【1059taisen】
どうしようもない大切な想い
身体の一点に集約する熱が、この状況を現実だと知らしめる。
幽かな灯りひとつの中での情交。
寝そべる嘉隆が見上げれば自分に跨がり昂りを咥え込む一益の姿。
恋人になり、身体を重ね。
それでも嘉隆には叶った想いが大き過ぎて、夢の様な現状を信じられない気にさせられるのだが。
一益の後孔に埋めた自身が感じる熱はホンモノ。
劣情混じりの温もりに、嘉隆は改めて恋仲の幸せを噛み締め。
自身を更に大きくさせて。

「ん、んッ…!…大きくするのは結構だが…動かないのか?」
「だって騎乗位なんだからさっ…まず、一益殿が動いてくれよ」
「…言うようになったな」
「何時までも一益殿に主導権を握られっぱなしじゃないぜっ!」
「ふ…良い威勢だが…簡単に根を上げるんじゃないぞ、嘉隆」

ず、るるッ…ずちゅっ!
ぱちゅっ、ぱちゅン…っ!

「ちょ、一益殿いきなり…っ!」

動かぬ嘉隆に焦れを覚えた一益が、ずっぷりと根元まで咥え込んだ自身を亀頭近くまで引き抜き。
再び根元まで咥える深い律動。
肉壁を巧みに自身へ絡ませ、少しばかり生意気な口を利く嘉隆を早々に達せさせてやろうという意。
睾丸に溜めているであろう精の総てを搾り出してやろうか。
口の端を舐め上げた一益が嬌笑し、腰を落とそう―――と。

…ずちゅんッ!ぐにっ…ぐりッ…

「っは…あ!…くっ…嘉隆ソコは…や、めっ…!」
「ココかっ?へへ…ココが一益殿の気持ち良いトコなんだなっ!」
「ち、がっ…あッ、ひぅッ…!」

ぱんっ、ぱちゅッ…ぱンっ!
ずりゅッ…ずちゅっ!

落とす腰に合わせて突き上げられた衝撃も一益を痺れさせたが。
それ以上に一益にとって耐え難きは、硬く猛る嘉隆の自身が悦い箇所を刺激し始めてしまった事。
反応から気付いた嘉隆は一益の腰を両手でがっしりと掴み。
叩き付ける様な短い律動の突き上げはしかし、滅多やたらに見えて集中的に悦い箇所ばかりを狙い。
パンパンに膨らんだ亀頭に責め立てられた一益は、遂に。

びゅ、る…るるっ…ぱた、たっ…

「あ…一益殿っ…イっ…た?」
「…く、そっ…不覚…だ…」

ビクビクと全身を痙攣させた一益の鈴口から溢れる白濁。
だが勢いのある迸りではなくトロトロと吹き零れる様な射精であった為、嘉隆は動きを止めて思わず声に出し、聞き確かめた。
一益からの明確な返答は無かったものの、自分の腹に落ちた滑りを指で掬い取ればソレは間違いなく吐き出された精の跡。
イかせた実感がようやく沸いた嘉隆は一益の自身に手を伸ばす。

にちゅ…くちゅっ…

「スゲっ…こんなに出てる…」
「や、めッ…触る、な…!」

ただでさえ達したばかりで足腰がまともに機能しないというのに。
最も敏感な状態にある自身を弄ばれては、一益も余裕が無く。
まだ達していない嘉隆の自身がナカで脈打つ度、一益の鈴口からは精が止まらず嘉隆の手を濡らし。
ぬちゅぬちゅと扱く水音。
強い快楽の波に、一益が天井を仰ぎ上体を弓形にしならせた時。

ぐいっ…!…ぎゅむ…っ…

「な…嘉隆っ…?」

唐突に一益の自身から手を離した嘉隆は、自らのモノを一益の内に埋め込んだまま胸元に抱き寄せ。
何事か意図を読もうという眸。
しかし情欲に潤む愛しい一益の双眸を、じいっと見詰め。
口唇を奪う。

