【1059taisen】
九の背伸びと一つの意味
―――ちゅ、ちゅっ、と。
愛しい一益殿の口唇が小さな音を立てて俺の身体の上を跳ねる。
胸の先端を時折、舐り。
顔から首から胸元から腰に至るまで丁寧に口付けられて、それだけで頭ン中が蕩けそうになって。
とっくに反応してる自身。
優しく握り込まれたかと思うと、ソレにも口唇を寄せられ―――

ちゅうっ…ちゅ、ちゅくっ…

「そん、な…汚ねぇからっ…そこまで、やってくれくてもっ…」
「…洗ってるみたいだが?」
「いや、そりゃ…一益殿のナカに…って思ったら…ん、くっ…!」

―――咥えられた亀頭。
もむもむと口唇の柔かいところだけで甘く食んだかと思うと。
温かい咥内の心地に加えて、すぐに舌の感触が自身を這う。
鈴口や裏筋を重点に、ちゅぷちゅぷって俺のを―――

「は…っ…あ…一益…殿っ…すっげ…やらし…顔っ…」

―――言って少し後悔した。
勿論、この意味に一益殿に対して蔑みを含んだつもりは無え。
だけど一益殿にしてみれば…もしかすると侮蔑的に聞こえちまったかもとか過ぎって、続けて何て言えば良いんだか―――

ちゅぽっ…れる、るうっ…!

「あ、ふっ…一益どのっ…?」
「…コレが素敵だから、だろ?」

―――ねっとりと竿を舐め。
上目に微笑まれながら俺の自身に口付けてンな事を言われたら。
もう流石に完勃ちだろとか思ってたのも、まだ勃つもんで―――


「…あの、すいやせん…お頭」
「ああ?何だよ、まだまだ序盤の話しかしてねえんだぞ」
(…これで序盤って…まさか一夜の最後まで話す気なのか…)
(マジかよ、俺らの方が聞いててクソ恥ずかしいだろコレは…)

九鬼水軍、内々での新年寿ぎ。
と言えば聞こえは良いが基本的な見た目は海賊の酒盛り中。
酒の入った嘉隆が急に、ちょっと俺の決意を聞けと言い出した…ところまでは構わないのだが。
話し始めたその内容というのが先の通りな訳で、聞かされている部下達からしてみれば一体全体どこに着地する話なのかと。
一旦、話の腰を折る。

「その、続きを聞く前に確認しときたい事が有るんで…」
「しょうがねえな、何だぁ?」
「えっと…今ってお頭の惚気話を聞かされてるんスよね?」
「ちっげえよ!どこをどう聞いたら、ンな話に聞こえんだっ!」

どこをどう聞いてもです。
そう言いたいのは山々だが言ったら確実に嘉隆の拳が飛ぶ。
故に部下達は全員、心の中でツッコミを入れるに留めたものの。
ならば何の話だというのか。

「いいかっ!去年は一益殿に前戯してもらいっぱなしで!超、気持ち良くしてもらった訳だっ!」
「はァ…」
「だから今年は!俺から率先して一益殿を気持ち良くさせたいっつぅ、そういう話だろうがっ!」
「最初の話だけじゃ、そこまで分かりませんて…お頭…」

惚気の自覚が全く無い。
というのが何より性質が悪い。

「素朴な疑問だけど何でお頭と付き合ってくれてんだろうな…」
「確かになあ…」
「ンだとぉおっ!誰が粗末なブツだコノヤロー!見るかぁっ!」
「そんな事は言ってねぇって!」
「脱ぐなって!誰か止めろー!」

―――…

「…今年こそはっ…俺から…」
「…さっきから、何をぶつぶつ言ってるんだ?嘉隆」
「えっ、あ、ああいや…」

色々な意味で荒れた九鬼水軍の新年寿ぎから数日後の宵っ張り。
最も、嘉隆の記憶では荒れた覚えなど無かったりするのだが。
どうやら今年の決意そのものに関しては忘れる事が無かった様子。
年明け初めての、二人の時間。
決意を実行する時が来た事に嘉隆は、想いを反芻していた。

「この状況で嘉隆が俺以外の事を考えてるのは…少し、嫌だな」
「…一益殿の事だけだぜっ…」
「ふふ、本当か?」

揺れる橙の幽かな灯に合わせる様、一益の顔が嘉隆へ近付く。
涼やかな眸はじっと嘉隆の目を見詰め、嘘をついていないかこころを覗き込んでいるかの様。
対す嘉隆といえば、一益の眸に言葉を窮してしまうも。
やましさは無いのだと眸を逸らす事無く、見詰め返す。

「……嘉隆」

一益が双眸を細めるのは一瞬。
眼差しに敗けじと思う為か、自然と少しだけ尖る嘉隆の口唇へ。
触れる小さな口付け。
ひとつがふたつ、ふたつがみっつ、重なる度に深く深く。
情交へ誘われる合図。
何時もの夜ならば、このまま一益の前戯を享受するものだけれど。

…ぎゅ…っ…!

