【1059taisen】
短くも長い夜
)内容的には本番未満ですが、性的な描写が含まれています
どっちも真面目でお堅い気がするので、どうしたら★印の話を書ける切っ掛けが出来るか考えたら、こんな話になりました(笑)



「うむ…やはり新たな主城は久保田の地に築くが宜しかろう」

土崎湊城の夜更け。
何者も眠りに付く時分である城内は静寂に包まれ、外で鳴く秋の虫の音色と共に朝を待って佇む。
しかしただ一室、政光が籠る部屋には灯りが点るままで。
常陸とは勝手の異なる出羽において、少しでも早く新たな地盤を固めるべく内務に根を詰めており。
今日はこれまで、としながらも。
佐竹家臣団の主城とするには湊城は手狭であり、新たに城を築きたいという義宣の意向を思い出し。
どの地が良いか見聞を含め吟味を重ねる内、このような夜更け過ぎまで起きる事となった模様。

(久保田ならば、義宣様にも同意をいただけると思うが…)

自らが候補に推す地も決まり、一旦は明るくした表情。
なのに何故か政光は、すぐに暗い影を落とす。

(…私を疎ましく思うだけならば構わぬ、私だけならば…)

自分の台頭を快く思っていない、そんな空気を政光は以前より一部の家臣から感じ取る事はあった。
義宣も察したのだろう、荒川弥五郎であった男に渋江内膳政光として生きる新たな名を与え。
重臣の家柄ならば重用への反発が和らぐであろう算段も、そこには込められていたと思うのだが。
最近は名門意識の高い家臣の中での、能力本位とする義宣の登用に対して不満を滲ませる空気が色濃くなったように感じ。

(もし…義宣様にまで危害が及ぶ事になった時は…この身がどうなろうとも、お守りせねば)

自分が前に出ず大人しくしていれば、その様な事態に至るなど考えなくて良いのだろうとは思う。
だが、政光にとって義宣の為に尽力するは己が総て。
何時しか政光の心には、殿の盾とならん決意が芽生え。
その芽は―――

(…義宣様は、身体を休める事が出来ておられるだろうか…)

湊城には家臣の屋敷を拡張する余裕も無かった故、政光は作業をそのまま城内で行っている状況。
同じ城内に、義宣が。

(…義宣…様…)

その芽は、恋心をも芽吹かせた。
焦がれる想い、秘めた想い、主への純粋な敬愛に混じる恋慕。
けれど恋慕は…どれだけ純粋であろうとも「欲」を伴う。

(くっ…鎮まらぬか…)

そんな意志とは関係無く身体は想いに反応し、昂り始める自身。
汚れた肉欲の対象にして良い御方ではないと抑え込もうとするのだが、一度溢れてしまうと昂りを鎮める事などままならず。
正直なところ、忙しさに追われて"溜まっている"自覚もあり。
欲情に押し流された政光は観念し、足を崩しながら帯に手を掛け。
はらりと自身を覆っていた一枚までも除けば、鈴口から先走りを溢して屹立する熱塊が現れる。
秋の夜の冷えた空気にあっても、ソレは硬く主張し。

に、ちゅっ…くちゅ、くちゅッ…

(ふッ…う…義宣、様っ…)

竿を握る掌から伝う熱の程、どれだけ自分が義宣に恋し焦がれているのかを知らされる…熱さ。
自然と手は竿を扱き始め、浮かぶは常に凛然とした義宣の、誰も見た事が無いであろう淫らな姿。

(どの様に鳴かれるのだろう…私の事を呼び、求めていただけたら…どれ程の幸せを感ずるか…)

『は…あぁッ…な、いぜん…俺の…俺の、もっと奥まで…!』

(〜〜〜…ッ!)

扱く手が早まり、クチュクチュという小さな水音と荒い吐息。
敬愛すべき主である義宣を想いながら果てた後の罪悪感は、かなりの重さで伸し掛かってくるが。
この行為は、想いを表立たせぬ為にも必要なのだと言い聞かせ。
決して知られてはならぬ自らへの慰みを終わらせようと。

「く、うッ…はッ…あっ…義宣様…よしの、ぶ…さ…ッ…!」

スパァーン!!

「だっ、大丈夫か内膳!具合が優れぬのか!無理をするな…と…」
「…よ…義宣…さ、ま…?」

それまでは堪えていた声が、つい大きめに出てしまったと同時。
勢い良く戸が開かれ現れたのは寝間着姿で血相を変えた義宣。
慌てた様子で政光の異変に対し、心配する言葉を並べ…ようとしたのだが、瞬時に状況を理解して固まってしまっている。

「…その…寝付けぬので内膳の様子を窺おうとしたら、苦し気な声が聞こえたものだから…な…」
(終わ…終わっ…た…)

それはつまり、単に自慰を見られてしまっただけではない。
間違いなく義宣は自分の名を呼ぶも聞いてしまっている筈。
誰を想いながら致していたのか…繋げるのは容易な事だろう。

「は…腹を!今すぐにでも腹を切って御詫びします!!」
「ま、待たぬか落ち着け内膳!」
「どうか止めて下さるな!」

我に返るや今度は別の意味で慌てる羽目になった義宣は。
ともかく開けた戸だけは急ぎ閉めると、傍の小刀に手を伸ばさんとしている政光の元に駆け寄り。

ドウ…ッ…!

