【Rockman.EXE@】
ちいさき生き物とのささやかな日常
◆ヒノケンと手のひらサイズの"ちっ恋"アツキ
二人(?)の日常をお題ガチャさんの結果から3本



・ちいさきトンネルチャレンジ(大失敗)

「うー…ゔー…」

じたじた…ゆらゆら…

「(…何をやってんだ、このチビ小僧はよ…)」

時刻はそろそろアツキのオヤツ時間。
まだ少し早いのだが、家の中でしょっちゅうかくれんぼをして遊んでいるアツキを探す時間を設けた方が良いと学んだヒノケンは、寛いでいたリビングから離れ。
さて今日は何処に居るのかと…廊下に出たところで。
ポツンと転がる謎の物体を発見していた。
…いや、全く謎では無いのかもしれないが。
何故なら転がっているのは、先程交換してから別の事を開始してしまい、そういえば捨て損ねた気がするトイレットペーパーの芯。何の変哲もない。
ただし、その芯からはアツキの尻が出ている。

「うぐぐ…抜けね…出れね…ッ…ぐぐ…」

じたばた…じたばた…

「(…やれやれ、完全に詰まってやがるな)」

ヒノケンにとってはただの処分する物であっても。
手のひらサイズのアツキからすれば、充分な遊び道具の対象になるという事は今までも度々あった為、トイレットペーパーの芯も例外ではなかったのだろう。
好奇心旺盛な事もあり、トンネルくぐり気分。
なのだか、ちいこいお尻が完全につっかえており。
引くも進むも出来ずに詰まったのだと、これまでの慣れもあってヒノケンは即座に理解し。
助けてやるのは容易い…が。

「(…ちまいケツが必死こいてる様子は見ものだな、探す手間も省けたし少し放っとくか)」

あまりにじたじたと暴れる様に。
ヒノケンは少々、意地悪心が湧き上がって。
必死なアツキにはヒノケンの存在にまだ気付いてもいないだろう、一体どうなるのかさっきからぷりぷりと揺れているアツキのちんまいお尻の結末を。
静かに手を出さず見守っている、と。

「ぬぐぐぐ…こ、これで…どうだべッ…!」

じたじたばたばた!…ゆら〜…ゆら…
……ぐりんっ!

「へ?」
「あん?」

……コロ……
コロコロコロコロゴロゴロゴロゴローッ!!

「のわあぁぁああ?! や゙─────!!!!!」
「……アホか、あの小僧は…」

一生懸命、全身を使い抜け出ようとしたアツキだが。
滅茶苦茶に暴れた結果、力が横に掛かってしまい。
くるんと一回転したのを切っ掛けとして止まる事は無く、そのまま自身が暴れ生み出した回転力のままに廊下を転がり続け、微妙にくぐもった絶叫が響く。
とんだ展開にヒノケンは呆れたが。
突き当りまで転がり漸く止まったらしいトイレットペーパーの芯…ではなくてアツキを確認すると、ゆるりと歩き始め救助へと向かう。
正直なところアツキはちっこいけれどもかなり丈夫だと分かっている為、そこまで心配はしていない。寧ろあの回転具合、廊下が傾いているのではないかという方を心配している。

「ふ、ふぐぐぐ……う?」

つぽんっ

「…ぷあっ!…え、エライ目に遭っただ…」
「お前がアホな遊びをして、自爆しただけだろが」
「…ってオッサン!こげに早く来るっちゅう事は見てたンだべ!もっと早く助けねっか!」
「へっへっ、ま、愉快な転がりっぷりだったぜ」
「う、うぐぐぐぅ…」

トイレットペーパーの芯から解放されたは良いけれど、ニンマリ笑うヒノケンの表情から。
先程までの姿を見られていたのだと悟ったアツキは、恥ずかしさもあるし結果的に助けてもらいもしたしで、行き場の無い感情の声を漏らすばかり。

