【1059taisen】
月下白甘
!)診断メーカーの結果から書いてみた話になります。
結果内容に萌えた事から、話を書く気になったのですが…
現代設定の方が面倒が無いと至り、急遽の現パロ話です。
遠洋を主としている漁師な嘉隆と社会教師な一益。
本当に急ごしらえですが…(汗)
診断の結果は、あとがきで。
上記の様な内容でも大丈夫!という方は以下からどうぞ(*´∀`)
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海風が疾る昔ながらの漁師町。
港を見下ろせる高台の学校から歩いて帰路に就く一益は、下り坂の途中で不意に歩みを止めた。
空には月が浮かび掛かり始め、海には夜間の漁へと赴く船の灯り。
規模の大きな町ではないが、漁の盛んな時期には活気に満ちる。
そうした、ごくごく当たり前の漁師町で教師として赴任して以来ずっと―――見続けてきた情景。
「海から戻るのは…」
潮騒の中に桜の香。
麗らかな春の、少し前。
想い人が海より帰る漁の予定は、そんな頃だと聞かされた。
暦は三月も半ば。
だが、一益が受ける潮の香混じりの風には柔らかさが足りない。
もう少し、もう少し。
恋人の帰りは桜の蕾が膨らみを覚えてくれる頃になるだろう。
海を見下ろしていた一益の双眸は坂を見上げ、学校に並び植えられている桜の枝をじっと、じっと。
しかし、花は咲かずのまま。
やがて静かに眸を閉じ、海上の恋人へ無事の祈りを捧げ終え。
再び坂を下り、暗い部屋だけが待つ家へと帰路を急いだ。
―――…
(…消し忘れた、だろうか?)
窓から漏れる照明の光。
慎ましい住まいの前に帰ってきた一益は、その光に不穏を抱く。
平和的な田舎町で空き巣を疑うのも無粋に思い、自分が消し忘れて出たのではと考えてみるものの。
どう思い返せど、朝の行動の中で消し忘れが起きたと思えず。
一先ず中の様子を窺うべく、一益がドアノブに手を掛け―――
…ドタドタドタッ!
ガチャ、ガチャ…バタンッ!
「おお!何だ一益殿、やっぱり家の前まで来てたんですかい」
「……嘉隆……?」
「帰ってくるのが見えたのに入って来ないモンだから…いやとにかく、お帰りなせぇ。晩の飯はまだ食べ…って、一益殿?」
急に、せわしなく鍵が開かれ。
中から出てきたのは嘉隆。
予定では、まだ海の上で漁を行っている筈の…一益の恋人。
故に会えた嬉しさよりも現実味の無さが勝っており、一益は呆然と嘉隆を見詰めてしまっている。
「ど、どうしたんですかい?」
「…それは俺の台詞だ、海から戻るのは…まだ先だと」
変わらぬ落ち着いた口振りではあるが、戸惑いの色が滲む。
けれど徐々に理解したのだろう。
見詰める眼差しと口元は恋人の無事と帰宅を喜ぶ様、ふわり。
一益の表情、春めく。
「へ…えっ?…まだ先って…ああっ!…そ、そういや…」
「…どうしたのだ?」
「ええっと、ですなあ…と、取り敢えず中に入って下せぇ」
「ああ、そうだな」
喜びに満ちた表情という点でいえば、出迎えた嘉隆は最初からその様な顔をしていたのだけれども。
一益からの疑問を聞くや、何かを思い出して困り顔を見せた。
困る、だけではなく…申し訳なさも含む顔、だろうか。
とにかく久し振りだというのに玄関先で説明という事も無い。
嘉隆が中へ入るよう促せば、一益は素直に明かりの内へ。
そして靴を揃えて上がったところで、すぐ「ある事」に気が付いた。
(甘い…良い香り…?)
さして広い造りではない家中に、その香ばしきは充満。
疑問は増えるばかりだが、嘉隆は隠さず話してくれるだろう。
香りの正体を問う事はせず和室に入ると、冬よりは薄手のコートを脱ぎ置いて一益が畳に座ると。
追う様にして、嘉隆も小さな机を挟んだ対面で座り込む。
「その…一益殿。去年のバレンタインを覚えとりますか?」
「去年の?…嘉隆にチョコレートを贈ったとは記憶しているが…」
「そう…なのに、お返しを出来ねぇまま次の漁に出ちまって…」
遠洋漁業では半年から一年半といった期間で海に出るのが常。
確かに一益の記憶を紐解けば。
去年のバレンタインは漁の前であったからチョコレートを渡したが、ホワイトデーを迎える頃には嘉隆が漁へ出た後だった。
「お返しなど…よいのに」
「いやいや、漁師仲間に聞けば結構な高級チョコを戴いたってのに…ワシが疎いもんで知らず…」
「…美味しいのが良いだろうなと、そう思った偶々だ」
「美味かったですよ、美味かったから…やっぱり、ちゃんとお返しがしたいと思ったんでさぁ」
被り巻いたタオルの上からガシガシ、嘉隆は自らの頭を掻く。
ひょっとすると、気まずくなるかもしれないと気付いた恐さに。
「…それで、一益殿には…嘘の帰り予定を伝えたんですよ」
「何故、そんな」
「翌年のホワイトデーにも間に合わないと見せ掛けて、帰って驚かせようとか…考えちまって」
「今日は…3月14日か…?」
「そうでさぁ、ぴったり間に合った…んですが。ワシが阿呆なもんで、嘘を付いたのを忘れちまって…面目ねぇ話です」
うなだれて嘉隆の頭が下がり、一益と目を合わせられない。
今の話を、どう思ったのか。
ちゃんと顔を上げて向き合わなければならないと思っているのに。
