恋とはなんたるか 1



どこの学校にも恒例行事はある。来神高校も例外ではない。
そこに静雄の悩みがあった。
今年は男女の交流を深めるということで、体育祭でフォークダンスを踊ることになったのだ。

静雄は今までフォークダンスなど踊ったことがない。中学でも踊る機会はあったが、彼女は参加したことが無かった。練習も同じく。あれこれ理由をつけて欠席してきた。静雄なりの周りへの配慮だったが、他人はそれを陰口の種にした。

そして高校でもダンスの練習を見学していた。校庭に軽快な音楽が響いている。嫌そうに踊っている人、張り切っている人、無表情な人と様々だ。サボるという手段もあったが、根が真面目な彼女にそんな選択肢はない。

「また見学してるー。ずるいよねー。」
さらに高校でも静雄なりの配慮は陰口の種になっていた。幸い本人には聞えていない。偶然その声を聞いた門田が視線をずらすと、眉間に皺を寄せて見学している静雄が目に入る。彼女達は練習の度に休む静雄が気に入らないらしい。本人に聞えないように気をつけながら、陰口に華を咲かせ始めた。
聞いていて面白いものでもないので、門田は早々にその場を去って静雄の隣に腰掛けた。隣から視線を感じるが気にしない。
「やらないのか?練習。」
質問にただ頷くだけの返事がかえる。
「まあ、この歳でフォークダンスとかやりたくないよな。でもサボりはよくないぞ。」
「・・・俺が参加したら迷惑だろ。」
どこか達観した口調で話す門田に、おもわず静雄は本心を零してしまった。しまったと口を塞ぐがもう遅い。視線を向ければ、門田が神妙な表情で静雄を見つめていた。
その顔を見ていると、彼には話してもいいかもしれない、という気持ちになるから不思議だ。
「俺だって休みたいわけじゃねぇんだ。」
静雄にも踊りたいという願望はあった。しかし彼女の体質がそれを許さない。ふとした拍子に相手の手を握り潰してしまうかもしれないし、些細なことにキレて相手を投げ飛ばしてしまうかもしれない。それが恐ろしかった。
それに背後で怯えられるのも鬱陶しい。
「でも俺こんなんだから、えーと・・・、迷惑だろ。」
「・・・でも踊ってみたいんだろ?」
沈黙。
門田はじっと静雄を見つめていたが、彼女は正反対の方向を見ていた。あからさま過ぎる行動に思わず笑ってしまう。
そのとき教師が号令をかけた。どうやら最後にもう1回だけ練習をして授業は終了らしい。

「じゃ、行くぞ。」

土を払いながら、門田は静雄に手を差し出した。あまりに自然な動作に困惑してしまう。なかなか手をとらない静雄に、彼は催促するように手を近づけた。
「早くしろって。」
「いや、だから俺・・・」

「俺と踊ればいいじゃねえか。」

別にお前のこと怖いと思わないし、と腕を引く門田に静雄は固まった。目の前の青年は、自分の体質を知っているのに怖くないといった。目の奥が焼けるような感覚がする。引かれるがままに輪に加わった静雄に視線が集まった。居心地悪そうにしている彼女とは違い、門田はいつも通りだ。
教師が静雄を気にしつつもレコードのスイッチを入れると、校庭には再び軽快な音楽が流れた。
「右、右、左、左、歩いて・・・」
ぎこちない動作で踊る静雄に、後ろから門田がアドバイスをする。
耳元で響く声に静雄の顔が熱くなる。門田と繋がっている手も少し震えていた。






100913
ドタシズのフォークダンスシーンを書きたいがために始まった連載です。(違
連載は初めてなので、上手く進めるかわかりませんが見守ってくださると嬉しいです・・・!!

最近ドタチンがきてます。旦那にしたいです本気で。

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