【1059taisen】
ひつじのキモチ
)あけおめ義宣&義広くん♪



「う〜ん…似合ってるかなぁ…」

もふもふモコモコ。
特徴的な巻き角が付いた白いフカフカの塊が鏡の前でにらめっこ。
頭から太股の辺りまで、モコモコ真っ白な一枚布を被った様で。
首元を大振りな鐘が付いた留め具で留めて顔が出るようにし、ずり落ちも防いでいるので確認の為に多少は大きく動いて大丈夫。
鏡で己の姿を様々な角度で確認する度にカランと澄んだ鐘の音。
巻き角の位置が少し気に入らなかったのか、左右綺麗な対称になるよう一生懸命に整える…義広。

「兄さん、似合っているって…言ってくれると良いんだけど…」

義広が居る部屋より遠くからは随分と賑やかな声が聞こえている。
どうやら新年を寿ぐ宴が既にたけなわ、といったところか。
本来なら義広も佐竹家中の宴であるし輪へ加わるべきだろう。
だが義宣に見てもらいたい一心。
宴の前に少しだけ最終確認…の筈が、結構な時間が経った模様。

「おおい義広。…此所か?何をしているのだ、開けるぞ」
「え、ええっ兄さん!?わっ、ちょっ、ちょっと待って〜…!」

…ガタ…スサッ!

「…んんっ?」
「…あ、うう…え、えっと…」

漸く巻き角の位置が綺麗に定まり、自分の中で納得したところで。
流石にそろそろ宴に顔を出した方が良いだろうと、鐘の留め具に手を掛けてモコモコを脱ごうとしたところに義宣が呼ぶ声。
着たままで居るか急ぎ脱ぐか…義広が判断を迷う間に襖は問答無用で開かれてしまい、着たまま義宣と目が合い固まってしまった。

「義広、それは…ああそうか、羊だな。干支という事か」
「う、うん。…あれ?兄さんもしかして…少し酔ってる…の?」

現れた義宣は何時も通りの凛然な姿に最初は思えたのだが。
近付く足取りや話し方にどことなく揺らぎが見え、纏う微かな酒気から酔いの回りを窺わせており。
とろりと蕩けた双眸。
普段はなかなか見る事の無い色香を帯びた眼差しに、義広は心音が聞こえはしないかと思う程に胸がドキドキと高鳴るを感じる。

「父上の機嫌が随分と良く、次々に杯を進めてくるものでな…断る訳にいかず、かなり呑んだ」
「そ、そうなんだ」
「だから義広を呼ぶのも兼ねての酔い醒まし、だな。」
「ごっ、ごめんなさい…すぐに着替えて宴に加わるからっ」
「そうしてくれ。…それにしても…その格好は似合うな義広」
「…え…?…ほっ、本当?」
「俺は嘘がつけん性分だ。世辞ではなく似合うと思う」

義宣に手間を掛けさせた焦りから聞き逃しそうになった言葉。
けれど確かに今、義宣は義広が最も欲しかった言の葉を。
ぱああっと顔を明るくして義宣に聞き返せば、ほろ酔い上機嫌といった笑みと共に偽り無きを告げ。

「加えて、とても暖かそうだ」
「うん!羊さんの毛だから…フカフカしていて暖かいよ!」
「そうか、どれ」

もぎゅむーっ。
モコモコ。もふもふ。

「…〜?!?!?!?!…にっ、兄さんあの…少し…く、苦し…っ…」

てしてし。ぎぶぎぶ。

「む?…おっと…すまぬな、酔いで加減が出来なんだ。許せ」
「へ…平気…だけど…」
「うむ、確かに羊毛の作りだけに外から触っても暖かいな」
「…そ…そう…で、しょ…」

「義宣ーッ!何をしておる、義広もまだ来ぬのかぁーッ!」

「…やれやれ父上がお呼びだ。とにかく早く来るのだぞ義広」
「は…はぁい…」

義宣が、まだ酔いが醒めた風には見えぬ足取りで部屋を去ると。
何が起きたのか、まだ現実味の無いままの義広だけが残る部屋。

「…は…初夢…かな?」

ぎゅうううっ。

「い、イタタっ…ゆ、夢じゃないや…兄さん、ぎゅむっ…て」

夢か現か強めにつねった頬は力を入れ過ぎ赤くなっているのだが、既に耳まで茹だり赤面している為に赤さは同化してしまい。
ただ、ジンジンと残った痛みが現であると伝え。
起きた事実を徐々に理解してきた義広には、悔やむ想いも抱く。

「…よっ、ようし…今年の抱負はコレに決めようっと…!」

胸の前で両の拳を握り締め。
ひとつ、気合いを入れると首元の鐘が思い出したように鳴る。
次はしっかり受け止められる様。
ちょっとだけ逞しくなろうと、義広は未年に誓いを立てていた。

■終幕■

◆2015年の初小噺!
…それが諸事情で下書き無しの携帯一本打ちという有り様で(汗)
どうなんだって幕開けですが、とにかく今は佐竹熱が止まらないので下書きが無くても書けるなら書いてしまえ!という感じです。
現パロにするか迷って、結局は当時寄りに仕上げたのですが。
素直に現パロにしておけば、フードとかマントとか説明がもっと楽だった気がしてならない(苦笑)
取り敢えず、ウチの義宣&義広くんは今年も仲良し兄弟デスヨ?
他のCPに関しても引き続きちまちま小噺を書いていきたいと思いますので、本年もお付き合い頂ければ幸いです!(*´∀`)ノ

2015/01/03 了
clap!

- ナノ -