テニプリ短編 | ナノ
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▼ 雨の日デートの仕方

※直接表現はないけど性的描写有


「ほい」
「ありがと」

日南は財前から湯気の立ったマグカップを受け取るとそっと口付けて、火傷しない様に冷ましながら少しずつ中身を啜る。
レモンの爽やかな香りと蜂蜜の甘い香りが溶けあって幸せな気分だ。
窓の外の、どんよりとした鉛色の空さえ青く晴れ渡っていたらもっと幸せだったのだけど。
財前はテーブルを挟んだ真正面に座ると頬杖をついて不貞腐れていた。

「何で今日に限って雨降ってんのや。降水確率10%やったやろ」
「天気予報だって外れる時は外れちゃうんだから仕方ないよ」
「せやけど、部活休みの日なんてそうそうないやろ。あー、腹立つ」

マグカップをテーブルの上に置くと、未だに不貞腐れている財前の頭に手を伸ばしよしよしと撫でてやる。
普段学校でやると「触んな、セットが乱れる」と言って腕を振り払うのだけど、二人っきりの空間では喉を撫でられた猫の様に喜ぶ。
時々クラスの女子が財前の事を"ツンデレ"と称するけど、本当にそうなのかもしれない。尤も彼の場合は少し特殊なツンデレなのかもしれないけど。

「家で何すれば良いか解らん」
「私は光と二人きりでいられたらそれだけで楽しいけどなぁ」
「自分、ホンマに特殊な人間やな」
「そう?」

頭を撫でる手を、ピアスが開いた耳まで降ろし、そっと指先で触れる。
指先に触れたピアスがちゃらりと音を立てて揺れた。

「ピアス、あんま触んな」
「何で?痛いの?」
「別に痛くないけど、何か嫌」
「なら触らない」
「ん……。ちょお日南、こっち来い」

ちょいちょいと手招きされてもそもそと財前の近くに寄ると、腕を引っ張られて腕の中に閉じ込められる。
床の上に放り出された手にもそっと、一回り大きな手が重ねられた。
低体温で冷たい手が今は熱を帯びて僅かに温かく感じる。
顔を上げてじっと見つめると背中に回していた手を移動させて日南の目を掌で塞いだ。

「何?何?何で目隠ししたの?」
「やかましいわ。少し黙ってろ」

言われた通りに黙ってそのままの格好のままで居ると「何か喋れ」と理不尽に頬を抓られる。
「いひゃい!」と声を上げながら財前の手を剥がそうとするが中々力が強くって剥がす事が出来ない。本当に引き千切られてしまいそうに痛い。
頬が真っ赤になった辺りで「ごめん」と謝られて抓る手が外された。
患部を手で擦りながら見つめた財前は何だかいつもと違って余裕がなさそうで。
日南は若干の違和感を感じながらも財前の隣にちょこんと座り、肩に頭を預けてみた。

「何してん」
「あ、いや……光、なんだかそわそわしてるから、甘えてみてる?」
「……お前なぁ」

今度は財前が日南の頭に手を伸ばし、やんわりと頭を撫でた。
優しい手付きにリラックスしてゆっくり目蓋を閉じる。

「別に、日南にやったら甘えられても悪い気はせぇへんけど」

財前からも日南に寄り掛かり、そう言った。
こうやってまったりのんびりとした時間を過ごすのも良いかもしれない。
本当はもっと触り合ったり、語り合ったりもしたいけど。そんな事していたらきっと理性が押し潰されていって手を出してしまいそうになるから。
はっきり言ってしまえば現状でもかなりまずい状態なのだけど。
自分の、男の部屋で男女2人きりだなんてそういう事をしたくなるシチュエーションだろう、思春期の頭は考えてしまう。
尤も、能天気そうにくっついている彼女はそんな事は微塵も考えていないだろうけど。
人の気も知らないで、なんて言わないけどもう少し他人の心境を察する事位はして欲しいとは思う。
何か話題を変えなくては。部屋の中にあるもので共通の趣味で話題になるものを探すがテニスと楽器の事位しか見当たらない。テニスも楽器も毎日の様に話している話題だから出来れば避けたい。

「せや、日南。新しい曲作ったから聞いてくれへん?」
「新曲!?わぁ、聞きたい!」

「光の曲、好きなんだ」と満面の笑顔で言う日南に不覚にもクラッとした。

「(こいつ、無意識で可愛い事ばっか言いよるからホンマに性質悪い……!!)」

でもそんな日南に惚れたのは紛れも無く自分で。
何だかんだ言って優しくしてしまったり、過剰に構ってしまったりするのは惚れた弱みなのかも知れないとは思っているけど。
パソコンを立ち上げてフォルダーに保存してある曲を開き、日南に聞かせると日南は目蓋を閉じてゆっくりと聞き入っていた。
今回の曲は自分にしては珍しいピアノ中心のメロディライン。
聞き惚れている日南の穏やかな表情を見ているだけで、財前も段々と穏やかな表情をしていく。
最後の音がフェードアウトしていくと再生を止め「どや?」と尋ねると日南は笑顔を浮かべて「穏やかな曲調でゆっくり聞いてられる」と呟く様に言った。

「でも、なんだか光の作った曲じゃないみたい。こういう曲も作れるなんて光ってやっぱり凄い」
「この曲にはモデルがおるからな」
「モデル?」

誰だろう?と思いながら首をかしげている日南を見て「誰かは内緒や」と悪戯に笑う。
何を隠そうこの曲は日南をイメージして曲を作っていた。
でもそれを目の前に居る本人に知られるのは恥ずかしいから一生胸の内に秘めたままにしておくけど。
しかし、作曲した曲を聞いて貰っても雨が止む事がなければ、作り上げた曲も全て聴き終えてしまって。そうなるとまた、途端に会話がなくなってしまって無言になる。
日南は二人きりなら楽しいと言ってくれたが何かしていないとそわそわして落ち着かない。
すると日南が財前の手にそっと触れ、肩に寄り掛かってきた。

