【1059taisen】
それは愚かな恋にも似た羨望
柔らかな顎(あぎと)に囚われる。
心地好く、淫らな。
だが、顎は顎。
内には妖しく煌めく牙が有る。
まるで―――蛇、だ。


「…はッ、あ…く…っ…」

絶え間無く与えられる悦に、一益の身体は夜闇に舞い踊り。
嬌声が奏でられる。
座りの姿勢から後ろに手を付き、一益が舞いの相手を見れば。
段蔵、は。
一益の自身に舌を這わせ、添えた指先は鈴口を玩んでいた。
びくりと自身が脈打つ度に、愉しげに輝く赤の双眸。
指先の代わりに鈴口へ舌先を…つぷりと差し入れ、拡げる様に舐り回し先走りを絡め取ってゆく。

れるっ…ぴちゃ、ちゅく…

零れた唾液と先走りで濡れた亀頭に、段蔵が口唇を触れさせると。
ちろちろと舌での愛撫を施しながら点を突く様に吸い上げて。

「ぅ、あっ…ふっ…ぐッ…」

喘ぎ奏でるに抗おうと、一益は下唇を噛み声を押し殺そうとする。
悦の震えに制御ままならない。
それでも。

「…フフ…」

様子に気付いた段蔵は、眼だけを上に一益を見やると。
口角を吊り上げ、鈴口から裏筋、竿や睾丸に至るまでねっとりと舌と口唇をもって嬲り上げた。

「〜〜〜ッ…!」

ぎりり、と、音が。
実際はどうだったのか、それは一益にも分からない。
ただ、強く強く下唇を噛み締めた事だけは確かで。
うっすらと、赤が滲む。

「色の最中に血を見せるな…クク、殺したくなるだろう」
「…ふ…ッ…」

気が付けば、一益の眼前には同じ色があった。
物騒な物言いに、一益は某かを言い返そうかとも思ったが。
性衝動、殺衝動。
同じ位置に存在している事が分からなくもない自分が居て。

にちゅっ…くちゅ…

「…っふ、ぁ、あッ…!」

双眸を合わされたまま。
不意を打って段蔵に自身をゆるゆると扱かれる。
思わず、噛み締めるを解いて奏でを伴い口を開けば。
扱くとは逆の指先が下唇に、そろりと触れてきて。
ぴり、り。
それは初め、傷口に触れた事に拠るものかと一益は思ったが…どうやら傷みの類とは異なる。
痺れる様な感覚が下顎にも伝い始め、力が入らない。
強くはない為、喋る事は可能だが噛み締める事は封じられた。
施した術の具合を良しと見ると、段蔵は指に付いた一益の血をぺろりと舐め取り…身体を近付ける。

…にゅる…にちゅっ…ぬるっ…
ちゅ、くっ…ぐちゅっ、ぢゅっ…

「な、アッ、はッあ、ン…!あつ、い…ッ…!」

緩慢に扱かれていた自身に、熱い塊が押し当てられ。
その塊もろとも、ぐちゅぐちゅと卑猥な水音を辺りに響かせながら無遠慮に激しく扱かれる。
熱の、塊の正体は段蔵の自身。
唾液と先走りに濡れるを共有し、ぬらぬらと鈍く輝きながら屹立する自身同士が交じり合う様。
一益は、己の欲の熱さなのか段蔵の欲の熱さなのか。
判別が付かず猛る劣情に身悶え、天井を仰ぎ一節を奏で鳴き。
段蔵の眼前に、白い喉を晒した。

…ぴちゃ…っ…れろっ…

蛇の前で喉笛を晒すのは愚であると、一益も理解はしている。
だが、晒してしまった。
その喉に段蔵の舌が絡み寄せる、喉仏を中心に何かを定める様に。
そうだ、顎の奥には―――

カリ、リッ…

「…!…す、はっ、あ…」

歯を。
否、牙を立てられた感触。
激しい痛みが伴われた訳ではなかった筈だが。
…だが、呼吸を確認していた。
己の喉笛が咬み千切られ、喰い破られてはいまいかと。

「フフ…」

ヒュウと通った一益の呼吸に、段蔵は見透かした様に笑む。
まだ―――だ、と。
段蔵は一益の喉笛を口唇で優しく食み、それは徐々に鎖骨へ。
其処にも柔らに牙を立て、仄かに赤く瞳と同じ色の印を残した。
その間にも、段蔵は握り込む互いの自身を扱く事を止めず。
にちゅにちゅと粘質を纏う厭らしさ、ひとつになっているのかと。
そんな事を思う程に。
今の自分の自身は、段蔵の掌の内でトロトロに蕩けながらも…あり得ない程に硬く屹立しているのだと一益は理解した。