「待ってくれ、一益殿っ…」
「…嘉、隆…?」

口唇を重ねながら頃合いを窺い、嘉隆の寝間着の帯へ手を掛けようとした一益の手首を掴んで。
嘉隆は先程とは逆に一益の眸を強く見詰め、行為を制止した。
如何な状況であろうとも平静を失わぬ一益だが、浮かぶ困惑。
何か障る事が有っただろうかと言葉に窮する立場も交代し。
嘉隆がどの様な言葉を自分に投げ掛けるのか、構えを見せて。

「あ…い、いやいやっ!そんな神妙な事じゃねえんだっ!」
「…そうなのか?」
「そう!…えっと…今夜は!俺が最初から一益殿を気持ち良くすっから!そういう事だからっ!」
「…は?ちょっ…嘉隆…ッ…」

今年の固い決意を伝える勢いに任せて、嘉隆は掴んだ手首から敷いた床へ一益の身体を押し倒す。
一益に有無は言わせず、すぐさま重ねた口唇は貪る激しさ。
舌を滑り込ませて一益の咥内で暴れれば絡み合う舌同士はくちゅくちゅと鳴り、漏れる熱い息。

…シュル…シュッ…

「ふ…っ、は…ぁ…」
「…一益殿…っ…」

酸素を求める以上に欲する身体。
嘉隆は一益の帯を外して寝間着を払い除け、精悍さを保つ裸身を露にさせると首筋に吸い付く。
赤い跡は儚い所有。
噛み痕と見紛う寸前まで一点を愛でて赤い花を咲かせ。
酷く勝手な陶酔だと嘉隆も頭では理解している、していても。
咲かせた花の赤さは昂揚を煽り。
一益の身体に覆い被さる嘉隆は首筋から胸元へ口唇を移し、幾つもの口付けを降り注がせて。
合間に、れろれろと乳首を嬲る。

「んんっ…!…よし、たかっ…」
「気持ちいい…っ?一益殿…」

嬲る度に小さく悦に震える反応が愛しく、そして新鮮で。
舐る事が出来ない片方の一益の乳首を嘉隆が爪弾けば。
挿入の最中とは違う、堪えるに堪え切れない切なげな喘ぎ。

…ぢゅうぅ…っ…!

「あ、んぅっ…ン…っ!」

乳首を強く吸い上げると、嘉隆は腹の辺りに跳ね揺れる熱い脈動が当たっている事に気付いた。
寝間着を払った一益の身体は下肢に何も着けていない。
つまり熱を帯び始めている一益の自身が直に触れていると察した嘉隆は、乳首から口唇を離してそろりと自身へ指を這わす。
指先へ伝う熱さは、本当に感じてくれているのだと思え。
嘉隆は完全に勃ちかかるソレを優しく握り、一益の腹筋や腰に口付けを落としながら扱き始め。
やがて響く粘質を含んだ水音。

にちゅっ…くちゅ、ちゅっ…

「…はっ、はあっ…」
(すっげえ熱い…イイ…ん、だよ…なっ…でもっ、もっと…!)

一益を気持ち良くさせたい願望。
掌の中の熱と脈動は嘉隆のそんな想いに応えていると見えるが。
嘉隆の納得には至らぬ様子。
自分が一益から受けて気持ちの良い事、それをなぞるのであれば。

(や…やった事、無えけど…!)
「…お、いっ…嘉隆…待っ…」

くぷ…ぷっ…!…じゅ…ぷっ…

「…う…うげほっ!げっほ!ご、ごめっ、一益ど…ゲホッ!」
「…大丈夫…か?」
「こっ、こんなに圧迫感が有るとか…げほッ…思わなくって…」

何時も一益がしてくれる様に嘉隆も口淫をしたかった…のだろう。
だが勝手が分からぬままに想いのみで勢い突破しようといきなり全開で咥えたところ、自身が放つ咥内への圧迫は想像以上で。
喉に及んだ熱塊の衝撃に思い切り噎せ込んでしまった。

