趣味は人間観察



書店店長臨也×文学少女?静雄



面白いように平積みにされた本がなくなっていく。あの様子だとそろそろ在庫を足したほうがよさそうだ。
しかし飛ぶようになくなっていくベストセラーには目もくれずに、店主はひたすら趣味に没頭していた。


・・・あ、あいつ挙動不審だな。
万引きかな・・・?


周囲をちらちらと忙しなく見て、あからさまに怪しい行動をとる男が目に留まる。
誰が見ても万引き犯にしか見えない。
が、男のいる場所がその可能性を半減させていた。


別にそこまで恥ずかしがることないのになぁ。生理現象なんだから。


そして店主の予想は的中した。
挙動不審のまま淫らなポーズをとる女性が表紙に写る本を素早くとり、その場を離れた男を観察していたら有能な店員がベストセラーをまた平積みにしていた。

「ちょっと。仕事してくれる?レジもやらずに何してるのよ。」

「人間観察。」

「死ねばいいわ。」

腕を組み、呆れたように目の前に仁王立ちした美女をちらりと見てから、また視線を店内に戻す。
今度は女性がそわそわと耽美小説の棚を物色していた。

「ちょっと!あなた仮にも店長でしょう!」

とうとう我慢できなくなったのか波江が客の迷惑にならない程度に声を荒げた。
それに店主―臨也はそうだねー、と気の抜けた返事をしてさらに波江の神経を逆撫でした。

「いいじゃん。レジは紀田君がやってるし。俺だって仕事ちゃんとしてるんだよ?今は暇だったから趣味に勤しんでただけで。」

「新作の本はないのかって聞かれたんだけど。」

「君が今さっき補充してくれた。はい、一件落着。」

水掛け論のような会話に怒りを通り越してむしろどうでもよくなってくる。
波江は諦めたように息を吐きだして店の奥に向かった。
昔は臨也が仕事をするまでねちねちと隣で文句を言っていたが、最近はそれすら面倒になったのか、放っておくという技を身につけたようだ。
さすが有能な店員は順応が早い。
と感心していると、ある人物が臨也の視界に入った。

「あ・・・!!」

――――――――――
「ちょっといいかしら。この本の入荷は・・・あら・・・??」

駄店長に用事があった波江は書類を片手にカウンターまで来たが、目的の人物がいなくなっていた。
どこに行ったのかと腹の底からふつふつと再び怒りが沸いてくる。

「ちょっと!あいつはどこに行ったの!?まさか仕事??」

怒りの矛先は理不尽にも、レジにいた正臣に向けられた。
災難とはこのことである。
造形が整っているせいか、怒った波江の顔はとにかく怖い。
大抵の人は怒った波江を目の当たりにすると小さく悲鳴を上げてしまうほどだ。
それは正臣も例外ではなかった。

「ぎゃあぁぁぁ!!」

ただ正臣は小さいどころか、絶叫するという点では例外的な人間だった。

「うるさいわ。消されたいの?あいつはどこなの?答えなさい、紀田正臣。」

「あ、すみません。びっくりするじゃないですか波江さん!俺のハートはクラッシュ寸前でしたよ!!」

「・・・・・・。」

「すみません・・・。・・・臨也さんなら、」

いつもの調子で話すも、氷点下の視線で返事をされれば流石の正臣も黙るしかなかった。
波江の質問に言葉で返すかわりに出入り口である自動ドアを指差す。
それを視線で追った後、波江は盛大に舌打ちをした。
怖い。
とにかく怖い。

「じゃ・・・じゃあ俺ちょっと本の補充行ってきまーす・・・」

そそくさと逃げるようにカウンターから離れる。
そんなアルバイトは気にもせずに、波江はずかずかと出入り口に向かっていった。
――――――――――
「いつも悪いな・・・」

申し訳なさそうに微笑む少女を満面の笑みで見つめているのは、さっきまでカウンターに無表情でだらしなく座っていた折原書店店主である。
いつもの彼を見ている人だったら目を瞬かせているだろう。
それほど普段の彼と今の彼のギャップは激しかった。

「いいのいいの。気にしないでよ。これどうだった?」

「すごくおもしろかった!続きが気になって飯とか忘れるくらい。」

「ご飯はちゃんと食べようよ・・・」

はは、と臨也が笑うとそれに答えるように少女も照れくさそうに笑った。
その拍子に金髪がさらりと流れる。
綺麗だな・・・と臨也は純粋に思った。

「その本もおもしろいよ。今度は水を飲むのも忘れるんじゃないかな。」

からかうように告げると少女―静雄の目がきらきらと輝いた。
今から読むのが楽しみで仕方ないのだろう。
そんな姿にきゅんと胸を刺激されつつ、臨也はいつもの決まり文句を口にした。

「読み終わったらまた次の本、貸してあげるよ。あ、感想も聞かせてね。」

「分かった!本当にありがとうな、臨也。」

「いいえ。シズちゃんが喜んでくれることが俺の喜びだからね。」

さらりと大胆発言をするも、静雄はにこりと微笑み、また感謝の言葉を口にして小走りに去ってしまった。
若干の虚しさを覚えたが、また次の約束を自然に結べたことは嬉しい。
臨也はうきうきと書店の自動ドアに体を向けた、ところで後頭部に激痛が走った。

「お幸せそうなところ失礼するわ。」

頭を抱えて悶絶する臨也の背後に般若の形相の波江が佇んでいた。
片手には凶器と思われるバインダーが握られている。
ご丁寧に角が金属で補強されているタイプだ。

「・・・頭ってだめじゃない・・・??」

「あなたは平気よ。もうネジが飛んでるもの。このロリコン。」

「ロリコンじゃない!たったの5歳差だ!!」

出入り口で騒いでいる店のトップ2人(主に騒いでいるのは一人だが)を見遣って、正臣は真剣に転職を考えていた。






101221
久々の更新でなんか・・・すみません・・・。
いつもの如く着地点が見つからなくゲフゲフ・・・
そして題と内容が全く合ってませんね。センス欲しい・・・!!

この臨也さんは年下美少女シズちゃんに一目惚れ設定です。
ただいまじりじりと距離を縮め中。

そしてなんかこの折原へたれですね・・・。
いや、へたれ折原も好きだけども・・・!!

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