「フフ、貴様…暫くコレを雄として使っていないだろう」
「…な、に…ッ…?」

亀頭同士を掌で包み込まれ、互いの鈴口が口付けられ、ぷちゅぷちゅと間の抜けた音が奏でられるものだと一益が思っていると。
すぐには意味を理解しかねる段蔵の台詞が聞こえて。
だが、つまり、「コレ」とは。

「…最近は、あんたの相手ばかりやっているからな」

亀頭同士から竿同士へと、ゆるり握り込む位置を変え。
手首を回し、交じり合わせる感触を愉しまれながら。
一益は、段蔵が自分の自身に対して「コレだ」と合図を送る様に指先で撫で擦っている事に気付いた。

「クク、当たり前だ。俺以外の相手などさせぬ」
「…だったら、使える時なんて無いだろうよ」
「そう言うな…フフ、どうだ?使わせてやっても構わぬぞ…」
「何だっ、て?」

ぬちぬちと玩んでいた自身から手を離し。
最早どちらのモノとも知れぬに塗れた指先に舌を這わせて。

「貴様が望むなら、良かろう…俺を殺してみるか?クク、俺は…俺を殺せる化生を探している」


―――貴様は。
どうなのだ?


そう囁いた段蔵は。
官能と幽玄を湛えた自らの肢体を、如何に魅せるか知り得た艶めかしさを持って一益を誘い招く。
自身すら臆面無く曝け出し。
瞳の赤は、捕食者の晧々たる輝きから吸い込まれる蠱惑と変わる。
蛇であった筈の化生は。
今や、猫だ。

「…フ、っ…」

自身から零れ落ち混じる先走りは、一益も既にそうだが段蔵の後孔をも濡れそぼらせていて。
それを見せ付ける様に脚を広げられ、一益は盛る息をどうにか内へと押し込めるが。…しかし。
屹立している自身の欲情は目覚めてしまっていた。
グズグズに―――突き崩したい。
その孔へと突き挿れたい情炎を、未だ力の入らぬ下顎だが…それでも、噛み殺し鎮めなければ。

「…遠慮しておくぜ、俺は…只の人なんでな」
「クク、まだ言うか」
「…"そう"だとしても、あんたを満足させる自信も無いぜ」
「フフ、普段からは"らしく"ない事を吐くじゃないか」
「あんたに気に入ってもらえなければ首と胴が別れるだろうしな。流石に、そいつは御免だ」
「そもそも見込みの無い奴を誘ったりせぬがな…まあいい」

誘いに乗らずの一益に、段蔵は少々興を削いだ風だったが。
猫の興味は気紛れに。
如何にしたものかと射抜く様な視線を、一益へ送る。

「…おい、横になれ」
「…こう…で、いいのか?」

正直、そんな事を考える暇が無かったからこそ…なのだが。
ずっと後ろに手を付き悦に震える身体を支えていた為、腕には相当な負担が掛かり続けていた。
段蔵の言葉に支えの役目を終わらせ、身体を横たえさせると。
両の腕や屹立したままの自身を含め、痛みとも心地好さともつかぬジンジンとした甘い痺れに身体が包まれていると理解して。
横たえさせた、という事は。
下肢から背を伝い脳にまで響き渡る様、この程度の痺れでは済まぬ程に貪り突かれるのだと―――

「っ…おい、あんた…何をするつもりなんだ?」
「何を、だと?フフ、まさか分からぬ未通女ではあるまい」
「…それはそうだけどな…」

いや、それにしても。

自分の上に覆い被さるもの…と、思っていた段蔵が。
何故か自分の隣に同じ様に身体を横たえさせようとしている事に、はじめ一益は疑問に思うも。
すぐさま、その理由を察した。

(…二つ巴、かよ…)

そう、一益とは逆。
段蔵は一益の脚側に頭を向ける格好で身体を横たえさせており。
未だ遊び足りぬ一益の自身を目の前にして、短く息を吹き掛ける。
となれば、当然。
一益の眼前には…段蔵の。
熱さに盛り、情欲を掻き立てられた自身が差し出されていた。

「折衷、という事だ」
「…物は言い様、だな…」

公平に行為を施せる体位、という点は確かに中庸かもしれないが。
結局のところ段蔵の強要である点に、公平さは無いだろうと一益は返してやりたかったけれども。
それを言ったところで、だ。

