【3594taisen】
籠女鳥の囀り、梢を望みて
)男娼パロ
前半が複数モブ姦です注意



高級、と称されようとも。
それで自由が知れる事など無い、籠の雛。
ただひとつ願い叶いしは―――あの部屋での逢瀬は、君だけと。

―――…

欲の捌け口に他ならぬ行為に溺れ耽る男達の中心に在るのは、空虚。
男の上に跨り、自らの意思か否かも知れずに揺れる腰。
囲む男達にしてみれば、それに何の不都合も無い。
ただただ、只管に白濁の欲を雛の内へと注ぐ事だけが、総て。

ずっ…ぐ、ちゅ…ぎちっ…じゅぷ…っ…!

「…ふ、ぐ…ぅっ……ン、う…っ…!」

騎乗のかたちで、下より乱雑に突かれ。
構いの無いその律動に、声を、喘ぎを、鳴きを、零れ落としそうになる。

―――落としたところで、只の反射。

こころ無い嬌声を上げても、彼等は悦ぶのだろう。
嗜虐を、加虐を、奇異を、欲情へと変え掻き立てて。
しかし落とす事が許されぬのは、もうひとりが、ホウ統の咥内へ猛る自身を咥え込ませて強要する口淫が故。
くぐもった、声ともつかぬ嗚咽だけが辛うじて口端より漏れ。
じゅぷじゅぷと、後頭部を押さえ付けて無理矢理に抜き挿す様にホウ統の意志はそもそも無い。
金銭の折り合いさえ付けば複数であろうと。
それで良いのだ。
自らの意志が存在していない事など…とうの昔に。
喉元深く、突き上げられる奥が深く、穿たれる度にそれをそれを思い出す。
当たり前の事、を。

「…っ、く…堪らねえ、出すぞっ…!」
「……っ…!…」

じゅぽ…っ…

不意に、咥内を犯していた男の自身が離れ、ホウ統の眼前で張り詰めたそれを扱き始める。
顔にか、と。
瞬時にホウ統は思ったが、男が再びに自身を口唇近くへと近付けるに至り。
嗚呼、口で受け止めろ、と。

れ、る…

口を開け放ち。
舌先で先端を刺激し、達するその時を―――

「くぅっ…!」

びゅる、びゅく……びゅ、く、るるっ…
ぱた…ぽた、っ…

堰を切る様に溢れ出た欲を、開けた口で受け止める。
そうするホウ統の様には、咥え込ませて吐き出す事よりも一層の征服欲を男に沸き立たせるのであろう。

ぷ、ちゅ…

「ふ、っ…ぅ…」
「残ってるのも、搾り出して飲めよ」

一通りに吐き出した自身を、閉じ掛けた口に捻じ込み。
ホウ統の長い髪諸共押さえて言い放つ。
上目に見れば、男の双眸にはギラギラとした嗜虐の光が映り。
自分を、如何に見ているのか。

…じゅ、るっ…ずっ……ごきゅ、っ……

「…か、はっ…ぁっ…」

竿に残る白濁までも吸い上げ、捻じ込まれたそのまま総てを飲み込み。
赦しを請う様にホウ統は男へ自らの咥内を開き見せる。
口唇と、先端とに白糸が引き。
飲精を果たした様子に、ようやく口を犯していた男は満足を覚えた様だ。

「おい、もう口でいいからさっさと代われよ」
「悪い悪い」
「ったく、割り勘定でも結構な値なんだからよ…」

もうひとり。
後孔と咥内を先取られて、自身をホウ統に扱かせていた男が交代を迫る。

「…っと、その前に…!」
「……!」

びゅく、びゅるるっ…!…びゅる、る……
ぱたぱたっ…ぱた、っ…にちゅ…っ…

扱いていた掌の中の自身が、一際に脈打つと同時。
未だ髪を掴み上げていた男がホウ統の顔をそちらへと向けさせ、目掛けて大量の白濁が注がれる。
にちゅにちゅと水音を立てて先端を顔に、胸板に擦り付け。
徐々に、どろりとした塊ともつかぬ粘質がホウ統の身体を這い落ちて。


―――まるで。


「…さあて、次は口で―――」
「ちょっと待てよ」

一度吐精したにも関わらず、硬度を保つ欲の塊を。
いよいよ口へと捻じ込もうとした段になり、ホウ統を下より犯していた男が口を挟む。

「……何だよ?」
「この体勢じゃ、犯し甲斐が無えんだよ」

明らかに不機嫌な返答をする男をなだめて、身体を起こすと。
力無く揺れるホウ統の身体から自身を引き抜き、床へとうつ伏せに押し倒して圧し掛かり。

「やっぱり、こうじゃねえと…なっ!」

ずっ…ちゅ…ぐぷ、ずっ…!

