気がついたら叫んでた



・中途半端



臨也が誰とも付き合わなくなった。今まで通り、女子から告白されることは多いのだが、全て断っているらしい。新羅はこれを聞いて驚いた。あの臨也が。全ての人間を愛していることを理由に、来る者拒まず去る者追わずのスタンスを貫いていたあの臨也が。

好きな子がいるといって告白を全て断っているのだ。
「どう思う??静雄。」
「いや、俺に言われてもな…」
静雄も臨也の突然の変化に驚いていた。


――――――――――――
入学して間もないころ、静雄は臨也になんとなく質問したことがあった。
「お前さ、この間別れたばっかだろ??もう新しい彼女つくったのかよ??」
「そうだけど?」
さも当然というような返答に、静雄は面食らった。なんだか自分が変な質問ををしている気分だ。
「お前さ…それどうなんだ?」
「なにが??」
いやだから…、と説明をすると、なぜか臨也が笑い出した。頭にきた静雄が机を振りかぶって、何故笑うのかを問うと、声を震わせながら臨也が答えた。
「だって俺は人間全てを愛してるんだよ?だから誰と付き合ってもおかしくないじゃん。」
ね?
問題がありすぎて何も言うことができず、静雄は気の抜けた声を出して固まってしまった。そんな彼女を尻目に臨也は続けた。
「あ、でも化け物のシズちゃんは許容範囲外だから。ごめんね。」
次の瞬間臨也の鳩尾に机が直撃した。声にならない呻きをあげて苦しむ彼には目もくれずに、静雄は走り去った。

「こんのろくでなしー!!」
廊下に静雄の叫びがこだました。


――――――――――――
「新しい悪趣味でも始めたんじゃねぇの??」
適当に新羅をあしらって、静雄は自分の席についた。しかしどうにも気分が晴れなくて、昼休みに一人で屋上に向かった。そこには静雄が今あまり会いたくない人物がいた。胸のもやもやしたものがさらに強くなり、舌打ちをして踵を返した彼女に、先客が声をかけた。
「あれ、どうしたのーシズちゃん?俺を見るなり帰るとか、流石にちょっと傷つくんだけど。」
「……。」
静雄はため息を吐きながら、臨也から少し離れたところに腰掛けた。静雄が座った途端、あのさ、と臨也が話をふった。
「新羅からなにか言われたでしょ??」
「は?なんで??」
「偶然聞いちゃったんだー。」
シズちゃんと新羅が話してるとこ。
聞かれていたことに若干気まずさを感じつつ、静雄はたいしたことじゃないと返事をした。
「ただ最近のお前について聞かれただけだ。」
「なにそれ」
はは…と笑う臨也を見ていたら、静雄に少しだけ好奇心がわいてきた。臨也が好きになった女子はどんな人なのだろうか。彼女の中でやめろという声が聞こえた気がしたが、これに答えてもらったら、胸のとっかかりが消えるような気がした。
「…なあ。」
視線で何かと問いかける臨也に、静雄は言葉を続けた。
「お前の好きなやつって…どんなやつだ??」
一瞬呆けた後、以前と同じように臨也が笑い出した。今回は周りに机どころか、投げられそうな物もなかったので、静雄はただ彼を睨むだけだった。
「そんなにストレートに聞くなんて、流石シズちゃんだよね。」
「あぁ??」
臨也は顔に血管が浮かびはじめた静雄に、落ち着けと手をふった。
「まぁまぁ、じゃあシズちゃんには特別に教えてあげるよ。」

「金髪でショートカットの子で、気性はすごく荒くて、照れたりするといろんなものを投げつけたりするんだけど、そこがかわいいんだ。それで、力がすんごい強い。俺も何度か殴られたことあるんだけど、マジで死ぬかと思ったよ。でもかわいいんだよね。」

一気にまくし立てられた臨也の好きな子の特徴を聞いて、静雄が思ったことは
『あ、こいつってマゾだったんだ。』
だった。

殴られてかわいいって…いや、他人の趣味に口だしするつもりはないけど……

「あのさぁ、さっきから失礼じゃない!?」
「!!?」
どうやら思っていたことが全て口に出ていたらしい。静雄の目の前には、呆れたような、怒ったような複雑な表情をした臨也が立っていた。
「だって、照れて物投げるとか、どう考えても迷惑だろ!!それがかわいいって」
「かわいく見えるんだから仕方ないだろ!!」

珍しく臨也が声を荒げたので、思わず静雄は黙ってしまった。そんなにその女子のことが好きなのかと思うと、なぜか彼女の気分は沈んできた。

「俺だって最初は信じられなかったさ!!」

―そりゃ自分がマゾだとは認めたくねぇだろうなあ…

「だいたい、なんなのシズちゃん!!馬鹿だとは思ってたけど、ここまでだとは思わなかったよ!!」
「はぁ!?」
いきなり馬鹿呼ばわりされて、静雄の声が若干凶暴なものになる。
「なんだよいきなり!!俺は関係ねぇだろうが!!」
「大ありだよ!!!」


「金髪のショートカット、ついでに力が強くて物を投げまくる女っていったら君しかいないだろ!!!」


時間が、止まった。静雄は「え?」と呟き、臨也は「しまった」といった様子で口を押さえていた。みるみるうちに、静雄の顔が真っ赤になっていく。
ふっきれたように臨也が髪をかきあげた。

「だから、俺と付き合ってくれない?シズちゃん。」






100813
中途半端ですみません…
青春なイザシズ♀を書こう!!と意気込んだものの、着地点が見えなくなったという罠。
もちろん二人はくっついて来神の有名バカップルになりま(ry
甘々が…大好きです

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