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来客を告げられ、通された部屋には青い着物を着た同じ顔が座っていた。扉を開けると、ぼんやりと外を眺めていた顔がこちらに向けられる。

「津軽じゃねぇか。」

「静雄・・・」

津軽がゆったりとした動作で近付いてくる。その動作と部屋に差し込む陽光がとても合っていて、1つの画のようだ。
同じ顔なのに静雄と津軽はほぼ正反対の性格をしている。
静雄はキレやすいが、津軽はめったに怒らない。怒ったとしても静雄のように暴れはせずに、静かに怒りを表す。それが意外にも迫力があるので、津軽は周囲の人間から怒らせてはいけない人物として認識されている。
しかし普段はもっとシャキッとしろと小言を言いたくなるほどおっとり、もとい穏やかである。

「おめでとう・・・。」

静雄の目の前まで来ると、またゆっくりとお祝いの言葉を言った。
静雄は馴れたもので、小さく笑った後にありがとうとお礼と返す。
普段の彼なら、目の前でこんなにおっとり行動されると確実にキレるのだが、津軽にはあまり怒ったことがなかった。

「秘密・・・ね・・・。」

朝、帝人がやったように津軽も人差し指を唇に軽く当て、ふわりと笑った。
またか。
何をそんなに秘密にしたがるんだ。
とは思ったものの、答えたところで明確な答えが返ってくるとは思ってないので質問はしない。どうせ今日も仕事で不在の旦那に秘密にしろと言いたいのだろう。

何を企んでいるのか全くわからない。

「本当は、デリも来るはずだったんだけど・・・日々也がね・・・」

「あー、わかった。もう十分だ。」

不在をいぶかしんではいたが、大体予想していた。
静雄と津軽の他に、デリックというもう1人同じ顔をした青年がいる。彼は静雄と津軽を混ぜたような性格をしていて、3人の中では一番灰汁の強い性格かもしれない。
そんな彼も恋人の前ではしおらしくなるのだから、恋の力は偉大だ。
恋人もデリックが可愛くて仕方ないようで、よく馬に乗せてあちこち連れまわしては2人だけの世界をつくっている。静雄の家に突然押しかけてきて、目の前で砂を吐くようなやりとりを見せ付けられたときは、流石の静雄も怒りを通り越して呆れてしまった。

「そういえばサイケはどうしたんだ?お前と一緒じゃないとか珍しいな。」

「サイケは・・・仕事・・・。」

「なるほどな。」

津軽の恋人も彼にべったりだった。べったりしすぎて融合するんじゃないかと思うほどだ。
顔が同じだと恋人との触れ合い方も同じになるのか。
いや、そうだとしたら自分はどうなんだ。
夫から睦言を囁かれたことなど一度もない。
顔を付き合わせれば嫌味の応酬、果ては喧嘩ばかりだ。しかも夫婦喧嘩なんて呼べるようなかわいいものではない。
以前はどこの家庭も自分達のような喧嘩をしているはず、と思っていた静雄だったが、津軽とサイケの喧嘩を目撃してからその考えは変わった。

『津軽なんて大嫌いだよ!!』

『・・・・・・』

『・・・あ、ご、ごめんね津軽!そんな悲しい顔しないで・・・。大好きだよ津軽・・・大好きだから・・・』

以上が静雄の目撃した痴話喧嘩である。
その後は静雄には刺激が強すぎて見られなかった。

やはり自分の接し方が悪いのかと津軽やデリックを見習って夫に甘えようとしたこともある。
すると彼は喜ぶどころか突然立ち上がると凄まじい剣幕で医者を呼びに行ったのだ。あれ依頼静雄が夫に甘えようとしたことは一度もない。

あんな失礼な反応されて誰がするか。

「よくサイケがお前1人で外出させたな。」

「・・・でも、すぐ帰ってきて・・・って言われた・・・。」

「ふぅん・・・。」

なんだろう・・・。

無性に泣きたくなってきた。

しかしそんなことをすれば津軽に無駄な心配をかけるだけなので、静雄は乱暴にソファーに座って、こみ上げる感情をごまかした。






110128
静雄、津軽、デリックは兄弟じゃありません。
彼氏組も然り。
私は津軽に夢見すぎですね←

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