「ヒッ、ぁ…待っ…あ、ァっ…!ハ、ァっ…あッ…アァっ…!」

否を見せるのは本音であるか、煽る為であるか。
そうする事で。
躊躇無く再奥まで突き入れられ、後背より獣の如く律動を繰り返される。

じゅ、ぷっ…ずちゅ、ぐちゅっ…じゅぶっ…!

「ふ、ゥあっ…あっ、ハっ…!…ヒ、ぅっ…あ、あゥ…っ…!」

両の手を付き、揺らされる度にぱたぱたとホウ統の身体に纏わり付いた白濁が床へと撒き落ちて。
はらはらり、と。

―――まるで、産毛の白羽が散りもがれる様に。

「……ン、ぐ…っぅ……!」

喘いだ顎を掴まれ、咥内に侵入する熱塊。
捻じ込まれるそれは、交互に。
先走りとも精ともつかず混じる欲が、口端を濡らし続け。

じゅぽっ…じゅぷ、ぢゅ…っ…
ぐぷっ…ずっ、ずちゅっ…!…ドク…ッ…!

「―――ッ…!」

内を犯す熱塊が一際に跳ねた脈動をホウ統は覚え、射精の近さを悟る。
それでも、誰ひとりとして身体を離す者は無く。
捕らえられた、ままに。

びゅく、るっ…!るる…っ…
びるっ…びゅる、びゅくっ……ぱた、ぱたっ…

「…ッふ、ぅ……あ、ァ……」

後孔へ、口腔へ、注がれる欲情をホウ統はその身から溢れ出るほどに総てを受け入れ。
用を成し終えた男達は、ずるりと自身を引き抜く。
支えを失う身体は、積もる白羽の床に倒れ込んで。


けれど、其処にはひとつも自分のものは無いのだ、と。


刻の仕舞いを告げる鈴音を聞きながら。
ホウ統は、茫洋とも亡羊とも巡らす意識を薄闇の中へ手放した。

―――…

ザァッ…
……ぐ、ちゅ…ぷちゅっ……

「…く…っ…」

湯浴みの場で、内へと吐き出された精を掻き出して。
注がれたそれらが太腿を伝い這い落ちる感覚にも、最早慣れたものだと。
不快を思う様なこころ、など。
失って久しいものだと思っていた…のに。

「……ゲホッ……」

喉の奥に広がる精のそれも、内を這う精のそれも同様。
何時の頃からか、また、嫌悪を覚える様になっていた。
…何時から、などと。
ホウ統自身が一番よく解っている事。


君、が。


ザバッ……

少しでも身にこびり付く精の感触を洗い流そうと、深く湯船に埋まり。
多分、それだけではなくて。
馳せた想いを、何処へも置けぬやり場の無さからも。

逢いたいと、自問する。
逢いたくないと、自答する。
逢いたい、逢いたくない、逢いたい……逢え、ない。

今の、こんな自分では―――

「鳳雛殿、失礼致します」

湯浴み場の戸がからからと開き、取次ぎの稚児が顔を覗かせる。
次の客、という事だろう。

「御指名戴いた客人を、部屋の方へお通し致しましたので」
「……ああ」
「部屋は…梔子(くちなし)の間となっております、間違いの無き様」
「な、に?」

ばしゃりと飛沫を上げて、稚児の方へとホウ統は向き直る。
その部屋は。

「ええ、存じております」
「ならば何故―――」
「ですから、見えられておりますよ。…確かに、今宵は何時もですといらっしゃる日和ではありませんね」
「…そう、か…解った」
「では、幾らも待つとは申されておりますが…御早目に」

乾いた音を鳴らして戸が閉められ、残されたホウ統は。
叶いし願いの重さに、深く深くその身を再び湯船へと沈めた。

―――…

「ほっほ!急に来て済まなんだな、ホウ統」
「……徐君」

梔子の間に居たのは、徐庶。
軽く掲げて出迎えられた杯には、なみなみとは言わずとも満たされた酒が注がれており。
空いている徳利からしても、整いを済ますまでにそれなりの時間が掛かった故、結構な量の杯を空けていたらしい事が伺えた。

