恋とはなんたるか 7



『君にとって、特別だよ。』

は?誰が??
誰がシズちゃんにとって特別だって?
もしかしてドタチン?確かに最近のシズちゃんってドタチンにべったりだよね。

気持ち悪いったらないよ―。



臨也が静雄に近付いたのはただ利用しようと思ったからだ。
人間離れした体質の女子のことは有名だったし、同じ学校にその噂の人物がいるのなら利用しない手はない。
そういう訳で臨也は入学して早々に偶然を装って静雄に接触した。
彼女にのされた人間は数え切れないほどいるから、下準備に時間はかからなかった。あとは彼女が囲まれたときに人を呼ぶなりして助ければいい。
しかし作戦は結果的には失敗だった。
静雄が臨也にまったく近寄らなかったのだ。こちらから話しかけても無視。それでも静雄からしたら、彼女にとって一応は恩人である臨也に気を使っているほうだった。
が、臨也からすれば面白くない。そうなるとなぜか静雄に怒りが湧いてきた。
彼女を利用するのはやめだ。むしろ潰してやる。
この日から臨也の嫌がらせが始まった。静雄に仕返しをしたがっている連中をけしかけては、彼女が暴れる様を遠くから眺めていた。
静雄にもすぐにバレて二人が公認の犬猿の仲になるのに時間はかからなかった。
静雄はとにかく直情的な性格で、臨也に話しかけられると顔を歪めて嫌悪を露にした。それが楽しくて、臨也は毎日のように彼女に話しかけた。それが原因で暴れた彼女がどんどん孤立していくのもおもしろい。

だからある事実を知ったときの臨也の驚きは大きかった。

『よお。』
『あ、門田。あのさ、昨日言ってた――』

あの静雄が笑っている。自分に見せたことのない顔をしている。

だめだ。

得体の知れない感情が臨也の中を駆け巡る。焦りに似た胸をちりちりとこがすような感覚。

化け物の君が馴れ合うなんて!!

門田は人間。臨也が愛してやまない人間だ。しかし静雄は臨也の中で人間のカテゴリーに入らなかった。
その静雄が、臨也の愛する人間と、馴れ合っている。
そうだ。それが許せない。
二人を遠ざけるために策を練ろう。
そう決めた臨也だったが、その計画は脆く崩れた。
他ならない臨也自身のせいで。

その原因が冒頭の新羅の言葉だった。
偶然聞えてきた言葉。
胸の中に黒く重いものがどんどん溜まっていく。

早く自分の立場をわからせないと。

このとき臨也を支配したのは、"あの感情"だった。


(なにやってんだろう・・・俺・・・。)
隣で新羅がなにやら険しい顔で言っているが、何も聞えない。
ただ、今ここにいない小さな背中を思い出す。
はらはらと涙を零して、顔を伏せた彼女。
綺麗だ、と。そう思った。

でも違う。そうじゃない。
何が?
わからない。でも違う。
泣かせたかったわけじゃない。
ただ、自分はただ彼女が門田と一緒にいるのが嫌で――。

(――あぁ。そうか・・・。)

思考が澄んでいく。新羅の声も耳に痛いくらいに届いた。

ああ、自分はなんて馬鹿なんだろう。

「おい臨也!!・・・・・・どうしたんだよ・・・?」
「なに新羅。どうもしないよ。」

そう、どうもしない。
この頬を濡らす感覚も、明日になればなくなるのだ。
だから今は少しだけ感傷に浸らせてほしい。

力なく項垂れた友人を、新羅はそれ以上責めることができなかった。

夕焼けの赤だけが静かに二人を照らしていた。


(その感情は、嫉妬でした。)






101026
長くてすみません・・・。
青春真っ盛りな臨也を書きたかったんです。ある意味青春。
あと少し!!あと少しで終わらせたいと・・・!!!

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