(…全く、俺も甘い…な)

横向きに寝の姿勢を取った段蔵と同じく一益もまた身体を横にして向き合い、軽く脚を開き。
下側となった太股へ、互いの頭を乗せて睦むが…二つ巴。

…ぴちゃっ…ちゅ…っ…

そろりと一益が段蔵の自身に手を伸ばし添えると、まるで焼けた鉄に触れたかの様に滾る剛直。
鈴口から涎の如く溢れそうな先走りの溜まりに舌を這わせ。
口付ければ。
欲の味に目覚め、一益は自ら進んで咥内を捧げる。

「…はッ…ふっ…」

段蔵にそうされた様に、鈴口には指の腹を当てて撫で擦り。
亀頭から竿に至るまで丹念に舌と口唇で愛撫すると。
一息を置いて。
一益は段蔵の自身を、ゆっくりと咥え込んでゆく。

…じゅっ、ぷ…ちゅうっ…

「ンっ…う…」
「クク、以前もそう思ったが…貴様は咥えるのが余程、悦いらしいな。先程までよりも硬いぞ?」

れろ、おっ…かぷっ…

「ッ、ふっ…んンっ…!」

一益の口淫を暫し窺っていた段蔵だったが。
咥内に段蔵の自身を含むや眼前の一益の自身が跳ねるを見て。
双眸を煌めかせ愉悦に笑み、大きく亀頭を舐め上げ甘噛むと。
一益は、その悦にビクリと身体を震わせた。

ちゅぶっ…ちゅっ…じゅぷ…
…ぬる…っ…ズッ、ぷちゅッ…!

「―――!フッ、うっ、ン…!」

室内には、一益と段蔵が互いの自身を愛撫しあう淫らな水音と熱にくぐもった声だけが密やかに。
しかし不意に、それを破る様に一益がこれまでよりも高く鳴く。
太股の間に手を滑らせ後孔を弄られたと感じた時には…既に指が。
ぐちぐちと音を立てながら内を解しつつ指の数を次第に増やし、段蔵は口淫の律動を速める。

…ぐちゅ…ズッ、ずぷっ…
じゅぽっ、ぢゅぷ…じゅぷ…っ!

「…っぷ、ふぅっ…!そん、なッ…きゅ、うに…ア…はッ…!」

びゅるうっ…!びゅるるッ…

口淫と尻の内を抉られるに耐え兼ね、一益は段蔵の自身から口を離して制止しようとするが叶わず。
段蔵の咥内に白濁を放つ。
それは多量の精にもかかわらず、段蔵は総て受け止め。
喉を鳴らし飲み干すと、漸く一益の自身から口を離した。が。

「…ハッ、あ…は…っ…!…まて…よッ…ま、だ…ッ…!」
「フフ、綺麗にしてやる」
「くっ…ふ、ぅっ…!アッ、んッ…や、め…!」

急激に促された射精の余韻に浸り、自失しそうになる意識をどうにか支えようとしている一益を。
全くお構い無しに、段蔵は吐精したばかりの自身に再び口唇を寄せて丁寧に精を舐め取ってゆく。
萎えたくても萎えられず、射精で敏感になっている自身は…舐め這われる度にビクビクと打ち震え。
一益の口からは、喘ぎ鳴くが止め処無く零れた。

「…ところで貴様、悦に浸っているところを悪いが…」
「な、ァ…っ…?」

…グ…ッ…!

後孔への抜き挿しも止められず、喘ぎを自制出来ぬ一益に。
段蔵は肘を付いて身体を軽く起こし、腕を伸ばすと。
一益の頭を押さえる。

「そう貴様ばかり愉しむな…クク、俺がまだだろう?」
「ふッ、う…は、ぁ…っ…」

押さえ付けられた事で、眼前を通り越し一益の頬には先程まで咥えていた段蔵の自身が当たり。
熱さと脈動に、眩みそうになる。

…れるっ…れろっ…じゅ、ぷ…
ちゅぷっ、ちゅく…ッ…!