「勝手に、先に呑っていたがの」
「それは構わないが…」
「ホウ統もどうだ?まずは一献、呑んではな」
「ん、あ、ああ…」

酔いの巡りのせいか、徐庶が何時もより更に饒舌な気がしたが。
それは―――もしかしたら。
先刻まで、ホウ統が何をしていたのか徐庶も知らぬ筈は無く。
だから、払拭する為なのかと。
…勝手な私見だとはホウ統自身で思ったが、気を遣ってくれているのかと。
渡された杯の酒を一息に空けて、ちらりと徐庶の顔を覗き見る。

「どうした?…もう一献、要るかの?」
「…あ、いや…」

ことりと杯を置き、まだ酒の満たされた徳利に持ち替え。

「…徐君は…まだ、呑むか?」
「ああ、戴こうかの。」

少し、とろんとした眼差しに射抜かれながら。
とくとくと差し出された杯に酒を注げば、徐庶もまた一息に。

「…ほっほ!矢張り、ホウ統に注いで貰った酒は格別よの」
「特に変わらぬだろう…」
「ふふ、かもしれん…が、確かに違うものよ」

するりと、それはとても自然に回された腕。
何時もは…その心地にこそ我が身を酔わされる。

―――けれど。

「……ホウ統よ……」
「……ッ…じょ、くん……す…すまない…っ…!」

ホウ統の頬を軽く撫で、それが徐庶の口付けの合図である事は。
何よりも代え難く、喜びに震える甘い口唇である事は。


どうして、受け入れる事が。


「…ホウ統?」

困惑させたくなど、ない。
悲しませる事など、殊更。
一番、見たくない徐庶の表情を自分の拒絶によって。


それでも。


「―――っ…だ、め…だ…っ……汚い…っ…か、らっ…」
「……ホウ統……」

この身の不浄など、今更。
それを口にする事は、ともすれば徐庶おも傷付けるに等しく。
解っているのに、解っていても、触れられる事が怖い。
違う香が、今だ自分を支配しているのではないか。
そしてそれを徐庶に上塗らせようとしている己に。

行き場の無い、嫌悪。

はらはらと、零れ落ちるを止められず。
ただただに、我が身の否を告げる事しか。

「……泣くでない、ホウ統」
「…ぅ、あっ…じょく、ん…」

それでも。
徐庶がホウ統を抱き留める腕の、柔らかな心地は変わらない。
良し良しと、落ち着かせる掌は何時も温かく。
こころが綻ぶ様な、木漏れ日の如くじんわりとした熱が―――好きだ。
手に入れたいと、多分、ずっと願っていたものが総て。

「…じょ、徐君…っ…?」

不意に傾けられた身体が、そのまま押し倒される格好で床に背を付ける。
このまま行為に及ばれても。
これ以上の強固な否を、ホウ統は徐庶に向けないだろう。
きゅ、と。
しかしどこか、構えてしまう眼と口元。

「…ほっほ!よし、よし…ホウ統の嫌がる事はせんよ…」
「……っ……」

そんな内心を見透かしてか、徐庶はじゃれる様にホウ統の身体を抱き寄せ、包み込むのみで。
その抱擁に、思わず徐庶の着物を掴んだ腕も…おずおずと、身体を寄せるものになる。

「…だ、が…その…」
「ん?」
「……抱き…に、来てくれたのだ、ろう……」

改めて口にするとなると、気恥ずかしい以外の何者でもなく。
後半は、か細く聞き取りもままならぬ様な声でホウ統は徐庶の胸元にしがみ付きながら問う。

「それはまあ、の」
「なら、ば…抱いてくれ…私で…構わぬのなら…今は、君のものだから…」

今一度引き締まる口元は、決した意の表れか。
双眸を合わせて全うの懇願を。

すり…っ…

「ンっ…」

突如、顔に触れた徐庶の掌が何かを確かめる様に蠢いて。
ホウ統は、その度にふるりと吐き出された欲を受けている事を思い震える。
おもてには出すまいと努めども、根差した自己への否定は思うより深く。
一層に眼と口元を尖らせる。

…スリッ…すりすり…

「…っ…あ、れ…?」
「…ほっ…額なら、いいかの?ホウ統…」
「……ん…じょ、くん……」

構えに乗らぬ額には、確かに精の覚えは無く。
収まった震えを見計らい、徐庶は優しく口唇を落とす。
額に触れた口唇の柔らかな心地が全身へと伝わり、酔わされた様に、とろり蕩けるホウ統の目元。

上辺だけではなくて。
こんなにも、あたたかくて。

しゅる…

「徐君…」

ちゅ、ちゅと幾つも口付けの雨を降らせながら。
徐庶はホウ統の身体を包む帯を、ゆるりと解き放つ。
そうして徐庶の眼前に裸身を晒せば、既に勃ち上がりを覚え始めて芯を持つ自身がひくりと主張していて。