「…うゔ…クルクルとかコロコロは暫くイイだ…」

ぐるぐるの感情で顔を赤くしているアツキ。
回転を想起するモノはこりごりという旨をポツン。
それを聞いたヒノケンは。

「ふーん、じゃあ今日のオヤツはロールケーキなんだが…クルクルしてるからいらねぇか」
「えっ、ロールケー…」

「…」「…」

「……オッサン、さっさとオヤツにスるだ」
「ん。よし」

トイレットペーパーの芯をヒノケンは拾い上げて綺麗に潰すと、今度は忘れずに処分して。
何事も無かったかの様に振る舞いオヤツを要求するアツキとリビングへ戻り、クルクルのロールケーキを一緒に食べ始めたが。
あのお尻の姿は撮っておけば良かったな、と。
幸せ一杯にロールケーキを食べるアツキを見ながら、少しだけヒノケンは後悔していた。

───後日。
ヒノケンはアツキから。
トンネルごっこは暫く止めるけれども、芯の上に寝そべりコロコロする遊びの為に、早くラップの芯を空けて寄越せというリクエストが来たそうな。

■END■

・ちっこいあいつ
https://odaibako.net/gacha/7226

6.捨てそこねたトイレットペーパーの芯からアツキのちいこい尻が出ている。多分くぐろうとして詰まったのだろうが、めちゃくちゃに暴れるので横に転がっていってしまい「や゛ーーーーー!!!!」と微妙にくぐもった鳴き声が遠ざかっていく。



・洗濯物かくれんぼ(わりと失敗)

「(…オ、オッサンには分かンね筈だべッ…!)」
「(…ケツ出して隠れるのが趣味なのか…?)」

先日のトイレットペーパーの芯・トンネル事件の後。
ヒノケンにラップの空き芯をねだったアツキは、数日して使い終わったラップの芯を無事にプレゼントされて、芯に寝そべりコロコロと遊び始め。
一度だけ芯の上に立とうとして後方に滑り、頭にタンコブを作ってヒノケンから呆れと注意を受けてからは危ない遊び方はせず。
当然、トンネルくぐり系の遊びも控えられていたが。
基本的に「かくれんぼ」がアツキは好きである。
という事を踏まえ、今リビングに起きている状況は。
畳み置いていた筈の洗濯物が無茶苦茶に散らかされていて、タオルの中に上手く隠れたつもりでいるアツキ…なのだが。芯事件の時と同じく、やっぱりお尻がはみ出てしまっていた。

「(ふふン…オラの事、気付いてねぇだな…)」
「(しっかし、あの小せぇ身体でここまで洗濯物を散らかせるモンだな、逆に感心するぜ)」

畳んだ洗濯物をそのままにして、ヒノケンが宅配便を受け取り中身を確認して戻る迄の間。
長く空けた時間ではないだろうに、アツキは。
そんな短い間でフカフカの洗濯物が気になって遊びだし、あちこちに吹っ飛ばしまくり。
ヒノケンが戻ってきた気配を感じて我に返り、慌てて近くに落ちていたハンドタオルの下に潜り込み、やり過ごそうという魂胆だったに違いない。
だが、アツキの他に犯人が居る筈は無く少々の時間稼ぎにしかならない上に、お尻を出して隠れている様は、散らかした事を叱る気も失せ。
どこかヒノケンは、その元気の良さと図太さと詰めの甘さに、いっそ感心すら覚えており。
ふ、と仕方無さげに漏れた短い息。
じっと隠れているつもりのアツキに近付くと。
はみ出ている、ちんまりしたお尻へ指を。

つんつん
むにむに…ぷにぷに…

「……ンひゃッ?!」
「(ちょっとイイ感触だなオイ)」

指先に伝わるアツキのちんまりお尻の感触が思った以上に良く、もう少しつつきたいが。
突然お尻をつつかれた当のアツキは、タオルの中から「何故バレた」という旨を含んだ声を上げ、慌ててにじにじとより深くタオル内へ潜り込む。
それで確かにお尻は隠れたけれど、つつかれた時点でとっくに居場所は割れている訳で。
しかも今度は。

ぴょこん

「(へへン、これで隠れた筈だなや…!)」
「…ぷ…やれやれ、ケツの次はつむじが見えてんぞ」
「ンやっ?! そ、そげな筈……あっ」

普通のタオルなら全身が隠れたかもしれない。
隠れたところで、だけれども。
しかしアツキが咄嗟に潜り込んだタオルは小振りのハンドタオルで、お尻は隠せたが頭がぴょこんと飛び出し、少し乱れたツンツン頭の中のつむじが見え。
だがアツキ的には完璧に隠れたつもりだったのだろう、タオルの中でドヤ顔を決めていた。
ところが聞こえてきたのは、吹き出し笑いを堪えたようなヒノケンの様子と、ずっと自分の身体は隠れていなかった事実を告げられ。
思わずアツキは顔を上げてタオルから出てしまう。

