どうか私を見ないでください



!静雄が男娼設定






またやった。

本当に嫌になる。

こんな化け物じみた力なんていらない。

自分など消えてしまえばいいのに。

「そうしたら、お前の おや がかなしむだろ」

「だから、そんなこというなよ」

「もっとまわりをみてみろ。」


子供らしい口調で、子供らしからぬことを言った彼は元気にしているだろうか。
聞きたくもない男の声を聞きながら、静雄は忘れられない声を思い出した。
彼の声が聞きたい。

「あぁ…静雄…ッ!静雄…!!」

こんな欲にまみれた男の声ではなく、彼の力強い声が聞きたかった。
身体を這う手も、静雄を激しく揺さぶるモノも、全てが嫌だ。
首筋にあたる荒く吐き出される息も止めてやりたい。
いや、いっそのこと自分の息を止めてほしい。


『もっとまわりをみてみろ。』


彼の声が脳裏をよぎった。

けど周りを見ても、あるのはローションに媚薬、あとは玩具。
それだけだった。

それだけ。

何も見えないんだ、…―。

自分がしがみつく、この生暖かい物体が何かすらもわからない。





「お疲れ様!シズちゃん。」

また来る、といらない約束を残して客が帰ってから、臨也が部屋に入ってきた。
自身にとっての諸悪の根元の登場に、機嫌はさらに降下した。
臨也の顔を見ると胃が重くなる。過度のストレスのせいだと言われたが、実際そうなのだろう。

「お客さん満足気だったねぇ。さすがだよ。」

「…うるせえ。」

静雄にとって不快でしかない美声が部屋に響く。
その声に反応するのは癪だったが、早く汚れた身体を洗い流したかった。体内の残精が気持ち悪くて仕方ない。

「何してんの?まだ終わりじゃないよ。」

出てけと冷たくいい放ち、浴室に向かおうとした静雄の腕を細長い指が掴んだ。
その言葉に眉根を寄せる。
たしか目の前の男自身が、ついさっきの客で最後だと言っていたはずだ。

「ごめんね、特別なお客が来ちゃってさ…。」

ひどく楽しそうに顔を歪めながら、臨也は体をずらしてドアノブに手をかけた。
あの顔は見たことがある。
静雄の背を嫌な汗が伝った。

「俺の親友だから、無下にはできないんだよね。」

そう言ってゆっくり開かれた扉。

それを静雄はただ呆然と見つめていた。

そこにいたのは精悍な顔をした、長身の青年だった。

まっすぐな瞳。
逞しい体。

記憶よりも成長した彼は、身動ぎすらせずに静雄を見つめていた。


「相手してあげてよ。」


ひどく楽しそうな美声が響く。
彼の声には、臨也とは種類の違う美しさがあった。
今はどうだろう。
声変わりをして、どんな声になったのだろう。

あんなにも切望したものが、今目の前にある。


でもなぜだろう。


「…かど、た…」


零れ落ちた声は、絶望に染まっていた。






110122
短くてすみません(汗
長らく更新していなかったので、ちょっと練習…←
そして臨也が外道ですみません(^p^)

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