【Rockman.EXE@】
初雪を溶かし焦がして
◆診断メーカー様の結果から
ヒノアツか3ナビ兄弟か置き場を迷ったのですが、擬人化(実体化)有りなので3ナビ兄弟に
火野家+バーナー組の才葉で初雪話



『おはようなのら!今日の才葉シティの天気は全域で快晴!昨晩の内に今年の初雪をお届けしたから、たーくさん雪遊びを楽しんでほしいのら!』
「おーおー、予告通り降り積もってんな」

とある冬休みの朝。
適当にチャンネルを合わせ付けたテレビからは、ウェザーくんが本日の天気を伝えていて。
ヒノケンがカーテンを開け放つと、予告に違わず降り積もった今年の初雪が一面に広がり。
快晴の空から降り注ぐ朝日の反射が目に刺さる。

「ふぁ〜あ…ン?…雪が降ったンだか?」
「昨日から降るって予告があっただろうが」
「ふーン…」

カーテンを開け終えたヒノケンの元に、まだ少し眠たそうにしているアツキが起きてきた。
冬休みに入った事から、ここ数日は研究の手伝いでヒノケンの家に泊まり込んでいる模様。

「…雪が降るっちゅうても、やっぱスこげな程度だか。大スた事がねぇべ、寒くもねぇだ」
「俺はお前に、冬が来る度に毎回毎回、ここの冬は寒くねぇってのを聞かされるのかよ」
「本当の事だからスっかたねぇべ」
「ったく、シャーロでも同じ事を言えんのか?」
「シャーロ?」

ぱちくり、と。
眠たげにしていたアツキの目が、急な国名に覚め。
確かにシャーロは相当な寒さになる国ではあるが。

「…行く予定なンか無ぇべ?」
「さてな、俺のどんなナビでも炎を扱えるシステム開発をシャーロの企業に売り込んでいるトコロだから、行く機会がいずれあるかもしれねぇな」
「なスてシャーロの企業とか選ンだだ?」
「あの国は寒さで電子機器の電脳世界でフリーズ事故が起こる、そのフリーズを溶かし除去するってなると炎ナビが適任なんだが…フィールドやウイルスの相性がすこぶる悪くてよ」
「…ああ、水属性が多いンか」

ヒートマンの様にフロート機能を備えていれば良いだろうが、氷パネルもシャーロは多く。
足を取られる上で不利属性を強いられる作業では。

「…まあ、犠牲になってる炎ナビも出る訳だ」
「…そうだか」

アツキも―――ヒノケンも。
恐らく以前であれば、自身が所持する炎ナビ以外の炎ナビがどうなろうと構わなかった。
だが、今は…研究を通して総ての炎ナビに対し、己を投影出来る誇らしい存在に変化し。
過酷な環境での作業に従事する炎ナビを想う。

「だから、俺の研究しているシステムなら炎の力をどんなナビでも使えるようになるんで、ナビ本体の属性が炎でなくても良くなるから、除去作業の安全性が向上するって訳だ」
「ふぅン…炎ナビの出番が減るンは、ちっと残念な気がスっけども…言ってられねっか」
「そういうこった。結構な問題らしく、持ち掛けた幾つかの企業からは研究援助費を出してもいいなんて話も来てるから、大体の完成を迎えたらシャーロに直接行くって考えときな」
「そげな理由だったンか、覚えておくだ」

手伝ってはいるものの、実際にどんな場面で研究が役に立つのか漠然としていたアツキにとっては、明確なビジョンが見えたと言っていい。
研究に対する意識を強めた面持ちで返す。

「…へっ、まだまだ先の予定になるだろうけどな。ところで、今日は俺が才葉学園のシステムだ何だの見回り当番だから、朝飯食ったら出掛けるぞ」
「冬休みなンに御苦労なこっただなオッサン」
「他人事じゃねぇぞ、お前も来い。見回りなんざすぐに終わらせてぇからな、擬人化プログラムでバーナーマンも実体化して手伝えよ。手分けしてとっとと済ませちまうんだ」
『ええー、メンドくせぇな…』
「面倒なのは俺だ。お前や俺のナビは学園に着いて実体化すりゃいいが、こっちは雪を降らせやがった中をわざわざ学園まで行かなきゃならねぇんだぞ」
『…まあ、アツキも行く訳だしな…分かったぜ』