「…馬鹿だな、嘉隆」
「一益ど…の…」
少し冷たい一益の指先が嘉隆の頬に触れ、遠慮がちに顔を上げると目の前にはもう顔が近付く。
微笑みを湛え、双眸を伏す一益。
そろりと重なる互いの口唇。
「俺は…嘉隆が無事に帰ってさえくれれば、それで良いのだ」
な?と、合図を送る眸。
普段はどこか憂愁を想わせる眼差しも、嘉隆の前では恋の色。
変わらない、変わらないままの色で自分を見てくれている事に嘉隆の心は晴れやかに成るを感じた。
「一益殿にそう言ってもらえるなんて、ワシは幸せ者ですよ」
「ふ…俺だって同じだ。俺の元へ帰ってきてくれるのだからな…」
「でも一益殿、ワシはお返しも…一応ですが用意しとるんです」
「…そうなのか?」
「ええ、ええ。取ってくるんで…ちょっと待ってて下せぇ!」
胸のつかえが無くなり、晴れ晴れとした笑顔を取り戻す嘉隆は。
すっくと立ち上がったかと思うと、急ぎ台所へと消えてゆき。
といっても広くはない家だから行くも早ければ戻りも早い。
戻ってきた嘉隆が手に持っていたのは、本人の風体に似合わぬ可愛らしいオレンジのリボンが施された…いかにも、プレゼント。
「一年掛かりのお返しになっちまいましたが…良かったら」
「ありがとう…というか、もしかして嘉隆の手作りか…?」
「へ、へえ…店で買おうにも、此処いらじゃあ戴いたチョコと釣り合うのが無かったんで…だから、小さいですが手作りでさぁ」
プレゼントの袋を、大事そうに受け取った一益は。
愛らしいリボンにも袋にも店売りを示す証が無い事に気付いて。
確かに嘉隆が自己申告する通りの、こじんまりとした包み。
けれども一益には、掌に乗るその包みがとても愛しく思う。
「…開けても良いか?」
「一益殿のモンですから、一益殿の好きにして構わんですよ」
「では戴こう…」
シュルル…と。
優しくリボンの結びが解かれて袋の口が開けば、広がる香ばしい香ばしい甘さを…知っている。
家中へ入ると同時に気が付いた甘い香りと、同じなのだ。
袋の中を覗けば、一口サイズの素朴なクッキーが幾つも。
早速、ひとつ。
…スッ…
「っ、え…かっ、一益殿…?」
クッキーを摘もうとした指先が止まり、刹那に思案した後。
一益は、リボンが外れたプレゼントを返す様に嘉隆へ差し出す。
つい先程まで嬉しそうにしてくれていたのに、何か気にそぐわない事が有るのか嘉隆には見当が。
どうすれば良いのか固まっていると、一益が甘い声で囁く。
「…嘘を付いた罰だ」
「へ、へえっ?」
「嘉隆から俺に、クッキーを食べさせてくれないか…?」
「…それで許してもらえるっちゅうなら、喜んでやりまさぁ」
一益の望みを知り、叶える為。
くしゃりとした笑顔を見せた嘉隆は自らが贈ったプレゼントを受け取り直すと、一益に代わり小さなクッキーひとつを摘む。
「はい、一益殿…あーん」
「んっ…」
従順に開かれた口の中に甘い甘いクッキーが、コロン。
サクサクほろほろと噛み崩れる度に口内へ広がるのは優しい味。
「うん…美味しい、嘉隆はこういう物を作るのも上手だな」
「ですかなぁ…とにかく、気に入ってもらえて安心しやした」
頃合いを見ながら嘉隆は一益の咥内へクッキーを、またひとつ。
もうひとつ。
…サクッ…サク…
「今は、このくらいにしておこう…一度に食べては勿体無い」
「そうですかい?…ワシは、これで許してもらえたのですかな?」
「ふふ…甘い、残りも総て食べさせてくれねば…許さぬ」
「ありゃあ、やっぱり」
"理解っているだろう?"
"理解ってますよ"
互いの顔に浮かぶのは、離れても変わらぬ呼吸を確認する表情。
となれば次に一益が欲するのは。
「一益殿、茶の好みは少し濃いめの熱めで変わらん…ですな?」
「ああ…頼めるなら、それで」
「じゃ、ワシに任せて下せぇ」
再び台所へと立つ嘉隆。
湯飲みの場所も変わらず自分の物と揃い置かれてるに違いない。
迷いが無い嘉隆の背を見送り。
一益は素朴なクッキーの味を想い、今の幸せを重ね合わせた。
■終幕■
◆さて、まずはどんな診断の結果内容で書いた話だったのか。
この2つの結果でした♪
◎ホワイトデーのカプを妄想しったー
◆ホワイトデーの九鬼益
お返しに貰った攻めの手作りお菓子を美味しそうに食べる受けを妄想しましょう。
お返しに貰ったお菓子を攻めにあーんで食べさせてもらう受けを妄想しましょう。
http://shindanmaker.com/201229
何というか王道も王道のシチュですが、逆に目から鱗でした(笑)
今迄は段益でホワイトデーとか考えてみても、えっとその…
段蔵さんが性的過ぎてアレな白いモノを返してる様な絵しか浮かばなくて…汚れちまった…(苦笑)
だからこんな、ピュア全開なシチュは寧ろ浮かばなかったのね。
で、お菓子を手作り出来そうなウチの攻めというのが…三国志側には魏武張コウさんが居るけど…
段蔵は論外、日輪嘉隆は頑張ってたら可愛いけれども。
ここは話の数を増やしたいし、ガチムチが繊細にクッキーを上手に焼いているのもなかなか萌(笑)
という事で黒嘉隆に☆
漁師×教師な九鬼益話も、これっきりではなくて…偶に書いていきたいですよ。
2014/03/22 了