【1059taisen】
落涙の彼方
)終盤には死ネタの要素が含まれています



主を組み敷く背徳に生じる罪悪。
しかし凌駕するは劣情。
想いが成就した喜びの一方、叶わずのままでいればと葛藤する。
只の従者で居られたら。
その滴に意味など無かった筈―…


ぐぷ、ン…ぬぷぷ、ぷッ…
…キュウッ…キュンっ…

「あ、あ…ッ…内膳、内膳…!」

柔らかに剛直を受け入れる孔、丁寧に丁寧を重ねて解された賜物。
だがそれは裏を返せば、長く焦らされ続けていたとも言えて。
政光のカタチに拓かれた義宣の肉壁は待ち焦がれた熱を咥え込むや、すぐさま悦の赴くままに政光の自身を貪欲に締め付け。
その刺激に昂りを増す自身が筋を波打たせれば、義宣は甘い矯声を上げて更なる快楽を求める様にずぷずぷと奥へ導き。
根本まで、ぐっぷりと。
焼かれる程に熱い政光の自身に貫かれ、義宣の自身も熱を帯び。
ビクビクと跳ねて先走りを流す。

「義宣様…」

正常位を以て義宣を愛でる政光の双眸に映る主の姿は煽情的。
情欲に流され掛けている蕩けた眼差しが見上げ、名を呼ばれては。
さしものお堅い政光にも僅かな嗜虐心、とまではいかずとも悪戯心の如き感情が沸き立ち支配する。
ゴクリと、生唾を飲み鳴らし。

…グッ…ぐり、ぐりっ…ぐッ…
ぬちゅ、ぬちっ、ぐちゅっ…

「ふうっ…ああッ、あン、そんなっ…奥まで挿れたま、ま…ナ、ナカを掻き回された、り…した、ら…あッ、ない、ぜん…ッ!」

政光は義宣の腰を軽く掴み上げると、抉り易い角度を付け。
もうそれ以上、奥には入らぬと理解の上でぐりぐりと円を描きながら腰を押し付け始め、熱塊と化した肉棒が更に肉壁を悦ばせ。
円を成す度に後孔は潤滑に用いた香油を溢れ零し、厭らしい粘質の水音を部屋の中に響かせて。
そうしていい様に蹂躙される肉壁は既に虜となったのか。
キュウキュウと、一層に肉棒を美味しそうに咥え込み離さない。

「く…余程…お気に召されましたか…?こうも締め付けられて…」
「ふふ…そうだ、な…否定はせぬ…もっと内膳を感じた、い…!」

…ずるるッ…ずちゅ、じゅぷっ!
パンッ、パンッ、パチュッ!

「はッあ、あアッ、内膳っ…そう、だ…コレが欲しいッ…!」

義宣の腰を掴む手を軸にしたまま政光は、静かな円の動きから一転して激しい抜き差しへ切り替え。
じゅぽじゅぽと音を立てる孔。
それは突き立てる度に肉同士がぶつかり合う弾けた音と交錯し。
更には義宣の鳴き声が添えられて、ただただ情交に没頭する。

じゅぷッ、じゅぽ、ずちゅっ!
パチュンッ、パンッ、パン!

「っあ、あンッ、ないぜんッ…イイっ、激しく突いて、くれ…!」

―――…ふっ、と。
濃密な情事の中で政光は、妙に冷め切った冷静さを取り戻す。
普段の主として凛とした義宣と、目の前で喘ぎ善がる義宣とが、恋仲だから見せる姿なのだと今でも上手く繋がらずにいる自分。
いっその事。
息抜きに適当な相手だっただけだと告げられた方が―――

じゅぽっ、じゅぽ…ズンッ!
…ぶびゅるるッ、びゅるる…っ!