「びっくりしたっ…」

それは一益の方が言いたい。

「あのな…いくら俺でも、そいつを咳き込まれて噛まれたりするのは洒落にならないぜ嘉隆」
「そっ、そうだよな…歯…当たらなかった…かなっ…」
「何とかな。…しかし…別に嘉隆がやらなくてもいいだろう…その、俺がしてやるんだし…な」
「だって俺がっ!一益殿からシてもらって…すっげえ気持ちいいから、一益殿にもシて気持ち良くなって欲しくてさっ…」

言いながら萎れていく嘉隆の姿を容易に想像が出来る声。
大好きな人を前に、込み上げてくるのは情けなさ。
しゅんと縮こまってしまった、そんな嘉隆に一益は呆れるも。

「…いきなり全部を咥えたら普通はそうなって当たり前だ」
「…あ、う…んっ…」
「だから…まずは先だけでいいから、何だ…口唇で愛撫とか…」
「…へっ?…こう、か…っ?」

諭しながらも誘う一益の言葉に促され、一度は拒絶する格好になってしまった自身へ再び近付く。
今度は勢いに任せず言われた通りに、まずは亀頭へ舌を這わせ。
拙くもちろちろと舐める内、舌先は鈴口を捉えて掻き回す。

ちゅぷっ…れる…くにっ…

(そうだっ…"コレ"気持ち良いんだよなあ…っ…)
「はぁっ…あふ…そうした、ら…徐々に唾液を絡め…て…」
「んっ…こうだっけ…」

何となく分かってきた。
悦い箇所自体は自分と何ら変わるところは無いのだから。
そう思えた事で嘉隆の口淫は要領を得たのか、鈴口から裏筋へ唾液を纏わせながら愛撫を施し。
時折、口唇だけで自身を甘食みする事も忘れず挟む。
嘉隆の唾液と一益の先走りでてらりと鈍い輝きを纏う一益の自身。
そろそろ大丈夫か、と。
頃合いを見た嘉隆は屹立した一益の自身をゆっくりと咥内へ。

くちゅ…くぷぷっ…
…じゅるっ…じゅぷ…じゅっ…

「よした…か…っ…」
「…はいふぉーふふぁっ…」
「ばっ、か…!…咥えたまま、喋るヤツがっ…あンっ…は…!」

自分の唾液が随分と馴染んだのか、今度は噎せ込まずに済み。
激しさは無いが深い律動で嘉隆は一益の自身を吸い上げ、精の詰まる睾丸をくにくにと弄べば。
咥える口端には何時に射精をしてもおかしくない脈動が寄せ。

…つつ…つぷ…

「…ふぁふぇっ…ふぇっふぉ?」
「く…なんッ…とにかく一度、離して喋ってく、れ…!」
「んー…ぷはっ!…えっとさ…後ろ、もう先に解してる…?」

睾丸を揉みしだく指を一段、奥へと滑り込ませて。
入り口の蕾を嘉隆は解そうとしたのだが、既に感触が柔かく。
察するに一益は、また自分が訪れる前に準備を済ませたのかとヒクつく窄まりを弄りつつ問う。

「当たり前…だろ…」
「何でだよっ、"ここ"だって俺が解してえのにっ…」

…つぷぷ…ッ…ずっ…!

「ひ、アっ…指を挿、れっ…」

柔かな蕾をひとしきり撫で触ると嘉隆は一本の指を挿し入れ。
解された内は潤滑の跡が残っており、いとも簡単に飲み込む。

「そんな事、をっ…嘉隆にさせる訳には…はっ…んンっ…!」

ず…ぬっ、ぬぷぷっ…!
…ぐち…ぬちッ…ずちゅっ…

ぬちぬちと軽くナカを苛めた後。
嘉隆は一益に前置き無く指の数を増やして抜き挿しを始め、窄まりに集まる各々の体液や潤滑が卑猥な音を奏でて熱を上げ。
埋め込まれた三本の指は時にバラバラと蠢き、悦い箇所を掠め。
射精に至りかけた一益の自身は口淫からは解放されたものの。
後孔を嬲られ、掠る程度では果てるに果てられぬまま嘉隆の目の前でびくびくと跳ねのた打つ。

「じゃあ…さっ…一益殿が解してもいいけどっ…今度解す時は、俺にそれを見せてくれよっ…」
「そ…そんな約束…うっ…!」
「ん、返事は今じゃなくていいぜっ…まずはコッチだよなっ…」
「うぁっ…ふ、うンっ…!」

暫しの間お預けさせた一益の自身を、嘉隆は口で咥え直し。
大分、勝手を理解出来たのか舌使いを交えて包み込み。
後孔へ咥えさせている指も、忘れずに挿入を繰り返した。

「はあッ、あっ…嘉隆っ…もっ、出る…ッ…口、離せ…っ!」

…じゅるるっ!ぢゅぷ…っ!
じゅぽっ、ずちゅ…じゅるっ…!