おずおずと段蔵の自身に今一度、舌を絡ませ。
ゆっくりと咥え込み、続きを。
その間も段蔵からは後孔を幾本の指で犯され、口淫を疎かにして乱れ喘ぎたい欲を封じ込め。
ただただ、段蔵に奉仕した。

「そうだ…零すなよ…!」
「ンっ、う…ぐッ…!」

びゅうっ…!びゅるうっ、るる…

咥内で勢い良く吐き出された精を、一益は言われた通り口端からも零さず徐々に飲み下してゆく。
ずるりと、飲み込み終えた一益が段蔵の自身から口を離すと。
白濁の糸が鈴口と口唇を繋ぐ。
ぷつりと切れた糸は玉と変わり、反射的に手の甲で受け止めて。
それすらも。
約束は違えぬものと舐め取った。

「…ん、っ…」

…ぴちゃっ…ペロ…ッ…

となれば次は、吐き出した段蔵の自身を浄めようと―――

「フフ、上出来だが今は必要無い…貴様の孔も解れた事だしな」

そういえば。
頭を押さえ付けられていた。
それが。
仔犬でも愛玩する様に撫でられたのは―――気のせい、だろうか。

ギシ…ッ…

「気にするか?」
「…?何を…ああ。」

完全に身体を起こし。
一益の上に覆い被さった段蔵が今、何を言っているのか。
火照り蕩けた瞳で一益が見上げると、顎に指先を添えられる。
―――口吸い、か。

「…俺も、あんたのを咥えているんだがな」
「フフ、そう潔癖ではない。俺は気にせぬ」
「だったら気にする必要は無いだろうさ。…というか…あんた、気を遣うなら他にもっと―――」

一益が何時もの口巧者を発揮しようとするを、段蔵は遮り。
口が開くを良い事に、口唇を重ね合わせると同時に舌を入れ。
だが、それは。
一益が予想していたものとは少々…異なっていた。
ゆっくりと舌同士を交じり合わせ、口唇もじっくりと味わう様。
角度を変えて甘く口唇を奪いながら、段蔵は自らの自身をゆるりと扱き一益の後孔にあてがう。


―――この時、この瞬間。
あんたは、化生でも獣でもない。
まるで、俺の、恋人だと。
人にも化生にも獣にも成れない俺は、信じたくなる。
"そう"、させるんだ。
誰の望むにも合わせ人にも化生にも獣にも成れる、あんたは。
しかし誰にも、媚びず。
嗚呼、なんて―――


「…フフ、どうした?今から惚けられたのでは、つまらぬぞ…」
「…ああ、そうだな」

口唇を離した段蔵は、一益の瞳に虚ろを認め気付けると。
一益は光を戻し、段蔵の首に腕を回して甘える様に縋り。

「…飛ばせて…くれよ。あんたなら、出来るだろう?」
「クク、貴様が望むなら…な」

吊り上がる口角と同時。
一益の後孔には段蔵の自身が突き立てられ、無遠慮に抉られる。

…ずちゅっ、じゅぽっ…ずぷッ…

「あッ、ン…はァッ、アっ…!」

繋がる箇所を想い。
キツく一層に段蔵を抱き締めれば、望む通り。
一益は己の身体もこころも。
夜闇の宙へ、真白に舞い浮かび飛ぶを感じていた。


―――俺は、きっと。
総てに自由なあんたが、羨ましくて仕方がないんだろう、な。

■終幕■

◆一度、所謂69なプレイを書いてみたいと思っておりまして。
しかし三国志側の取り扱いCPでは自分の中で、しっくりいかず…
密かに、ずーっと保留のネタになっていたのです(´・ω・)
それを何故に段益で書く気になったのかと考えてみたら。
まず、その、基本的に忍者は受けじゃ!という思考が元々あって。
その点で言えば、作中にも少し描写しましたが段蔵にも受け要素が有ると思っているのです。
…ド級の女王受けだろうけど…それもまた良し。によによ。
じゃなくて(;´ω`)
フェラ描写自体は、受けがしても攻めがしても萌えるのですが。
書く割合から自分の癖を顧みるに、受けが行う方がより美味しいプレイと捉えているので。
受け要素持ち×2の段益で69を書くのが、しっくりかな…と。
兜合わせを書くのも久し振りだったニャー…むふふ(*´ω`)
もう本当にねえ、挿入してからのどうこうよりも、その前のベタベタを書くのが大好きなの!(笑)

鶴の周りを飛ぶ雀の自由を羨んだ…何て逸話が残る一益。
そういう…器用だったのに不器用というか、そんなところがまた愛しくなっちゃうじゃあないか。
珠光小茄子の件だってそうだよ、キュンキュンしてしまう。
そんな一益の、ささやかな自由を望む心中と。超!フリーダム!思考な段蔵を交錯させたい。
段益で書いていきたい、ひとつのテーマというか形です(*・ω・)

2011/08/15 了
clap!

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