「日南?」
「少し、こうしてたい」
「……」

日南からくっついてくるのはいつもの事なのだけど、今日はなんだか変な気分になる。
何と言うか変に気分が高揚して、心臓の鼓動も高鳴っていくと言うか。
気がついたら日南の指に指を絡めて握り返していたし、キスをしていた。
最初は驚いている様子だった日南もそのキスを受け入れてたのか目蓋を閉じて財前に身を委ねている。
唇を舐めたり、強く吸ってみたり。互いにそんな事を繰り返していたらいつの間にか舌同士を絡ませ合っていて、まるで映画の中のカップルの様になっていた。

「んっ……ん」
「(気持ちええ、のかな)」

財前は腕の中で幸せそうに表情を蕩けさせてキスを受け入れている日南を見て、漠然とそう思った。
そして背中に回していた腕を解き、未発達の胸に這わすとゆるゆると揉みしだく。
シャツの胸元を掴んでいた日南の小さな手は力があまり込められないながらも僅かに財前の胸を押した。
唇を離して日南の顔を見下ろすと熱で顔が赤く染まっている。

「ひ、ひか……さっき、胸……っ」
「触りたなった。……嫌、やったん?」
「嫌、じゃないけど、その……楽しい?こんなペッタンコ触って」

胸に手を添えて上目遣いでそう言う。
日南は兼ねてから自分がドの付く貧乳であり、幼児体型である事を気にしていた。
まだ中学2年なんだから幼児体型も貧乳も気にしなくていいし、それを含めて好きなのだから気にしないで良いと思っているのだが、本人からしてみたら一大事なのだろう。

「別に楽しい楽しくないで触ってへんから。好きやから触ってる。……もうちょいあった方が嬉しいけど」
「…………」
「揉んだらデカくなる言うし、何よりまだ成長期なんやから気にせんでもえぇんとちゃう?」

諭してみるも納得はしていないようで日南は「うぅー」と唸っている。
そんな日南が可愛いとは思うのだけど、阿呆らしくて仕方がない。
ぎゅっと抱き締めてから耳朶を甘噛みしながらベッドの上に押し倒し、キスを再開した。
こういう事をするのは初めてだし、何が正解かすらわからないけど舌を絡めながら、服の上から日南の体を愛撫する。
その度日南が小さく吐息を零して体を反応させるのがとてつもなく可愛らしい。
服の裾から手をゆっくり侵入させては柔肌を撫で上げて愛おしそうに唇を貪った。

「ひか……」

唇を開放すると顔を真っ赤に染めた日南が涙で潤ませた瞳で財前をじっと見つめる。

「可愛い……そんなん反則や」
「っ!!」

つーっと線を引くように指先を腹の上で滑らせると大きく体を跳ねさせ財前にしがみつこうと腕を伸ばす。
体を少しだけ日南に寄せてやれば細い腕が首裏に絡み付く。

「……光、シよ?」
「ええんか」
「私は光が世界で一番好きだから。本当は怖いけど、光だったら良いの」
「っ、せやからそないな殺し文句何処で覚えて……別にいいわ。……極力優しくしたるから、痛かったら痛い言うんやで」

その言葉に日南は小さく頷いた。


===============


雨の音がまだ窓の外から聞こえてくる。
日南は毛布に包まりながら財前の体に身を寄せた。

「日南?」
「んー」

掠れた声で名前を呼ばれて顔を上げるとにっこりと微笑んだ。
鎖骨から胸元に掛けて沢山付けられたキスマークが毛布の下から覗いて財前は少し満足そうな顔をして日南の肢体を掻き抱く。さっきまで抱いていた筈なのに、それでもまだ抱き足りなくて。
筋肉質な自分の体と違う感触が愛しくて仕方ない。
愛しさが先行して行為中に乱暴に扱ってしまった部分もあるけど、それでも日南は嬉しそうに受け入れてくれたけど。
指先でキスマークをなぞるとくすぐったいのか身を捩る。

「めっちゃ気持ち良さそうな顔しとったけど、そんなに良かったん?」
「っ!!」

意地悪そうにそう聞くと日南は行為中の事を思い出して顔を真っ赤にして毛布を頭がすっぽり隠れる位に被り、じっと目だけを露出して睨みつける。
「警戒してる小動物か」と思ったがいつも小動物の様な行動ばかりだから今更かと思ったけども。
しかし毛布を剥ぐとすぐにふにゃふにゃとした笑顔を浮かべて「気持ちよかったよ?」と思わぬカウンターを喰らって逆に恥ずかしくなって思い切り日南の顔に毛布を思い切りかける。
日南の一言が嬉しくて顔がにやけていそうだ。そんなしまりを無い表情を日南には1秒たりとも見せたく無い。
でも。

「……そんなに気持ち良いなら、もう一回ヤろか?」
「え?」
「まだ雨降ってるさかい、それに日南ちゃんは気に入ったみたいやもんなぁ?俺とのセックス」

日南に覆い被さる様に抱きつき、首筋を吸い上げる。

「や、あの……、光君?」
「拒否権は無いで?」

今度は唇に噛み付いてから口角を上げ、笑った。
日南は引き攣った様な笑みを浮かべていたがすぐに、観念したのか財前に体を委ねて本日二度目の快楽に身を沈めた。


End


2016/02/08