【3594taisen】
Perfect Sweets
そのモノの名前は、パーフェクト。
「張コウ殿、張コウ殿」
「何だ」
「俺にパフェを作って下さい♪」
「…お前は、俺を何だと思っているのだ」
「甘いのが食べたくなったんですよ」
「だから、何故俺に頼むのだ」
「だって、作れそうなのって張コウ殿しか居ないですよ」
「…作った事など無いから、出来は保障せんぞ」
「張コウ殿が作ってくれるなら、何でも喜んで食べますよ俺」
「……やれやれ」
甘いモノ好きに、甘い。
どちらが、真の甘いモノ好きなのだか。
ことり。
「そら、出来たぞ」
「わあチョコパフェですね、ありがとうございます。いただきます!」
ぱくり。
「ん〜…美味しいです♪」
「そうか」
「張コウ殿は食べないのですか?」
「…ああ、要らん」
「…そうですか?」
もう、ひとくち。
作った身としては、美味しそうに食す姿を見るのは悪くない。
張コウとしては、郭淮ならばそれで充分。
「まあ、そう言いませんと張コウ殿。はい、あーん」
「…な…ちょっと待て郭淮…!」
べちょ。
「あれ?」
「…この馬鹿者」
勢い良く、見当違いの方向に差し出された匙は。
生クリームの塊を乗せたまま、頬に直撃していた。
「あらら、すみません張コウ殿」
「別に良い……っ…」
ちゅ。
…ぺろ…っ…
「うん、綺麗になりました」
「……本当に、馬鹿者だなお前は」
「そうですかね?」
何事も無かったかの様に、郭淮は再び笑みながらパフェを食べ始めて。
嬉々としてパフェを平らげる、そうした意味の笑顔なのだろうけれど。
張コウにしてみれば…他愛無い不意打ちに振り回された、自分に対して笑んでいる気がして。
少し、大人気無い悪戯心が働く。
「…お前にも付いているぞ」
「え?何処です、かっ…んっ…ふ…っ…」
咥内に存在している。
飲み込もうとする前の、チョコレートを含んだ生クリーム。
舌の上に在るソレを絡め取る名目で自分のモノを交わらせると、軽く吸い上げる。
甘味を捉える舌の器官が反応しているのは、生クリームに対してなのか。
それとも。
「…ん、ふぅ…っ…!」
口唇を合わせたまま、郭淮の後頭部を掴み上げて。
互いの身体全体に染み渡らせる様に…生クリームも、吐息も、漏れるそれを全部。
甘く、蕩け落ちて。
ちゅ…っ
名残惜しむ様な音を零し、張コウが口唇をやっと離したその時には。
確かに生クリームは舐め取られ、失せていた。
が。
「…コレは、"付いている"って言うんじゃ無いんじゃないですかね?」
「そうかもしれんな」
ほんの、仕返し。
「…甘いの、張コウ殿はお好きですか?」
「…嫌い、とは言わん。その程度だ」
「ふ〜ん…そうですか」
また、もくもくと郭淮はパフェを食べ始める。
てっぺんのサクランボは、最後に食べる派の様子。
「張コウ殿にだったら、生クリームプレイくらい構いませんよ俺」
「何の話だ」
「…興味あるのかなあ、と思いまして」
「思うな馬鹿者」
そのモノの名前は、パーフェクト。
甘さの虜へと。
完璧に。
■終劇■
2007/06/28(パフェの日) 了