新宿の高級マンションの一室に太陽の光が差し込んでいる。部屋に何もないので、どこか現実離れした雰囲気があった。
まるで一枚の絵画のようだ。
その神秘的ともいえる空間にぴったりな、爽やかな声が響いた。
「ほらシズちゃん。日当たりもいいでしょ?俺のセンスに狂いはないんだよ!」
「あーはいはい。」
得意気に話す臨也を軽くいなして、静雄は別の部屋を覗き込んだ。どの部屋もとにかく広い。もしかしたら今まで静雄が住んでいた部屋よりも広いかもしれない。
静雄の姓が晴れて折原になり、二人の新居を探すことになった。といっても臨也があっという間に気に入った部屋を見つけて即契約してしまったので、静雄は何もしていない。
しかし静雄はまだ臨也の決めた部屋を見たことがなかったので、引っ越す前に二人で新居を見に行こうということになった。
予想以上に綺麗な内装だったので静雄も気に入ったようだ。
「ここは俺の資料室にしよう。それでここは俺の仕事部屋!」
他の部屋に比べて若干(あくまで若干)小さい部屋を臨也が自分の私室にしようとしたところで、静雄が異を唱えた。
「えー・・・。いいじゃん!個室の仕事場って夢だったんだよ。」
「ここは子供部屋にした方がいいだろ。」
返答はもっともだ。若干小さいこの部屋は子供部屋には最適かもしれない。
しかし、だ。
二人にはまだ子供はいない。
つまり今は臨也が使っても何の支障もないのだ。
「それは子供ができたときに作れば・・・・・・」
そこでふと考える。
静雄は女性にしてはさっぱりざっくりした性格をしている。
彼女と婚約した臨也が浮かれて、いつか生まれる子供のためにとベビーグッズを買おうとしたら、静雄が購入に反対したことがあった。
まだ必要ないと主張したのだ。
その彼女がまだいない子供のために部屋を用意しようと言い出した。
それは、つまり・・・・・・。
つまり・・・・・・・・・。
「え・・・まさか・・・。」
少し体が震えている気がする。
しかしそれどころではない。
明らかに動揺している臨也を見て、静雄は花が綻ぶように笑った。
臨也の憶測は確信に変わる。
「・・・はっ・・・はは・・・」
呆然と笑い出した夫を不安気な表情で見つめていた静雄は、突然の浮遊感に変な声を出してしまった。
「やった!!俺達の子供だよシズちゃん!!」
臨也が静雄を抱きかかえてくるくる回りだす。
臨也の喜びように静雄も自然と笑顔になっていく。
その間も臨也は子供が男か女かとはしゃいでいた。
まさに喜色満面だ。
窓から差し込む太陽の光もまるで二人を祝福しているようだ。
「女の子だったらシズちゃんから、男の子だったら俺から一文字とって名前をつけよう!!」
「ばか、気が早ぇよ。」
悪態はつくが、声は優しい。
静雄も臨也に負けないくらい嬉しいのだ。
このあと臨也は浮き足立つように部屋の割り振りを考えた。
終始にこにこ笑っていたので、静雄にちょっと気持ち悪いと言われたが、本人はまったく気にしていなかった。
「俺は世界一幸せだよシズちゃん!!」
「俺もだよ。」
100928
あるCMを見てあまりの幸せオーラに感動してイザシズで書きたくなりました。
あれ・・・感動オーラ・・・・・・
臨也って嬉しさがMAXになったらくるくる回りそうなイメージがあります。