「あッ…あアっ…んん…ッ…!」

びゅぶっ…びゅるるっ…るっ…!

嘉隆の咥内へ精を放つ前に口を離すよう一益は制止を挙げたが。
その声を聞いた嘉隆は、深い律動から短く激しい律動に変え。
急激に押し寄せた快感に一益は達し、嘉隆の咥内へ精を注ぐ。
堰切れた白濁を少しずつではあるが嘉隆は飲み込んで、竿に残る精をも搾る様に咥内から射精した一益の自身を引き抜き。
後孔を弄る指も引き抜く。

…ちゅぽッ…ずる…っ…

「ふ、はっ…こ、零しちまうんじゃねえかと思った…っ…」
「…馬鹿、何も飲まなくても…」
「一益殿のでなきゃ、咥えねえし飲まねえよっ…それで、さ…」

横たわる一益の身体にそうっと体重を掛けて嘉隆が身体を重ね。
おずおずとした眼差しで、まだ息が整わぬ一益を見詰める。

「きっ…気持ち良かっ…た?」

一益からすれば、それを俺に聞くのかと言いたいものだけれど。
真剣さの中に期待よりも不安を湛えた眸を見上げ。
笑ってはいけないと思う。
でも、笑顔で応えたい。

「…良くなきゃ出ないだろ…」
「あー…そっか、そうだよなあっ…へへ、一益殿っ…」

嘉隆の心配を和らげる様に一益は、ふわりと微笑む。
静かに嘉隆の首へ腕を回し、顔を寄せて頬に口付ければ。
すっかり安心した嘉隆が喜色満面で一益の身体を抱き締め。
心地好い重み。
自然と一益は嘉隆の頭を撫でたい気持ちに駆られてなでなでと。
よく出来ました。

「…って一益殿っ…えと、俺の我慢がそろそろ限界でさっ…!」
「な、ちょっ…と待、てっ…!」

首へ回された腕を振り切って嘉隆が身体を起こすと、一益の脚を開き上げて屹立した自身を十二分に解された後孔へ宛がう。
入り口に鈴口を擦り付け、今すぐにだってナカを味わいたい。
しかし珍しく一益の抵抗が強い為、挿入だけは何とか堪え。
抗う一益の言い分を。

「その…まず、外に…出せ…」
「なっ、何でさっ」
「お前の最初のは…量も濃さも凄いから、そんな筈がある訳無いのに孕むような気に…なる…」
「え…えっ?」
「だから毎回、一度は外に出させていた訳…だ。…少しでも…意味が無い事を薄めたくて…な…」
「…一益殿…っ…」

…ずずッ…じゅぷ、ぷぷ…っ!

「っは、ああッ、ん…ンっ!」

見た事が無い一益の自嘲的な表情に、嘉隆は唇を噛み締めて。
宛がっていた自身を一益の内へ根本深くまで挿入した。
入り口こそキツく締め付けるが程好く自身に絡み付く肉壁はしかし、女が持つとは異なる心地。
越えられぬ違い、だとしても。

「よした…か…」
「…分からねえだろっ、本当に何も…産まねぇのか何てっ…」
「嘉隆…そう、だったな…」

程無く、吐き出すであろう注がれるであろう白濁は。
育む事の出来ぬ刹那の快楽?


―――この、行為が。
この行為が無意味だなんて。
この行為が何も産まないなんて。
吐き出した白濁に、注がれる白濁に、意味を見付けさせて。
愛だけはこの身体でも孕めると、恋を想わせて。

■終幕■

◆2013年の九鬼益で姫初め…だか何なんだか特に前半(苦笑)
受けは勿論、攻めがやっても美味しいそれが口淫。
そこそこの数を書いてる筈なんですけどね…書くの好きでね…
噎せ返りそうになりながら、とかは見掛けるけど本当に噎せちゃってるのはあんまり見ないなと。
しかも攻めの方が。
そう思ったら、ウチのくっきーは似合いそうだよなあとか(笑)
フェラ指南してもらっちゃったりしてね…ふふふ(*´ω`)
という訳で今年も★印には1フェラの気持ちで書きたいなと。
そんな決意のえろ初めでした。

2013/01/25 了
clap!

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