【Rockman.EXE@】
フカフカわんこホットケーキ
「…これは、どういうつもりだべオッサン」

何の変哲も無い、当たり前の休日。
アツキがオヤツを食べたいと言い出したので。
何が良いのかとヒノケンがリクエストを聞いてみれば、以前に出されて食べたのが気に入ったらしい、ホットケーキが食べたいとの事。
幸い材料は揃っていたし、ホットプレートを準備して焼き始めたヒノケンの姿を、アツキはわくわくしながら熱い視線を送りつつ焼き上がりを待っていたのだが。
アツキ用のお皿に乗せられたのは。

ちまっ…ちょこん

とてもとても、ちんまいサイズのホットケーキ。
そもそもアツキ用のお皿というのが、前回はヒノケンにとっては小皿より少し大きい程度の物だったのに、今日のお皿は人形遊び用といったミニチュアお皿。
どういう事かとアツキが膨れるのも仕方がない。

「前回の皿に合わせたサイズで焼いてやったら、大き過ぎて食べ難そうにしてたじゃねぇか。だから今回は小せぇのを手間だが複数焼いてやるってんだ」
「…む…そゆ事だか…確かにおっきかっただな…」

ヒノケンから訳を聞き、ちょっと納得したアツキ。
ふんわりフカフカのホットケーキを出して貰えてテンションは上がったが、アツキの身体に対してかなり大きな仕上がりになってしまった為。
食べていくのもだが、後半は冷めてしまったホットケーキが続く事にもなってしまって、美味しかったけれど…といった感想を抱いていたのも確か。
それを省みての、ちまホットケーキ。

「ま、取り敢えず食べるこった。そらメープル」
「…分かっただ」

ちまホットケーキにメープルを掛けて貰って完成。
甘い香りが強くなり、ちんまりでも美味しそう。
ミニチュアのアツキ用フォークを手にして、メープルを零さぬようにして、いただきます。

さくふわっ…ぱくっ
……もっ、もっ……ぺろり

「ふぁあ〜…うンめ!ちまこいけンど、完食スて最後までフカフカなのは良いモンだなや」
「そらみろ、俺の言った通りじゃねぇか」
「ぐむ…悔スぃが、そういう事になるべな…」
「へっへっ…分かりゃイイ、そら次だ」

ぽふん、と空になったお皿に新しいホットケーキ。
得意顔をしているヒノケンの事はカチンとくるけれど、またフカフカの美味しい焼き立てホットケーキが出て来た事で、アツキの機嫌は元通り。
今度は甘酸っぱいイチゴジャムを添えよう。
もくもくと食べれば咥内は幸せでいっぱいに。
さあさあ。

「オッサン、次!次!」
「そんな急かすんじゃねぇよ。…まったく、わんこそばならぬ…わんこホットケーキだな」

呆れた笑みを浮かべるヒノケンだけれども。
一枚を美味しく完食出来る事が、本当に嬉しくて堪らないといった様子のアツキを見る事が出来るのは悪くない。今度はバターをたっぷりと。
ちいさき生き物の、お腹を満たして。

……もっもっ…ごくん

「次のをやって大丈夫か?」
「ンっと…な、オッサン」
「どうした?腹一杯になってきたか?」

ちまちまホットケーキを焼いては、空いたアツキのお皿におかわりを置いていたヒノケン。
それこそ、わんこそばの如くヒョイヒョイ食べる様子から、まだまだお腹に余裕は有るのだろうと思いながら一応は次を置いて良いか聞いてみると。
アツキは何かを考える素振りを見せ。
ヒノケンに向けて口を開く。

「こげな程度で、お腹いっぱいなンかにならねぇだ」
「じゃあ、何だってんだ」
「ンっとな、出来たてを一枚ずつも美味いンだけンど…コレ、ちまこいのを十枚とか重ねたホットケーキっちゅうのも食べてみてなって。…駄目だべか?」
「…なる程な、お前が全部食えるなら構わねぇよ」

アツキからのリクエストは夢の十段ホットケーキ。
珍しく、ちょこっとだけ遠慮なんかして。
可愛いお願いにヒノケンは瞬間、柔らに笑み。
ちまちまと新たなホットケーキを焼き上げていけば、アツキの期待の眼差しが注がれる。

「よっしゃ、皿に乗せてくぞ」

…ポン、ポフ、ポフッ、ポフン、ポフンッ…

「…おお…おぉお〜…」

思わずアツキからは感嘆の声。
積み重なったホットケーキにキラキラと輝く瞳。
サイズが小さくとも、テンションは上がるしかない。

「メープルを上から掛けても構わねぇか?」
「勿論だべ!てーっと掛けるだ、てーっと!」
「分かった分かった、フォークを振り回すなよ」

十段ホットケーキの上から、ヒノケンは敢えて少し高い位置からメープルシロップを流し落としてやり、蜂蜜色の糸がホットケーキを包む様をアツキに見せると。
アツキからは「ふぉお…」という、テンションが振り切り過ぎて寧ろ立ち竦み、アツキの瞳と同じくらいメープルで輝くホットケーキの完成。

「…おい小僧、冷める前に食べな」
「…ッと、いけねッ。感動スつまってただ」

はっ、とヒノケンに言われて我に返るアツキ。
大袈裟だな、けれど、ちいさき生き物らしい愛しさ。

「ほんで、いただくべ!」

言うや否や一番上のホットケーキから胃袋へ収め。
次々と平らげてゆく様、おかわりはまだ続きそう。
モフモフ食べて膨れるアツキのほっぺ。
ヒノケンには、沢山焼き上げたホットケーキよりも甘くてフカフカで美味しそうに見えた。

■END■

・ちんまい生き物との生活
https://odaibako.net/gacha/8544

3.以前ホットケーキを焼いた時に大きくて食べづらそうだったので、手間だけど2センチサイズにちまちま焼いてアツキに出してあげた。一個を完食できるのが嬉しいらしく、何個もおかわりしてくれた。

2022.08.31 了
clap!

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