「し、まっ…!」
「〜〜〜…!!…ああああッ、うあっ…ふ、うっ…ま、まだ、出…」

びゅーっ、びゅぶッ…びゅる…
ドプドプ…ッ…トプッ…

「ひ、うッ…あッ、あっ…」
(…義宣様に…こんな…私は…)

何時もなら政光は義宣の射精の兆候をも見計らい、少なくとも独りだけ勝手に果てる等という事は無い筈であった。
だが、あらぬ意識に囚われ。
気付いた時には義宣のナカに白濁を注ぎ込み、その射精は長く。
勢い良くビュービューと肉壁を白く染め、急にナカに出された義宣は射精のあまりの量と熱に身を震わせて敷布を握り締め。
自身も肉壁もビクビクと果てた時の様に痙攣するが、鈴口から白濁は溢れておらず空イキしたのだと見て取れる有り様。

「…申し訳…御座いませぬ…義宣様を蔑ろに、私ばかり勝手に…」
「ん…ふふっ…抱き締めさせてくれたら許すぞ…このまま、な」
「えっ…は、はい。では…」

流石に叱責は免れぬと覚悟した政光だったが、その様子は無く。
戸惑いながらも乞われに応じ、繋がりを外さず身体を前傾させる。

…ギュ…ウッ…

「…私の事を怒っていらっしゃらないのですか?義宣様…」
「怒らねばならぬ様な事があったのか?…俺からすれば、その…確かに驚いたが、それだけ俺を善いと感じているからだろうし…」
「それは、あの、ハイ…堪らぬ心地好さで…とても善く…」
「ふふふっ…良かった」

政光の首に回された腕の力が強まり、何かに安堵した様な。
一戦を終えての休息、互いの双眸を合わせて繋がりの熱に浸る中。
ある滴に、政光は気付き。

…ちゅっ…ちゅ…ぺろ…っ…

「ないぜん…?」
「武で鳴らした佐竹の主が、容易く涙など見せませぬよう…」

溺れる程のまぐわいの中で生理的に溢れ零れた涙の跡。
目元から頬に至るまで、政光は口唇で優しく涙を掬い取って。

「はは…戦場であれば涙など、この身が八つ裂きになろうとも零しはせぬ…しかしこれは、鬼であっても抗えぬ涙よ」

丁寧に涙を払い終え、顔を上げた政光に義宣は微笑み。
けれど、その笑みは何処か脆い。

「最も俺は…鬼にはなれぬ。言うように律儀でも…義を全う出来ている訳でもない、半端者だ…」
「そんな!義宣様は…っ…」
「…しかしな、内膳」

するりと首から外された腕。
やりきれない表情を滲ませる政光を諭す様に、頬をそっと撫で。

「それが人間であろう。人として内膳を愛せて、俺は幸せだ」
「義、宣…様」

…ポッ…ポタッ…パタ…ッ…

「―…?…内膳、何故…内膳が涙しているのだ?」
「…え、えっ?…これは…」

総ての涙を掬い取った筈の義宣の頬に、新たな滴が落ちる。
初め政光は、それが自らが流している涙であると理解が出来ず。
どうして零れた涙なのか。

「…身に余る想いの御言葉に、心身が伴わなかったのかと…」
「ふふっ、可笑しな事を。何も…何も特別な事は言っておらん…」

…ピクン…ミチ…ッ、ビキッ…

「ンッ…元気になった、な…大きく…硬、い…もう一戦…か?」
「義宣様を確と御慰めせぬまま、終える訳には参りませぬ故」
「それもそうだな…では、今度は敗けるでないぞ?内膳…」


―…何故、落涙したのか。
まことの訳は理解している。
どうして、私は。
いじらしく愛らしい、この御方を置いて逝きたいと願うのか、と。
「私」が消えても泣いてほしくはない、初めはそうだった筈なのに。

