」
「やっぱドレスは女の人が着てこそっスよね、日南さん!」

思い溜息を吐きながらも日南は素直に"似合っている"とは言ってくれなかったけど切原の頭をわしゃわしゃ撫でた。「止めて下さいよ」なんて腕を払われたけど。
じっとりとした目で王子様衣装を身に纏った雪村に視線を向けると美しい笑顔を返される。

「どうせなら目に見える形にも残して置きたくて」

裏がない笑みでそう言われて膝から崩れ落ちる。
それなら呼ぶのは柳ひとりで良かったじゃないか。そう思って。
顔を上げるとすっと白手袋に覆われた華奢な手が視界に入る。
いつの間にか目の前に来ていた幸村が「大丈夫かい?」と心配そうに手を差しのべてくれていた。
「だ、大丈夫」なんて嘘を吐きながら幸村の手を取って立ち上がると、何の合図もなく横抱きにされた。

「ほら、蓮二!シャッターチャンス」
「ああ」

ばしゃっと重たいシャッターを切った音が講堂に響く。
いきなりの事に「精市!」なんて思わず怒ってしまったけど幸村は全く意に介していない。
それどころか満足そうな笑みを浮かべていた。
その笑みがとても楽しそうで、そんな笑みを見てしまったら怒るに怒れない。
それに乗りかかった船だ。大切な人と楽しめるならもう何だっていい。
柳も次々と色んなアングルで二人の写真を撮ってくれて。現像された時が楽しみだ。

「……また、こうしてドレスを着た日南を抱き上げたいな」
「意外に精市ってこういう事好きだよね」
「あ、折角プロポーズしてるのに流すのかい?」
「ははっ、1000年早いわーっ!!」

真田の真似をしたら真似された当人が「何事か!」なんて反応して、また柳が写真をバシャリと撮る。
あははと笑って流すしているけど内心心臓は嬉しさでバクバク鼓動を刻んでる。
いつも幸村は不意打ちばかりしてくる。
でもそんな幸村を好きになったのは自分で、今も好きで好きで仕方が無い。
しかる時にまた、さっきの言葉を言ってくれたらいいなと思いながら、お返しだと言わんばかりに幸村の頬に優しくキスをした。


2016/06/30