「さて、何か言う事があんだろチビ小僧」
「う、うぐ……ち、散らかスて…悪かった…だ…オラ、ちっと楽スくなッツまって…スまね…」

流石に観念したのか、タオルから這い出たアツキはヒノケンの方へ向かい直し、シュンとして頭を下げたまま洗濯物を散らかした事を謝り。
許してくれるかな、とモジモジ。

「…へっ。一応、反省してるみたいだし、お前のケツの感触に免じて今回は許してやらぁ」
「…ケ…そ、そうだべ、あンな勝手にツンツンとかスるでねぇだ! びっくりスたかンな!」
「そのお陰で許してやるっつってんだから、ありがたく思いな。…さて、散らかした洗濯物を畳み直すから手伝えよ、そしたらオヤツにしてやる」
「……ン。…オラがオッサンに持って来るだ!」

「かくれんぼ」は、おしまい。
今は今日のオヤツと、ごめんなさいの為に。
アツキはぽてぽてと走り出して、自分が散らかした洗濯物を集めてヒノケンに持ってゆき。
改めて畳まれる度、ふんわりと広がる洗いたての香りは二人を包んでお揃い。アツキは何処か嬉しそうに、洗濯物が畳み終わるのをじっと見守っていた。

─…

「……あ、いけねぇ。また忘れたな」
「ンや? どスただ? オッサン」

「お前のケツ出し姿を記録すんの忘れた」
「そ、そげなの残スでねぇだ! アホかオッサン!」

■END■

・ちっこいあいつ
https://odaibako.net/gacha/7226

29.本人はタオルの中にうまく隠れてるつもりなんだろうけど、おしりがはみ出てるんだよな……アツキ……出てるよ、という意味で軽くおしりを押したら、慌ててにじにじとおしりを隠した。今度はつむじがみえてるよ。



・無駄な抵抗は止めて出てきなさいゴッコ

むすー…ぷくー…

「…その膨れっ面は、どこまで膨れるんだかな」
「……オラは怒っとるンだかンな、オッサン」
「それは見りゃ分かる」

リビングの隅っこに陣取り、明らかに何か気に入らない事があって、むすっとしたアツキ。
頬をぷくーっと膨らませてヒノケンへ不機嫌を伝え。
そんなアツキの抗議姿勢を、半ば呆れつつヒノケンはソファに座りながら窺っていると。
むすー…とした顔のまま、カーテンの影からゴソゴソと何かを取り出してきたかと思えば、分別しておいたのに行方不明となっていた、ペットボトルのキャップを入れておいた袋。

「…見当たらねぇと思ったら、お前の仕業かよ」
「…な、何か作るのに丁度エエかなって…」
「へーえ、例えば?」
「……今なら、バリケードとかだなや」

そう言ってアツキは袋からキャップを取り出し。
せっせと自分の周りに積み上げてゆき、ヒノケンに対して更なる抗議の構えを見せてゆく。

「おー、上手い上手い。ソレっぽいぜ」
「ぬぐぐ…完全に舐めとるなオッサン…」

完成したキャップのバリケードの隙間からアツキがヒノケンの様子を窺うと、何が悪いのか全く自分には関係無いといった眼差しで笑っており。
ささやかなバリケードなど意に介しておらず。
その態度にカチンときたアツキはバリケードの奥に引っ込むと、ペットボトルのキャップとは別の小さな箱を「よいしょ」と持って来て。
モソモソしていたかと思ったら、バリケードの隙間からポイポイと銀色の物が撒かれだす。

「…クリップの箱も、お前かよ」

ヒノケンが言う通り散らばったのはクリップ。
だがソレをバラ撒いて何の意味があるのかと思ったが、アツキ的には恐らく「まきびし」の代わりという事だろうか。侵入への牽制としてやっている模様。
当然、ヒノケンに効果は無いのだが。

「むー…」
「…ったく、何が気に入らねぇんだ? ん?」

ひとしきりクリップを撒き終えると、またバリケードの奥へ引っ込みチラチラと様子を窺ってくるアツキに、そろそろヒノケンもその態度の訳を知りたい。
ソファから立ち上がり、隅っこへ近付き。
指でそっと、バリケードの一部を動かすと。