つ…

「ふ…ン、んっ……じょ、くん…もっと…触れて…欲し…い…」

口付けを絶やさぬままに熱を帯びるそれに指を這わされれば、その微かな愛撫にも身体は火照る。
もっと、もっと。
嗚呼、身の穢れが怖やと想うは未だ残れども。

愛しい、愛しい。
この部屋で君と逢いし刻だけは、籠の雛である事を忘れて。
飛翔する事が。

「…大丈夫かの?…ホウ統…」
「ハ、ァっ…あッ…あ、あ…だいじょう、ぶ…だから…君の…すき、に…」
「ほっほ!言うたであろう?ホウ統の嫌がる事はせん、したくは無いとな…」
「っ、は、あっ……ア、んぅっ……!…じょ、くん…!」

微々たる触れが、先端を、鈴口を愛でて。
溢れ始めた先走りを纏う指が、弱い裏筋をなぞり這う。
密やかな愛撫の中にも窺える劣情への導きに、ホウ統が抗える術は無く。
徐々に硬度を増して勃ち上がる自身と、徐庶の喉元に掛かる艶を含んだ吐息がそれを物語る。

ちゅく…

「ン、んんっ…!」
「耳…も、大丈夫かの…」

額に触れさせていた口唇を、徐庶は重力に従い落ちる髪の奥から露となった耳朶に寄せれば。
瞬間、ホウ統は身を捩ったものの。
穢れを嫌う否のそれでは無い、性感のそれであると…確認の意を持って優しく囁く。
否定を告げぬ様子に、唇だけで二、三軽く食み。
じっくりと、味わう様に舐る。

「…っ、ふ…あッ…んっ…」

ホウ統の自身に触れる徐庶が掌は、既に包み込む様にして吐精を促す手淫と変わり。
くちゅくちゅと猥らな水音を響かせて。
それは耳を這う口唇も、舌も。
聴覚が、触覚を際立たせて性感を劣情を加速させる心地。
零れる鳴き声は。
普段は深い音質であるホウ統からは思いもよらぬ、甘く高き音色。
その囀りを、綺麗だと。


―――ずっと、この掌の中で聴く事が出来たなら。


「…徐、君…私だけ…では…」

熱に浮かされた様に荒く息を吐きながら、ホウ統は徐庶にひとつの懇願を。
自分だけでは。
多くは紡がぬが、耳から口唇を離して目線を落とし見た徐庶へ、そう訴える双眸を向ける。

「ほっほ!誘うてくれるは嬉しいがなあ…しかし…」
「…く、ぅっ…!ンっ……!」

ホウ統の自身を扱く掌を流し、先走りに濡れそぼる後孔へと辿れば。
閉ざしながらも、徐庶が指の腹にきゅうと好く吸い付く。
けれど。
身の何処よりも欲を受けた不浄を思い、かたかたと揺れる身体を御す事が…ホウ統には出来なかった。

「…ッ…だいじょう、ぶ…っ……だか、ら…っ…だからっ…!」
「ホウ統……」

振り払う様に、縋る。
徐庶の身体を捉えて君を受け入れたいと。

「…全く、全く…お前さんは仕様が無い雛仔よの…ほっほ!」

それがまた、愛い。

スル…ッ…

「…んっ…」

再びに額へ落とす口唇。
ホウ統への愛惜を忘れず、ゆっくりと徐庶は己の着物を払い除けて直に肌を通い合わせ始める。

「…ふ…ホウ統…」

掛かり落ちた徐庶が吐息の艶色に、如何したのかとゆるり下方をホウ統が覗き見れば。
衣服の総てを払い終え、勃ち上がる自身を追い立て、剛直へ。
眼前のホウ統を想い、それだけで耽りそうになる様を悟られて少し照れ恥じる笑みを浮かべると。
徐庶は、その自身をホウ統の下肢へと近付ける。

「……いいかの?」
「ん…あ、ああ…」

身の強張りは取りきれない。
それでも、望んだのは強請ったのは自分自身。
薄く息を吐き、挿入を―――

くちゅ…っ…にちゅ…ちゅ…っ…

「ッ、え…あっ…?……じょ、く…ンっ…!」

後孔へ意識を巡らせていたホウ統にとって、それは予想をしていなかった。
自身と、徐庶の自身とを重ね掌の内に包まれ追い立てられる。
扱かれる行為そのものに、まだ性急さは無い。
しかし、触れ合う箇所は灼けるかの如く蕩ける心地。

「…これならば、私もホウ統も悦かろう?」
「は、ァっ…あっ…!……じょ、しょ…じょしょっ…!」

生理的に溢れた涙を滲ませる双眸を向けながら、小さく頷いて。
絶え絶えに名を呼ぶ。
その、何と―――美しや。

「…"元直”、の方が…益して嬉しいのだがなあ」
「…げ、ん……ちょ…く…?」
「ほっほ!良し、良し…」

ちゅくっ…く、ちゅ…っ…!

