【1059taisen】
月下口戯
身体の一点に集約する熱が、この状況を現実だと知らしめる。
波に軋む船内での情交。
板壁を背に座る嘉隆が見下ろせば自身を咥内に含む一益の姿。
常に日焼けた嘉隆とは真逆の、白く透ける月光の如き裸身。
恋人になり、身体を重ね。
それでも嘉隆には叶った想いが大き過ぎて、夢の様な現状を信じられない気にさせられるのだが。
一益の口唇と咥内に包まれる自身が感じる熱はホンモノ。
劣情混じりの温もりに、嘉隆は改めて恋仲の幸せを噛み締め。
そっと撫でる、一益の頭。

「んっ…ふふ…っ…」

嘉隆の武骨な指が髪を薙ぐ。
少しだけ見易くなった顔はやはり、追い求め続けた一益の。
撫でられた嬉しさからか、くぐもった笑みが二人の船室に漏れ。

…ちゅぽっ…れろ…れろぉ…っ…

「んくっ…!…ンな丁寧にやってくれんでも…一益殿…」
「俺がしたいのだ…それとも、全く気持ちが良くないか…?」
「…そんな罰当たりな事。…とても気持ち良い、でさぁ…」
「本当か?…良かった」

含んでいた咥内から自身が離されたかと思うと、柔らかに滑る舌がねっとりと剛直な竿を舐め上げ。
嘉隆の自身は素直に反応。
唾液と先走りで鈍く光り脈打ちながら、充分に口淫を享受し。
舌が焼けそうな昂りと逞しさ、一益の表情に浮かぶは恍惚。
膨張した亀頭を口唇で軽く食み、雄特有の肉塊に酔い。
鈴口から次々と溢れる先走りを飲み込みながら裏筋へ舌を這わす。

「っ…一益、殿…」

堪えた嘉隆の声。
自身が脈打つ頻度も増し、悦いのだという事は明白。
それを理解した上で一益はチロチロと舌先で裏筋ばかりをねぶり。
時折、ビクリと悦から震える嘉隆の反応を一頻り愉しみ。
徐々に自身を深く咥え込む。

…じゅぷぷ…ぷッ…

「ふ、ン…ぅ…」

滾る塊で咥内が支配され、思わず鼻から抜ける甘い声。
喉元近くまで自身を咥え収めたところで、睾丸を優しく揉みしだきつつ激しく吸い上げに掛かる。

じゅるッ…じゅるるっ…クニ…
ぢゅぽっ、ぢゅぷっ、ぢゅぽ…!

「んっ…んんっ、ンふ…ッ…」
「く…一益どのっ…イ、カンです口を離して下せ、えっ…!」
「ンむっ…!…ぷ、は…ッ!」
「ふッ…く、ぅ…っ!」

びゅるっ、びゅるるるッ…!
ぱたた…ッ…トロ…トロ、ッ…

「…す、すいやせん一益殿っ!」
「…どうして謝る必要がある?」

射精間際、嘉隆は一益の口から自身を離させた…のだが。
勢いを持つ白濁の迸りは変わらず一益へ向けられ、顔や身体を白く染める結果となってしまって。
慌てた嘉隆は即座に詫びるが、当の一益は平然としたもの。
頬に飛んだ濃い塊を指で掬い。
愛しげに舌を絡める姿は蠱惑。

「まあ確かに、顔へ掛けたいのであれば…もう少し早く、そう言ってくれた方が良いと思うがな」
「ちっ、違いますって!その…前から言うとりますけど…口淫は嬉しいですが飲まんでいいと…」
「嘉隆の子種なのに勿体無い」

憂いがちの双眸が細められ、一益の表情に笑みが咲く。
一見すると無邪気にも思える顔はしかし、覗く舌に精を纏わせており…どうしようもなく扇情的。

「一先ず、その話は置いてだ」

…ニチュッ…

「…っ、ンなすぐに触っ…」
「ふふ…萎える様子も無いのに言うな、俺のナカに欲しい…」

まだ鈴口に精を溜めている嘉隆の自身を軽く握り。
昂りが衰えていないと感じるや、一益は座る嘉隆の上に跨がり自身を自らの後孔へ宛がわせると。
クチュクチュ音を立てながら後孔に鈴口の精を擦り付け。
吐息、ひとつ。

ぐ…ぷッ…!

「はぁ、っ…嘉隆…」

充分に解し済みではあるのだろうが、狭い後孔に張りつめ萎えぬ自身を一息に総て受け入れるというのは流石に荷が重く。
先ずは先端。
少しずつ少しずつ腰を落とし、竿まで咥え込んで。

ずぬぬ…ぬっ…ずぷ…!

「根元まで挿入った、か…?」
「一益殿…そう、ですな…」

互いを欲する肉壁と肉塊が、みっちりと隙間なく繋がる。
ナカを自身で満たされた一益は嘉隆の首に腕を回して縋り付き。
咥えた自身が脈打つ度、ピクンと全身を震わせていたが。
欲する想い、留まるを知らず。

ズ…チュッ、グチュ…ズチュッ…

「はッ、ふぅっ…あァっ…」

控え目な腰使いではあるが、進んで動き始めたのは一益。
対面座位の格好では抜き差しも短く、際立つ激しさは無いけれど。
腰を落とす度に背から脳まで響く甘い痺れは想いを満たすに充分。
蕩けた一益の喘ぎ声が、奥を穿つ毎に船室へ零れ。
縋る腕の力も一層―――

…ぎゅむぅ…っ…

「よ…嘉、隆…?」

不意に。
縋る以上の腕の力で嘉隆が一益の身体を力強く抱き締めた。
腰を動かす事も制止され、何事かと窺う腕の中の嘉隆の顔。
だが、一益の身体を確と抱き締める嘉隆の顔は胸元に埋められていてハッキリと見る事は出来ず。
戸惑う一益は、言葉を待つ。

「…一益殿」
「どう…したのだ…?」
「気持ち良い…ですなあ、と」
「…な、何だ急に…ふふ…可笑しな奴だな嘉隆は…」
「一益殿と、だからですぜ?」
「…自惚れて良いのならば…それは知っている。俺も…全く同じ想いを抱いているのだからな…」

嘉隆の額に落とす口唇を契機に。
繋がる身体は再び、密やかな情事の海へと溺れゆく。
海の中で、このまま互いが混ぜ溶けれたら…きっと幸せだろう。

情欲を満たす為に身体を重ねる事が―――男同士だからといって、特別な行為だとは思わない。
ただ、それが。
貴方とだから特別な事になる。

■終幕■

◆何度か日記や後書きで告白しておりますが、自分がエロを書く時に楽しいメインは前戯の方で(笑)
挿入してからが基本、短文…
特にフェラを書きがちですが、アダルト組ではまだだったなと。
なので今回、独りによによしながら書いてみた次第です。
攻に気持ち良くなってほしいな!という想いが詰まったラブラブなフェラは、やはり書いていて大変楽しかったです。まる。
いや、段益でイラマってるのも悪くないデスヨ?(*´ω`)フフフ。
でも基本的には受が進んでフェラをして、攻に撫で撫でしてもらってる様なのがキュンキュン♪
そんな自分の趣味を、とにかく今回はギュッと詰めてみました。

2014/10/01 了
clap!

- ナノ -