「! …ゔ──…」

慌ててアツキはキッ!とヒノケンを睨み(迫力ゼロ)
威嚇のつもりか低く唸りながら、動かされたバリケードを取り返しつつ、今度は完全に隙間を埋める形で塞ぎ籠城の姿勢。
ただし上からはガラ空きである。

「うぉーい、無駄な抵抗は止めて出てこーい」
「ふぐぐ…上から覗き込むでねぇだ! 卑怯だべ!」

バリケードの奥に籠り、ちょこんと座り込むアツキ。
覗き込めばすぐに見えたツンツン頭を、ヒノケンは指で軽くツンツンしてやると顔を上げ。
ちんまい拳をブンブン振るうが可愛さしかない。

「まず、いい加減に不機嫌の理由を話しやがれ」
「……オ…オッサンが…オラの…」
「お前の?」
「お気に入りのぬいぐるみを、勝手に洗っただ…」
「ああ? ぬいぐるみ? ……コイツの事が」

ポツポツとバリケードの中から理由を話し出したのを聞いたヒノケンはリビングのテーブルへと向かい、机上に置かれていたぬいぐるみを手にして戻る。
アツキと同じくらいの大きさの犬のぬいぐるみ。
お気に入りと言うだけあって、よくアツキはギュムギュムと抱き締めていたり、ポシポシと頭を撫でていたりしていて。しょっちゅう構うから汚れも付いて。
だから、ヒノケンとしては良かれと思っての事。
なのだが、アツキには余計なお世話だったという事。

「綺麗にしてやったんじゃねぇかよ」
「……オッサン…の…」
「俺の?」
「…一生懸命、オッサンの匂いがするように…やっとったのに…無くなッツまったでねか…」
「あん? お前のじゃなくて俺の匂いだぁ?」
「…オッサンに、ちょっと似とるから…」

アツキの言い分にヒノケンはぬいぐるみを見るが。
本人としては、何処が似ているのかと思うものの。
ヒノケンが出掛けている間に面影を見る物として…アツキにとっては、とても大切なのだという事は、段々と塞ぎ込んできた姿で見て取れる。

「…ったく…しょうがねぇ小僧だな」

ひょいっ…

「わ、た、なっ、なにスるだ! 離さねっか!」
「宙ぶらりんで離したら危ねぇだろが」

バリケード内のアツキをヒノケンは強制捕獲し。
小さな身体を摘み上げ、そのままソファへと連行。
浅く腰掛け背もたれに普段よりも背中を預け、何時もよりなだらかな傾斜の胸元にアツキとぬいぐるみを置くと、ワシワシと纏めて撫で始めた。

「ななな、一体なンねオッサン!」
「元通りにしてやろうってんじゃねぇか。ついでにチビ小僧もな、俺のモンだって事で」
「……バッカでねぇの、オラまでは余計だっちゅうに…それに、オラはオッサンのモノでねぇだ、オッサンがオラのなンだかンな!」

そう言うやアツキはちんまい手でヒノケンのシャツを掴み、ぐりぐりとほっぺを擦り付けて負けじとマーキングを始めたけれど。
大きな手で優しく撫でられて、お日さまみたいな体温があったかくて、トクトクと一定のリズムを刻む心臓の音が心地好くて───

「……ぷぅ、ぷぅ…すーすー…」
「……へっ…まったく、分かり易い小僧だぜ」

あっという間に上がるアツキの寝息。
予想通り、という表情をヒノケンは浮かべ笑み。
静かに目を閉じアツキとぬいぐるみを撫でていたが。
気付けばアツキの寝息に誘われ。二人仲良く夢の中へ旅立ったから───今日は引き分け。

■END■

・ちっこいあいつ
https://odaibako.net/gacha/7226

21.勝手にアツキのお気に入りのぬいぐるみを洗濯したことが気に入らなかったらしく、むすーとした顔で自分の周りにペットボトルのキャップやらクリップやらでバリケードを作り始めた。指でそっと移動してみたら「ーー……」と威嚇しながら取り返しにきた。バリケードの中に入ってからそれで蓋をしていた。

2022.09.22 了
clap!

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