【1059taisen】
黒風白雨
酷く、荒れそうだと。
急な強風に加え大粒の雨が止む事無く降り注いでいるのが幸いだ。
俺の声が、誰にも届かない。
悦がり狂う俺の声。
外の風雨が暴れずとも"今の"あんたには届かないのだろうけれど。
夏の夜に猛る黒風白雨。
夕立の様な風流さを微塵も感じさせない土砂降りの雨。
まるで、狂い足りないあんただ。

―――…

ずちゅッ、じゅぷっ…ずぷッ…!

「ッ、あっ、はァッ、ああ…!」
「ククッ…」

嵐の様な風雨の如く組み敷き。
叩き込まれる情交。
段蔵は、一益の着衣を総て引き剥がすと仰向けに床間へ押し倒し。
一益の両脚を掴んで頭部へ向かわせ、自身も睾丸も後孔も持ち上げ晒す恥辱的な格好を取らせると。
孔の慣らしもそこそこに、既に硬く滾る己の自身を突き挿れ。
全体重を乗せた挿入を繰り返し、一益を喘がせていた。

ず、ちゅ…ずちゅっ、じゅぷ…!
こぷッ…

「んッ、う…あッ、あン…っ!」

律動を刻まれて奥へと熱い情欲の塊を打ち付けられる度。
一益の口からは同じ規則性をもって、途切れに鳴かされる。
中にはもう、出されていて。
後孔と自身の隙間からは時折、白い跡が零れ出し。
そして、再び。

「フフ…出すぞ…」
「っ、あ、やめ…ッ…もうっ、中に、は…出すんじゃ…ア…ッ!」

びゅるッ…!びゅるううっ…!
…びゅぶッ…びゅく…

「ひ、う…ううッ…く…」

"何時もの"段蔵にしても、静止を聞く様な性質ではない。
ましてや、"今の"段蔵では―――届かない事は分かっていた筈。
それでも一縷の望みに一益は中へ吐き出される事を拒んだものの。
段蔵はまるで一益の言う事など外の風雨で掻き消されているかの様にして、体重を乗せた挿入から白濁を一益の中に注ぐ。
許容を超えて噴き出した粘つく白濁が、背に向かい這う感覚。
そして中での射精に感じて、一益は全身をびくびくと震わせるが。
一益の自身は吐き出せず、ただただ腹や胸元を先走りで濡らし。
無様に跳ねるのみ。

「ク、ク…フフ…」
「…はッ…は…ぐ、う…」

ギリィ…ッ…

射精の余韻が続く中で、段蔵は頭部へ向けて持ち上げた一益の両脚の膝裏を掴む力を強めた。
喰い込む爪は確実に痕を残す。
加減が出来ぬ段蔵の、吊り上がった口角からは何時もとは異なる形容し難い畏怖を思わせる笑み。
仰ぎ見る一益が映すのは。
一益を認識しているのかどうかも分からない空虚な赤。
段蔵の喰らい方が酷くなるのは、決まって殺生事の後だ。
ころしぐるい…が。
喰らい足りぬ鬱憤の代償を一方的に払わされている様。
返り浴びたであろう血の臭いを、こんなにも纏っているのに尚。
赤を、白で埋めるのか?

…ずぐ…っ…

「う、アッ、ああっ…!」

膝裏を押さえる力を更に強め、段蔵は更に体重を掛ける。
抜かれる事無く挿れられたままの自身は根元まで咥えられており、それ以上の進入は無理に等しい。
だが、圧し掛かる重みは一益の中を間違いなく抉り。
近付いた赤は、問うていた。
言葉を発した訳ではないが。
"こんな事"になる度、段蔵は自分に問うていると一益は感じ。
問いの答え、は。

…ずるッ…じゅぷンッ!
じゅぽッ、ずちゅっ…ぐぷッ…

「か、はッ…あンっ…あッ…!」
「クク…終焉と思ったか…?」

問いも答えも、届かない。
それは―――外の黒風白雨が、総てを掻き消しているからなのだ。
終わらない繰り返される淫らな宴の音色ですら。
風雨に呑み込まれるのだから。


―――べっとりと。
俺の身体にこびり付いた硝煙の臭いの"先"にあるモノが。
あんたが纏う臭いと。
何が違うのか。
俺はまだ答える術を見付けられず、あんたに抱かれている。

■終幕■

◆元々は昨年の秋にメモしていたネタなので、長雨や台風を想定したのだと思うのですけれども。
話としての長さが足りなかったので、ずっと保存止まりでした。
今なら拍手御礼に丁度良いくらいの一口えろかな、というのと。
寧ろ夏の突発的な豪雨に向いている話かニャー、と。
黒風白雨、激しい風と強い雨の意は色の印象で段蔵に似合うというか想起してしまいますね。
ところで体位は最初、頭を押さえ付けてのバックでしたが…
…まあ所謂…ちんぐり返しでガッツリ的なのは、このテの話じゃなきゃ書かないだろうなーと思ったので自分に従う事に(笑)
一益にnkds拒否も言わせてみたかっ…げふんげふん。

2012/07/20 拍手御礼
clap!

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