「ンふっ…んん、は…」

重なるや舌を捩じ込む嘉隆。
強引で性急で、なのに。
咥内を蹂躙される心地も。

…ちゅくっ…

「なあ一益殿っ、俺の抱き方って…その、気持ち良いかな。」
「ど…ういう質問だソレは…」
「そのままだぜっ!ちゃんと気持ち良くなってくれてるか、さ」
「ふ…ンっ…」

もっと咥内を味わいたいが、問いの答えも聞きたい表れだろうか。
銀糸を引いて離した一益の口唇を、嘉隆は優しく舐め上げ。
喋る自由は利く程度に、口唇で口唇を食み愛でる。
一益からしてみれば…人に羞恥な言葉を言わせる趣味が、お前にあると思わなかった、とでも言ってやりたい気分なのだけれども。
嘉隆の眼差しは真摯。

「今までも何度か…似た事を聞いたりしたと思うけどっ…」

ぎゅうっ…

「しっかり聞きてぇんだ、俺は一益殿を気持ち良くさせれてんのか…俺ばっか、じゃ…何にも意味が無くなっちまうからっ…」
「嘉、隆…」

不安を混ぜた腕が一益の身体に絡み、縋り付く様に。
その腕に絆された訳ではない。
偽りの無い、答え。

「…い…いっ…お前に抱かれるのは、堪らなく気持ち良い、ぜ…」

…びゅぶっ!びゅるるるッ…!
びゅく、びゅるう…っ!

「う、あッ…!急にな、んっ…」
「へへっ…すまねぇ一益殿…すっげえ嬉しかったモンだから、我慢出来なくて出しちまったぜっ…」
「何だその理屈、は…」

答えを聞いた嘉隆の、一益を抱き締める腕が自信と力強さを取り戻した―――ように見えた瞬間。
嘉隆は一益のナカに向けて溜め込んだ多量の精を一気に放つ。
射精の勢いも長さも尋常ではなく、肉壁は精に溺れ蕩け。
奥へ広がる熱さに一益は身悶えながらも、包まれる多幸感に酔う。

「…一益殿のナカって気持ち良いなっ…あったけえし、きゅうきゅう締めてくるし、ぬるぬるで…」
「っ…お前が今、出したから…滑るんだろうが…」
「ん?…あ、そっか。へっへ…」

聞かされる一益の方が恥ずかしい事を言う嘉隆に呆れるけれど。
本当に喜んでいる笑顔の前では許すしかない、というところか。
どちらが言い出すともなく、求め合うままに重なる口唇。
昼は今も夏の暑さが残る日もあるが、夜は既に秋の空気。
ぬくもりの、お裾分け。

「ヤベっ…また出ちまいそうなんだけど、イイかな一益殿っ…」
「…それを聞いた俺が嫌だと言ったら、お前は止めるのか?」
「う〜ん…無理!だってよお、一益殿すっげえ気持ち良いから。ナカだけじゃねぇぞっ、一益殿の全部が大好きで気持ち良いっ!」
「お前、な…気持ち良い、だとか…そんな連呼するな…」

一益が嘉隆の口唇に歯を立て、少しだけ反抗を見せるが。
当の嘉隆はというと、抗っている等とは全く考えてもいない様子で変わらぬ満面の笑みを浮かべ。
可愛い戯れだな、といった風。

(…どうしようもない…な)

歯を立てた口唇を軽く舐め。
涼やかな虫の音だけが響く夜、満たされるまで睦み合うふたり。
秋の夜風に一益は知った。
そんな"どうしようもない"が、何より大切な想いとなり得る事を。

■終幕■

◆9月9日は旧暦で一益の命日にあたるので、何か更新したいなと考えた訳ですが…単にエロしかない話になってしまった(苦笑)
今とても書きたかったのが九鬼益の甘えっちな事もありますが。
九鬼益ヤング組で最初に書いたエロの体位って騎乗位だったけれど、今書いたら少しは日輪嘉隆は成長しているかしらとか(笑)

2014/09/09 了
clap!

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