恋とはなんたるか 6



なんとはなしに教室で本を読んでいた新羅は、下校時刻のチャイムで我にかえった。そろそろ帰らなくては。
急いで鞄に教科書をつめて席を立つ。
扉に手をかけようとした時、がらりと音をたてて門田が教室に入ってきた。

「あ、門田君。どうしたの?こんな時間まで。」
「いや、一旦帰ったんだけどな、忘れ物して取りに来た。」
「あぁ、なるほど。」

机の横に下がっていたリュックを取ると、門田はさっさと教室を後にした。新羅もそれに続く。
「何忘れたんだい?」
「体育着。今日授業で汗かいたから洗わねぇと。」
「なるほど。」
肩を並べて生徒玄関に向かう。周囲から見たらあまり交流のなさそうな二人だが、実は結構話すのだ。
「お前確か平和島と幼馴染なんだよな。」
「そうだよ?小学校が一緒でさ。よく採血させてくれってせがんで関節技きめられたもんだよ。」
当たり前だ、と廊下に笑い声が響く。
(・・・そうだ!)
門田にも彼女の採血に協力してもらおうと新羅が言葉を続ける。
彼の協力が得られれば静雄も首を縦に振るかもしれない。
玄関に誰かいるようだから、聞かれる前にさっさとお願いしてしまおう。

「門田君からも今度頼んでくれない?僕まだ―!?」
静雄から採血するの諦めてないんだ。

最後の言葉は声にならなかった。

中途半端に腕を上げて、驚いたように顔を向ける臨也。
そして
はらはらと涙を流す静雄。

彼女の泣き顔なんて始めて見た。隣の門田も固まっている。

すると逃げるように静雄が走り出した。

「しずっ・・・!!」

新羅が呼び止めようと声をあげるが、届かない。

「門田君!?」

気付くと門田も全速力で駆け出していた。状況についていけず、新羅の思考はパンク状態だ。
呆然とたたずむ臨也の前で急ブレーキをかけるように止まると、門田は彼の胸倉を掴み上げた。
その顔は怒りに染まっているように見える。

「話は後だ!!」

叫ぶと臨也を放り、再び全速力で駆け出す。
臨也は体を強かに打ちつけたが、呻き声をあげるわけでもなく、ただ呆然と静雄が走り去った方向を見つめていた。

「ちょ、臨也!どうしたんだよ!!」
だんだん状況がわかってきた新羅が詰め寄る。
しかし臨也は以前と同じ方向を見つめたままだ。

「おい、臨也!!」
「・・・・・・シズちゃんを、泣かせた・・・。」
「そんなの見ればわかるよ!!」

知りたいのはその理由だ。
しかし当事者は魂が抜けたような状態で、新羅の質問には答えなかった。






101011
臨也ファンのみなさんごめんなさい。
私も彼のウザさが大好きです←

門田は私の好みで静雄のことを「平和島」と呼ばせてみました。
門田に呼ばれたい。

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