貴方を守り、死した時。
貴方が零す涙を、今や望む。

私は、狡いだけだ。

貴方の落涙が叶った時。
貴方は私を忘れる事が出来なくなると、解って望むのだから。


―――…


久保田の厳冬を思えば、其の地の冬など可愛いものの筈だった。
寒い、サムイ、芯から冷える。
まるで芯そのものが、ぽっかりと抜け落ちてしまったかの様に。

「義宣様…宜しいでしょうか」
「…須田か、終えたのか?」
「はい…渋江殿の御身体。命じられておりました検視が滞りなく済み、報告に参上致しました」
「ああ、聞かせてくれ」
「その御身体に残されていたのは…どれも槍疵で御座いました」
「槍疵…のみ…」

あの、時。
佐竹の本陣へ迫り寄せる程に銃撃の音を鳴らしたのは、豊家。
鳴り止まぬ直中、其処に内膳は。

「鉄砲疵は、無かったのか?」
「…御座いませぬ」
「お主が伝えた内容は明文化して後へと残す、違えてはならん」
「無念にも首級を取られております故、頭部に受けた可能性は否定が出来ませぬ。…ですが、御身体に残る疵は間違いなく」
「…分かった。これからの事を考えたい…暫し独りにさせてくれ、火急の要件であれば構わぬ」
「承知しました、では…」

白い静寂。
切り裂き破るのは。

―――…ふふふ…

「…良かったではないか…」

内膳が望み、俺が与えてやれるモノならば如何なる事であっても叶えてやろうと常々思っていた。
喜んでくれるか?
この義宣を守り抜いた佐竹の勇者として、お前は名を残す。
そして―――お前が真に、最後に願い望んでいた事も。

「俺が知らぬと思ったのか…内膳。だが…少しばかり抗うぞ…」

目頭だけが際立ち熱い。
零すものか。
正に今、俺もまた歓喜すべきと言える確信を得る事が出来たのに。
何故、流さねばならんのだ。
……何故、なぜ、ナゼ。

「何故…何故、逝った…」

涙、一条。
拭う事も出来ずに頬を伝う。
あの日、涙を掬い取った優しい口唇の熱は雪中に掻き消えた。
自らの想いの筈なのに、亡くさねば確かに出来なかったなんて。

「……俺は―――…」


本当に、本当の。
恋を、していたのだ。

■終幕■

◆この小噺を更新した1月25日は旧暦で佐竹義宣公の命日。
そういう意識も少しはありましたが、完成した話は大坂冬の陣・今福の戦いにおける内膳の死に着地してしまいました(;´∀`)
内膳への絶大な信頼に恋情が加わった事で生じた義宣の依存。
初めは自分への執着を良しとしなかったのが、何時しか最も残る形で義宣の心に自分を刻み付けたい独占欲に駆られる内膳。
そんな構図で話の流れを考え始めた当初は単独の話でしたが。
最後の部分を入れると決めた事で「みじかくも〜」から一応は繋がっている、予定外の四部作に(笑)

渋江内膳政光の最期は流れ弾を受けて亡くなったとされる中。
義宣の命で検視が行われた結果では、槍による傷だけで鉄砲による傷は無かったと残されていて。
首級を取られてしまったそうだし、真相は分からないけれど。
主の盾である事を全うした忠臣の死は鉛玉に奪われたのではなく。
全身に槍傷を負いながらも最期まで戦い抜き、主を守ったのだという形で後世に残したかった想いの食い違いなのかな…と。
群雄伝では義宣の元に戻って最期を迎えている形で、ほんのちょこっとだけ救いがある演出でした。

話は変わりますが、昨年は会話文ばかりの更新でしたね(汗)
戦国大戦の終幕が近付いて、とにかくゲーム自体での自分なりの目標を達成しよう!とかやっていたら小噺書きが疎かに…
まあ、そうでなくても基本的にのんびり更新ですが(;´ω`)
内膳×義宣で話を書きたい情熱は残っているよ!とだけは。
しんみり要素を含んだ話を書くのも嫌いではないけれど、馬鹿甘いだけのイチャラブ従×主えっちを書きたいのです(笑)

2017/01/25 了
clap!

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