「…っ…義宣…様…」

ほぼ体当たりに近い形で政光の動きを静止させ、その衝撃で政光は鞘まで触れた小刀を取り零す。
元より政光に義宣へ反する意志は微塵も無く、抵抗らしい抵抗は見せず少し虚ろな双眸で見詰め。

「何も…言い訳は御座いませぬ、義宣様の処分に従う所存…」
「…内膳…俺の所為、か?」
「…一体、何の…」
「"コレ"は…俺の所為なのか、と…聞いているのだ」

…ニチュ…クチュ、ッ…

「…!…お、お止め下さ…っ…御手が穢れてしまいま…すッ…!」
「構わん、それよりも少し身体の力を抜け内膳…」

思えば体当たりのままの体勢。
政光にしてみれば、義宣との密着具合だけでも信じられぬのに。
おもむろに伸ばされた義宣の手は政光の太股をまさぐるや、射精間近でおあずけの自身を握り込む。

ヌチュッ、プチュッ…プチュ…

「よ、しの…ぶ…さまっ…」
(内膳が…俺を想い、こんなにも滾らせるというのか…)

先走りでてらてらと濡れそぼり、筋の浮き立つ熱塊は義宣の手が触れるや一層に反応を示しビキビキと音を立てんばかりの怒張。
あまりの勢いに義宣は一瞬たじろいだが、緩やかに竿を扱き。
時にパンパンに膨れた亀頭や裏筋を愛撫すれば、政光の身体が小刻みに跳ねて好いのだと伝う。

「お離し…下さい義宣様…っ…最早、堪える事が…!」
「果ててくれ、この昂りが俺の所為ならば…俺が責を取る」
「ふ…く、うっ…うッ…!」

ニチュッ…ニチッ、ヌチュ…ッ!
びゅぶるっ、びゅるるる…っ!
びゅく…ぱたっ…ぱたたッ…

堰切れた政光の鈴口から多量の白濁が溢れ零れる。
飛沫は義宣の手にも散り、粘質の白い跡をドロリと残して。
余程溜めていたのか、なかなか鎮まらぬ吐精が漸く収まれば、部屋に残るは熱の籠るふたりの息。

「…私は…やはり腹を切るべきです…義宣様に、"処理"としか言い様のない事をさせておいて…生きている訳には…」
「まだ申すか…俺も律儀が過ぎても困る等と言われたものだが、今ならそれも理解が出来るな」
「…御手を、水洗いも必要とは思いますが…少しでも」

話すべきは他にも多様にあったと思うが、政光は。
義宣の右手が己の先走りや精液で汚れてしまっている事が許せず、手近な布を取り丁寧に拭き清め。
改めて、処分を受ける意志がある事を口にしようと―――

シュル…パサッ…

「…よ…義宣、様?何を…」
「お前も責を取らねば気が済まぬのだろう?ならば…俺の昂りを鎮めてくれ…"コレ"はお前の所為なのだぞ、内膳…」

迷い無く寝間着を脱ぎだした義宣に政光は面喰らうが。
その間にも義宣は総てを脱ぎ去り、屹立し掛ける自身を晒す。

「し、しかし…」
「俺がこうまでしているのに、据え膳を食わぬつもりか?」
「義宣様…今、申し上げる事なのか…ですが、お慕い…しております、仕えるべき我が殿として…それ以上に一人の人間として…」
「…ふふ、嬉しいぞ内膳…」

ただ、場の雰囲気に流されただけとはしたくなかったのだろう。
緊張の面持ちで律儀に想いを吐露した政光に、義宣は柔和な笑み。
未だ状況が信じられぬ政光だが、これ以上の躊躇は無礼と決し。
政光は、引き締まった義宣の太股から自身へと指を這わせ。

シュッ…シュッ…くに…っ…

「ふ…んンっ…」

初めて聞く義宣の甘い声。
竿を優しく扱き、睾丸を揉みしだけば艶めく吐息と共に。

ツプ…ぐり…クチュッ…

「ン、ふぅっ…!ない、ぜん…」
「もっ、申し訳ありませぬ義宣様…手荒でしたか」
「ふふふっ、気にし過ぎだお前は…逆だ、好いのだ…」
(嗚呼、何と…義宣様からその様な御言葉をいただけるとは…)

鈴口を撫でる指、トロトロと溢れ零れ出す先走りを纏い。
徐々に竿を扱く速度を上げて、吐精へと導く。

プチュ、クチュッ、クチュ…ッ!

「はッ…あァッ…内膳、お前の身体に…縋らせてくれ…っ…」
「!…ええ、喜んで…」

ぎゅむ…

悦で震える腕が政光の首に回され、仄かな灯りが落とす重なる影。
余裕の無い義宣の荒い息遣いは次第に間隔を短いものにして。

ヌチュッ、クチュ、クチュッ…!

