!門田の恋人描写あり
手をのばす。手をのばす。
けれども虚しく空をきる。
何をそんなに怯えてるんだ??
速い。
流石というべきか、卓越しているのは力だけではないということか。門田も足には自信があったが、それでもなかなか静雄に追いつかない。
引き離されないように走るのがやっとだった。
「おい!!平和、島!!」
叫んでも彼女の足は止まらない。いい加減息が上がってきた。
でも止まったらそこで全て崩れて無くなってしまうような気がして、門田は必死に足を動かした。
門田は静雄が何を言われたのか知らないが、臨也の言葉を訂正するなら門田の恋人のくだりを過去形にすべきだった。
つまり現在門田に恋人はいないのだ。
中学生のときはいた。告白してきたのはむこうで、確かに小動物系の庇護欲をくすぐる可愛らしい小柄な少女だった。
しかし卒業する前に別れた。
理由は門田には未だによく解らない。
ただ、今考えてみると彼女のことを恋人として見ていなかったような気がする。どちらかというと妹のような存在だったのかもしれない。
彼女から名前で読んでいいかと聞かれたときも、気恥ずかしさや嬉しさは全く感じなかった。
初めてキスをせがまれたときは、突然顔を上げて目を瞑った意図が分からず、どうしたのか聞いたら彼女は顔を真っ赤にして俯いてしまった。(門田は次の日に彼女の友人から朴念仁だの最低だの散々にけなされた。)
門田にとって人を好きになるということは、その人を護りたいと思うことだった。だから自分は彼女を好きだと、その感情に疑いを持たなかった。
でも違ったようだ。
護りたいとは思っても、生々しい感情は少しも湧かなかった。
その勘違いに気付いたのは皮肉にも彼女から別れを告げられたときだ。
悲しみよりも解放された、という思いの方が強かった。いつからか恋人という関係が重荷になっていたのかもしれない。
涙を流す彼女を見て、申し訳ない気持ちでいっぱいになった。
己の勘違いに付き合わせてしまった。
酷いことをしたと思う。
それから二人の接点はなくなった。
仕方ない。
門田はそのとき、そう納得した。
でも今は違う。
静雄が自分から離れていってしまうのが怖い。
今ならまだ間に合う。
「平和島ぁ!!!」
そんな気がする。
「はぁッ・・・は・・・ッ!」
何があったのか聞いて、彼女を慰めたい。
それから・・・
それから――??
「・・・ッ静雄!!」
不意に出てきた名前。
その言葉が魔法のように彼女の足を止めた。
(そういえば名前で呼んだのは初めてだ―。)
どこか冷静に気恥ずかしさを感じながら伸ばした手は、やっと、細い肩を掴んだ。
101108
少女漫画展開すみません。
門田をなんだかダメな感じにしてしまった・・・。
ファンの方ごめんなさい!私も結婚するなら門田がいいと思ってます←
こういう青春モノって書いてて楽しいですね(^^)