どうしようか、このジレンマ



※津軽は護衛用人形設定
 もはやなんでもあり。



okな方はどうぞ!





羽島幽平が暴漢に襲われた。
これは一週間ほどメディアを独占した事件だった。

それは白昼に起こった。ドラマの収録をしていた幽平に、突然男が叫びながら切りかかってきた。しかし、男はすぐに取り押さえられたので、幽平自身に怪我はなかった。芸能人として名が知られてきてから、似たような被害には何度か遭っているので特に幽平は気にしていなかった。
しかし、周囲は違った。
今をときめく人気アイドルの襲撃事件に事務所は黙っていなかった。



「……いりません。」
「そう言うなMr幽平!私は君が心配なんだよ!」
幽は社長に呼び出されて、事務所に来ていた。目の前には社長本人と、もう一人『人形』が座っていた。
「"これ"なら君をしっかり守ってくれる。最近の文明は本当にすごいな!!」

「名前は津軽だ。ジャパニーズ民族衣装をチョイスしてみた!!あと外見は君の要望通りだからな!!」

幽が見ると、『津軽』が頭を下げていた。その人形は―幽の兄である平和島静雄に酷似していた。


数日前、幽はマネージャーからこんなことを聞かれた。
『幽平さんは誰と一緒にいるときが一番落ち着きますか?』
彼は兄と即答した。今思えば、あれはこの人形を創るための準備だったのかもしれない。『津軽』は社長が知人に頼んで特別に創ってもらった、護衛用機械人形だった。
向こう側は、幽に配慮して『一番落ち着く人物』の姿を模ったのだろう。しかし、それは彼にとって有難迷惑だった。勝手にこんな人形を創って押し付けたこともそうだが、その外見が一番の不満だった。

「…幽平さん。俺から離れないで下さい…。何かあったら…」
津軽は何もかも静雄そのものだった。(なぜか声もそっくりそのままだった。)その津軽に「幽平さん」と呼ばれると、いいようのない不快感があった。かといって「幽」と呼ばれるのも嫌だった。
「…俺は…」
君と一緒にいたくない。
という言葉が出てこなかった。静雄に言っているように錯覚してしまうのだ。

「……君は兄さんじゃない…。」
「……?はい。俺は『ニイサン』ではなく津軽です。」
よく意味がわからなかったのか、小首を傾げながら津軽は返事をした。そんな仕草も自分の兄そのままで、幽は複雑な気持ちになった。
「俺は、兄さんと一緒にいるときだけ…休めるんだ…。」
「……」
「兄さんだけだ……」
「……」
「君じゃない」
「お疲れでしたら、少しお休み下さい。」
「…そうするよ。」

津軽は自分の護衛をしっかり務めている。些細なことでも、『彼』のおかげで、助かったことも何度かあった。
しかし彼を見ていると、兄がそこにいると錯覚してしまう。兄が自分を「幽平」と呼んでいると錯覚してしまうのだ。

こんなことを考えるのは疲れているからだ。幽はそう理由づけて、目を閉じた。




「兄さん 。」






100809
幽と津軽を絡ませたかった…。
悶々とする幽が書けて満足です。社長の口調がいまいちよくわからない←

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