とりあえず目を逸らしましょう



昼間に関わらず薄暗い路地裏で、二人の少年が肩を並べて歩いていた。見た目が正反対である彼らは、幼なじみだった。
「ありがとう正臣。僕、池袋ってあんまり知らなくてさ…」
「気にすんな!俺とお前の仲だろ?任せとけって!!」
正臣は少し前から池袋で勢力を伸ばし続けている、黄巾賊のリーダーだ。一緒に歩いている少年―帝人は巨大勢力ダラーズのリーダーである。
ダラーズは黄巾賊より少し遅れて創られた組織だ。リーダー同士の仲がいいので、二つの組織は友好関係を築いていた。しかし、黄巾賊の本拠地は池袋だったが、ダラーズの本拠地は違った。帝人は池袋という大きな都市に憧れてはいたが、そこで生き残る自信がなかったのだ。そんな彼に正臣は「ダラーズだって大きな組織になったんだから、池袋に来いよ。」と声をかけた。地理がわからないと渋った帝人に、自分が案内をするといって、正臣は彼を説得した。

そして今日、正臣は池袋を帝人に紹介しながら歩き回っていた。
「ここはいろんな道に通じてるから、近道にはもってこいだ。でも複雑なところだから、迷わないようにしっかり道覚えろよ。」
「すぐには無理そうだなぁ」
少し歩いていると、明るい道に出た。目の前には見たことのある、いろいろ間違った寿司屋があった。
「へー!ここに出るんだ!!すごいなー。」
「じゃ、別のところに出る道を教えてやるよ。少し戻るぞ。」
正臣はすぐに後ろを向いて歩きはじめた。帝人も急いでそのあとにつづく。
「すごいね。なんでも知ってるね、正臣は。」
「俺だからな!!」
適当に返事をして、早く行こうと促す帝人に正臣は冷たいと騒ぐが、その声は無視された。正臣自身も、それを気にした様子もなく、また同じように道案内が始まる、はずだった。

「やぁ、紀田正臣君じゃないか。」
後ろから爽やかな声が響いた。その声を聞いた途端、正臣の表情が嫌そうに歪められた。振り返ると、痩身の美青年と見たこともないような美女が立っていた。
「………。」
それだけだったら帝人も驚きはしなかったが、二人の格好に固まった。男女はそれはもう隙間がないくらいべったりとくっついていた。思わず、歩きづらくないのかと聞きたくなるくらいだ。さらに美女の腰には青年の腕が回されていた。
「…どうも臨也さん、静雄さ」
「気安くシズちゃんのこと呼ばないでくれる??」
面倒くさそうな顔をしながら、謝る正臣を横目で見ながら、帝人は目の前のカップル(?)を見つめていた。美女はさっきから一言も話さずに、臨也と呼ばれた青年の腕にしがみついていた。
「その子、初めて見るね?誰だい?」
「あ、えー…と」
「…!あ、僕、竜ヶ峰帝人といいます…!」
突然自分の話題になり、反射的に自己紹介をしてしまった。隣では幼なじみが気まずそうに頭をかいている。
「俺は折原臨也。よろしくね。それで彼女は俺の恋人。」
「……はぁ。」
「それじゃ自己紹介になってないだろ。平和島静雄だ。よろしくな。」
帝人が返答に困っていると、初めて美女がしゃべった。相変わらずの姿勢だったが。むしろさらに密着しているような気さえする。
「あ、気安く俺のシズちゃんに話しかけないでね。シズちゃんは俺のだから。好きになったりしたら、二度と外歩けなくなるからね??」
「臨也、俺を信用してないのか…?」
「まさか!俺はシズちゃんしか信用してないよ!!ただシズちゃんが可愛すぎるから心配なだけさ!」
「それなら俺だって――」
なんだかわからないが、既に二人の世界に浸っているようだ。ついさっきまで話していた帝人達のことなど忘れたように、彼らは蜜語を交わし合いながら去っていった。帝人が声をかけようとしたが、正臣に止められた。しばらくそのままの体勢で立ち止まっていたが、二人の姿が見えなくなると、うんざりした様子で正臣が口を開いた。
「…あの臨也って人はここいらじゃ有名な情報屋だから、帝人もこれから関わることがあるかもしれないけどな、これだけは覚えとけ。」
少し真面目な雰囲気に、神妙な面持ちで次の言葉を待つ帝人に、重要だかよくわからないアドバイスが与えられた。
「静雄さんを見つめるな。臨也さんがマジでキレてくるから。」
「………はぁ?」
「あと静雄さんより臨也さんに近づくな。静雄さんがキレるから。静雄さんがキレると洒落になんねぇから。」
「それは絶対無理だから安心して。」
あれ以上密着することは不可能だろう。
しかし静雄を見つめないようにするのは難しいかもしれない。それくらい彼女は美しかった。帝人は次に彼らに会ったら、とりあえず虚空を見つめていようと決めて、道案内の続きを促した。







「あとあの二人にはなるべく関わらないようにしろ。いつもあんなんで、ぶっちゃけウザいから。」
「あー…それはわかるかも。」






100809
おかしいな…。メモにはヤンデレ書きたいってあるのに…ただのバカップルですねわかります←
でもイチャつく二人が書けて満足です。
舞台は『池袋』というパラレルワールドです。

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