○○な男No.1



芸能人パロ




今日も池袋は活気に溢れている。街頭では今をときめくアイドル達が微笑んでいた。
『達』といっても、街を飾るアイドルはほぼ二人だけだ。
大人気では足りないくらいの人気を誇る二人は、学生を中心に幅広い層に人気を得ていた。ファンの間でどちら派か派閥が出来るほどだ。どちらもバラエティ番組等にはあまり出ないが、彼らが載っている雑誌は通常の倍以上売れるらしい。
そんな人気を誇る一人が、小さな喫茶店で楽しい休日を過ごしていた。

「ねぇシズちゃん!この雑誌読んだ??」
臨也は相向かいに座る静雄に、一冊の雑誌を押し付けた。下に大きく『抱かれたい男ランキング』と書かれた表紙には、妖艶に笑う美青年が写っていた。
「読んでねぇ。あとお前の笑顔気持ち悪い。」
表紙を指差して感想を一言。本人は静雄の目の前で苦笑している。
弟君のほうがよかった?と聞いてくる臨也を無視して、静雄はレモンティーを飲んだ。ずっとストローで氷を掻き回していたせいか、味が薄くなってしまっている。
「そんなことは置いといて、ちょっとこれ見てよ!」
ぺらりとめくられたページには、表紙と同じ文字が書いてあった。
正直、静雄はそんなものには興味も何もないので、こんなにうきうき見せられても欝陶しいだけだ。そんな様子を気にもかけずに、臨也はどうだと得意げに口端を吊り上げていた。
ランキングの一位の欄に臨也の名前が、二位の欄には静雄の大事な弟の名前があった。
「大接戦だったらしいよ?弟君も俺と同じくらい人気あるしね。」
「……。」
コーヒーを飲みながらどうでもいい情報を話しだす臨也を一瞥して、静雄はまた雑誌に目をおとした。
世間がどう思っていようが、静雄にとってどうでもいいのだ。しかし、幽が目の前の変人の下だということに、少なからず不満は感じた。
一位の理由が『彼だったら遊びでもいい』とか『テクニックがすごそう』とかいろいろ羅列されているが、静雄からしてみれば、何故臨也に惹かれるのか疑問でしかない。そもそも『テクニック』とは何のことなのか、静雄にはそこから疑問である。
「君の目の前に抱かれたい男No.1がいるんだよ。何か感想は?」
「なんでお前が一位なんだ?」
ただの変態だろうが。
最後の一言は喉の奥にしまっておいた。騒がれたら欝陶しい。
細長い指が開かれたページをトントンと叩く。どうやら理由の欄を見ろと言いたいらしい。見てもわからないから聞いたのだが、それ以上の説明をする気は臨也にはないようだ。
静雄は、雑誌を叩いた指を見た。白くて細長い指だ。しかし骨張っているので、女性的というわけではない。その指がふいに静雄の顔に触れた。
臨也の指は一言でいうなら綺麗だ。しかし、その指に触れられると、静雄には嫌悪感しか湧き上がらなかった。
パシリと渇いた音がした。臨也は払われた手を眺めながら、独特の笑みを浮かべて口を開いた。
「この指でさ、」
静雄の視線とぶつかる。彼は静かな表情だったが、瞳には嫌悪が渦巻いていた。
「いろいろされたい女の子が、たっくさーん、いるんだって。」
指が今度は静雄の顎をとらえる。

「君もそうだろ?」
君は男の子だけどね。

今度は店内にバンという音が響いた。ちらほらいた客が一斉に振り返る。集まった視線に気まずそうに身じろいだあと、静雄は乱暴に席を立ち、そのまま店から出ていった。残された臨也は好奇の視線を気にせず、会計を済ませて静雄に続いた。


静雄の魅力はあの目だ。臨也はそう思っている。抵抗的なあの目は臨也を興奮させる。初めて手を出した理由も、どんな目をするのか見てみたかったからだ。
結果は、想像と違った。最初は想像通りに、射殺さんばかりに睨みつけてきたが、少し触るとほとんど抵抗しなくなった。あてが外れて興味を無くすと思いきや、臨也は逆に静雄にどんどんはまっていった。
数回抱けば薬や拘束具を使わなくとも、静雄は臨也に抱かれるようになった。どうやら思った以上に快楽に溺れやすい身体だったらしい。この事実に一番衝撃を受けたのが静雄自身だった。
だからさっきのようにからかわれるのをひどく嫌う。


店から出るとまだ静雄の後ろ姿が見えた。携帯を取り出しながらゆっくり後を追う。周りがちらちら臨也を見ていたが、そんなことは気にも留めなかった。
「もしもし、シズちゃん?」

甘く囁く。

「待っててくれたら今日はたっぷり可愛がってあげるよ?」

静雄の足がぴたりと止まった。まるで地面に縫い付けられるように。それをにやりと見て、臨也は携帯をズボンのポケットにしまった。
「いい子だね、シズちゃん。」
頬を撫でるだけで、ぴくりと反応する身体。
「じゃあ、俺の家に行こうか。」
もはや静雄の全てが臨也を魅了していた。













「シズちゃんのほうから抱いてって言ってきたら、すごいかわいいと思うんだ。」
「……死ね。」
「その抵抗も可愛いよ。」






100902
最初はギャグを書こうとしたんです。
臨也を抱かれたい男No.1にしたくて……

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