「あっ、あ…んッ…!…げんちょ、くっ……はげ、しっ…!」

字を呼ばれると同時、徐庶の自身は一段の熱を帯びて脈打ちた。
それは、重なるホウ統自身にも伝わり。
びくりと震わせた刹那、扱く掌が速度を上げる。

「…ホウ統…お前さん、は?」

追い立てながら、ホウ統の耳元へ口唇を寄せて囁く願い。
何を、欲しているのか。

「……っ、げ…ん……し、げ…ん…と……げ、んちょく……わたし、を…よん、で…くれ…っ…」
「…ほっほ!幾らも呼ぼうぞ…士元…」
「ふ、ぅっ…ン…っ…!」

良く出来た、と。
紡ぐ代わりに軽く吐息を掛ければ、その悦さに堪えかねてホウ統は腕を伸ばし徐庶に寄せる。
離さず、は―――何方であるか。
願い、望み、叶いを想いしは。

ドク…ン……ッ…

「は、ぁっ…げん…ちょ、く……熱…い…っ…」
「…そろそろ、果てそうかな…士元…」

重なりは。
重なり以上には成さぬと理解っているのに。
こんなにも伝わるから。


ひとつだと、信じたくなる。


ぢゅっ…ちゅく、っ…くちゅ、にちゅっ…!

「っ、ァあっ…!…も、う……げ、ん…ちょくっ…!」
「……っ、く……士元…士、元…っ…」

びゅく、るっ…!るるっ…びゅるっ……ぱたっ…
ぱたたっ…ぱた、っ…

一層に強く擦り上げられて張り詰めた互いの自身から、堰を切り白濁の熱が溢れ出る。
はたはたと零れ落ちるそれはホウ統の腹を白く濡らして。
じわり、甘く痺れる余韻の心地に眼を伏せば。
身空を忘れ、美空を飛ぶ。

「……しげん……」
「…ん……げん……ちょ、く…」

そうして辿り着くのは君で、降り立つ先は君で。
ゆっくりと開く双眸には、変わらずに笑む君が映る。


そんな君は―――まるで。


ホウ統の額にひとつ、長く長く徐庶は口唇を落とす。
漸くに離した、その時。
するりと伸ばされていた腕が首へと回り。
触れるだけのちいさな口付けを、ホウ統は徐庶の口唇へ届けた。

―――…

「……す、ぅ……」
「…余程、疲れていた様だな…」

仮にではあるが身を清め。
軽く着物を羽織り、他愛も無い話を交わしていたのだが…程無くホウ統からは安らかな寝息が漏れ落ち、徐庶にもたれ掛かる。
起こさぬ様、肩をそっと寄せて。
労わる様に擦りながら寝顔を覗き見れば、愛おしさが。

「…何時か、必ず…お前さんを身請けに来るからの……その時は―――」

自分の行おうとしている事は、雛をまた新たな籠に閉じ込めてしまうだけではないのか、と。
それを想えば、先を紡ぐのが憚れて言の葉を止す。
黙し、ただただ徐庶は眠る雛に愛惜の情を持って抱き留めて。

「―――…先を…教えてはくれないのか?…徐君…」
「…ほっほ!起きていたとは、存外人が悪いな…ホウ統」
「ふふ…」

双眸は閉じられたまま、口唇だけが僅かに開き。
紡ぎ終えれば、形作る三日月。

「…待つのには、慣れている」
「それだけでは―――」

どうと表したものか。
申し訳無いとも、困惑ともつかぬ表情を徐庶は浮かべ。
伏したまま、その顔を見ずとも声の色からホウ統はそれを察して。

「……馬鹿者」

身を返し、徐庶の胸元にホウ統は縋り寄る。
きゅうとひとつ、しっかりとしっかりと君を抱き締め。

「…ホウ統…?」
「…要らぬ、心配だ…」

―――君は決して、籠では無い。
羽を休め、安息をもたらす大樹の止まり木なのだから。

■終劇■

2008/04/20 了
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