「ア、あッ…内膳…もうっ…!」

びゅるるるっ…びゅくッ…!
…とぷ…とぷっ…ぱた、た…っ…

(熱…い…私が…私が義宣様の身をお慰めした、のか…)

義宣の自身から溢れる精は、やはり多忙から久し振りだったのか後からトロトロと零れ落ち続け。
茫然とする政光の手を濡らす。
弾けた熱に浸る余韻、政光はそっと義宣の自身から手を離し。
これで本当に良かったのか、じわじわと不安が寄せた刹那。

…ちゅ…っ…

「?!…よ、よっ…義宣、様っ…」
「…その…今宵の口止め…いや、俺は内膳の口が軽いなどとは思っておらん。だから、つまり…」

それはとても短く、けれども永劫に感じられた口付け。
義宣、からの。
政光も突然の幸に困惑しているが、自分から口付けた義宣の方も己の行動に戸惑っているのか珍しく言葉が要領を得ない。

「そ、そうだ、二度と切腹するなどと軽々しく申すな。それと」
「そっ、それと…?」
「…"この先"は、領内がもう少し落ち着いた時に…な…今の口付けは、その約束だと思ってくれ」
「えっ…それは…あの…」
「り、理解したのかだけ申せ!」
「…御約束、決して忘れず胸に刻み付けておきまする。義宣様…」

政光の返事を聞き、義宣は紅潮した頬ではにかんだ笑みを向ける。
今度こそ、秘めねば。
可愛らしいと、想った事を。

―――…

ふわああぁぁああっ…

「今朝も眠たそうだな渋江殿!」
「…これは梅津殿、朝から恥ずかしい姿をお見せした」
「ははは!まあ構わんが頑張り過ぎて身体を壊してはならんぞ!」
「そう…ですな」

あれから結局、政光は目が冴えきってしまい一睡も出来ず。
朝になって止まらぬ欠伸を繰り返しているところに、自分と同じく義宣から信頼を寄せられている梅津憲忠と出会う。
最も、政光の夜更かしに憲忠は慣れているらしく。
双方どちらも、何時もの挨拶程度に考えていたのだが。

「…唇がどうかされたのか?」
「っ、なっ、さっ触ってなど…いや、さ、触っておりましたか?」

昨晩は色々な事を"しでかした"政光なのだが、深く深く印象に残ってしまった出来事は義宣からの口付けだったらしい。
無意識に指が口唇に触れ、柔らかな熱を思い出す。

「渋江殿…?」
「とっ、殿に御目通しいただく資料の準備がある故!これで!」
「お、おう」

このままでは余計な事まで芋づる式に想起しかねんと、既に耳を赤くしながら走り去る政光の背中。
何がどうしたのやら憲忠が呆気にとられていると。

「憲忠」
「おお義宣様、お早う御座います。朝の鍛練ならお付き合い…」

スリ…ッ…

「む、如何した?憲忠。」
「いや…唇…が、どうかなさったのかと思いましてな…」
「…触っていたか?」

政光と入れ換わる様にして憲忠の前に現れた義宣は、全体的な雰囲気こそ普段と変わらないが明らかに寝不足感を漂わせ。
そして口唇を気にしている。

「…先程、渋江殿とお会いした時も唇を気にしとりましたが…」
「っ、ごほんっ!…内膳も…か…い、いや何故であろうな」
(義宣様も渋江殿も、分かりやす過ぎますぞ…まったく…)

これは間違いなく―――"やっと"、進展があったらしい。
合点がいった憲忠は、正直な義宣と政光の態度に呆れながらも。
変わらず二人を見守ってゆこう。
浮かべた笑顔は晴れ晴れ、秋の朝に負けぬ程に爽やかだった。

■終幕■

◆刻限義宣を自引きして一目惚れし、佐竹推しになり早一年。
その間も義宣受で★印の話を書きたいなあと腐った思考は囁くのですが、どうもハマるお相手が…
三成とか政宗辺りで考えようはあったのかもしれませんが、個人的好みと合致していない(;´ω`)
受も攻も等しく愛でたい派。
というか、ある時期からはもう刻限義宣のエロのお相手は内膳しか考えられなくなってたので(笑)
願い叶って内膳追加、よっしゃ書くぞおおぉぉおおッ!
…と、意気込んだものの双方が真面目でお堅そうで性的な方面への持ち込み方が分からない(苦笑)
なので、まずは主従の信頼以上の感情が在る事を特に義宣の方に自覚させる形で考えてみました。
考えた結果が自慰を見られる事なのかって話ですが…強制的に進展させるには良いかなと(;´∀`)

最後の方に少し佐竹の黄鬼こと梅津憲忠殿を出したのですが。
この話を上げた時点では群雄伝専用だけど、何時か宴で登場してくれると願いを込めて(*´ω`)
始めは憲忠殿も義宣へ恋心を秘めているけれど、内膳の想いには敵わないと悟って内膳を応援しているキャラ付けでしたが。
今は、義宣様も渋江殿も焦れったい!早よくっ付けよ!とか2人の仲を見守るポジションかなと◎

取り敢えず下準備は出来たので。
次回はきっちりエロを!(笑)

2015/09/30 了
clap!

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