!静雄誕生日だからって調子乗りました
夫婦パロです。折原はお貴族
ぱちり。
そんな音がしそうなくらい、今日の静雄の寝覚めはよかった。むくりと起き上がってまずはカーテンを開ける。いつもは使用人が開けているが、今日は彼が来るまで時間がありそうだ。それまで薄暗い部屋にいる気にはなれなかった。
シャッと勢いよく上質の布を引くと、清々しい朝日が見える。その光の中を小鳥が飛び交っているのは、朝だけ見られる特別な景色だった。静雄が一番好きな景色だ。この時間は庭を散歩するのだって楽しくて仕方ない。
食後に一緒に散歩をするのはどうだろう。
夫に頼んでみよう。
今日くらいは多少のわがままも聞いてくれるはずだ。
そんな調子で今日の予定を考えていると、控えめに扉をノックされた。
今日は随分と早いお出ましだ。
「失礼します。……!?」
顔を見るなり驚き固まってしまった童顔の使用人に軽く手をあげる。いつもこの時間は布団に包まっているはずだから、彼が驚くのは当然だろう。
「よう、帝人。今日は早いな。」
「静雄様も、今日はずいぶん早起きですね。」
笑うとさらに印象が幼くなる。
弟のような存在からの返しに、うるせえと言いながら窓から離れた。
その行動を視界の端でとらえながら、帝人は手早く静雄の着替えを準備をする。屋敷の誰もがあまりやりたがらないこの仕事を率先して行う帝人は、使用人の間でリーダーのように思われている。
不人気な理由は、屋敷の主人が原因である。
「お、サンキュー」
「とんでもありません。…あ、静雄様。」
「ん??」
「おめでとうございます。」
慈しむような笑顔で紡がれた言葉に、反応するのが少し遅れた。不意打ちには弱いのだ。
年下の青年に慈しまれるというのも静雄の沽券に関わるが、今日はそんなことは気にならなかった。
帝人が自分の誕生日を祝ってくれている。
それが静雄は嬉しかった。
「…おう。サンキュな…。」
しかしやはり熱くなっていく顔は見られたくないので、ぶっきらぼうに顔を逸らしてしまうのはご愛嬌ということにしてほしい。
そこそこ長い付き合いの帝人には伝わったのか、彼が静雄の態度を不快に感じている様子はなかった。
「臨也様には内緒にしてくださいね。俺が朝一番に静雄様におめでとうって言ったこと。」
「は?なんでだよ。」
「俺が怒られちゃいますから。」
人差し指を唇に当てて小さく笑う帝人は、いたずらに成功した子供のような顔をしていた。
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