そんな会話があり、早速朝食を済ませ。
支度を整え雪の積もる外に出て、初雪とかどうでもいいと言いながら10分後に学園到着。
手付かずの白銀が広がる運動場で擬人化プログラムを実行し。
さっさと見回りを―――する、筈が。

「小僧が俺に勝とうなんざ、百年早ぇ!」
「へへン!オッサンのヘナチョコ雪玉とか当たらねぇだ!雪に慣れとるオラに勝とうっちゅう方が千年早くて笑ッツまうだオッサン!」
『ヒノケン様に対して雪玉は一つも当てさせねぇ!これでも喰らっとけ馬鹿バーナー!』
『誰が馬鹿だファイアマンこの野郎!』

あれだけ初雪とかどうでもいいだの外に出るのに面倒だの、或いはこんなの降った内に入らないだの、興味が無い様子で居たというのに。
自分達の他に誰も居ない運動場を目の前にするや、雪合戦の火蓋が切って落とされていた。
それも相当な全力具合で。

「っしゃあぁあ!コイツでどうだぁ!」
「おーっと、今のはちっと惜スかっただな!」
『オイ!今のは小僧に当たってるだろ!』
『アツキには当たってねぇよ!…つーか、一発当たってアウトなんてスポーツルールじゃ面白くもねぇ、とにかく当ててぶっ飛ばした方が勝ちだ!』
『…言ったな馬鹿バーナー、容赦しねぇからな!』

構図的にはヒノケンvsアツキと、ファイアマンvsバーナーマンの投げ合いとなっていて。
しかし此処にはヒートマンとフレイムマンも同行し、擬人化プログラムを実行している。
雪合戦を開始した当初は、数でバーナー組が圧倒的に不利ではないかと思われたのだが…

『ウオオォォオオッ!待てー!待てってフレイム!』
『ヴォヴォーッ♪』

ヒートマンは、雪にテンション爆上げして雪合戦そっちのけで運動場を走り回り出したフレイムマンを落ち着かせるべく振り回されていて参加しておらず。
結果、雪合戦組は2対2となったらしい。

『…こ、こんだけ雪でテンションが上がるって事は、猫系だと思っていたんだが…もしかして犬系なのかよフレイム…後でオヤジに聞いとくか…』
『……ヴォヴォオー?』

どうやら、雪のせいもあるが。
ヒートマンが自分を追い掛け始めた事で鬼ごっことでも思ったのか、息切れして立ち止まったヒートマンに気付くと、「追い掛けない?終わり?」と言いたそうな様子で近付いてきた。

『…俺が止まりゃ良かったのか…やれやれ。電脳世界じゃ脚が無いのがデフォの俺には、擬人化プログラムの状態で走るのが変なカンジで慣れねぇんだって』
『ヴォオウ?』

全く疲れた様子を見せず、息切れしているヒートマンを不思議そうに見るフレイムマン。
知能具合や「弟」といった要素から、擬人化プログラムを実行した姿は幼く変換されていて。
しかし並外れた体力は擬人化プログラムの制御下であってもかなり反映され、縦横無尽に走る様は電脳世界と変わらず火の玉が駆け回る様に見えた。

『(…元気に…なったけどな)』

そんなフレイムマンを見ていると完全に復旧した様に感じるが、擬人化プログラムを実行した姿には、腕や脚等の数ヵ所に加えて必ず首に包帯データが巻かれ。
まだ「完全」な復旧ではない証。
けれど…バックアップも消し飛び、辛うじて回収した残骸データからここまで復旧したのだから、何時かはこの包帯も無くせるに違いない。

『ヴォウヴォウッ!』

フレイムマンの復旧と再起動後、人語翻訳等のプログラムを使う意志疎通は敢えて止め。
それは首に包帯が現れる事からも察するが、言語系プログラムとの相性そのものが損なわれているらしく、正常に働かずバグが生じる事が増えたのもあるが。
そもそも…翻訳を介した言葉は、ホントウ、なのか。
フレイムマンが伝えたい事には違いない。
けれど、ふと、そんな事が。
「今の自分達には」何故だかとても重要な気がすると、ヒノケンもファイアマンも…そして。

『…そんなプログラムで無理矢理に人語を喋らせなくたってイイじゃねぇか、フレイムは兄弟だ、そのまんまでも解ってやれるぜ。…俺達だけだとしても、それで充分じゃねぇの?』

ヒートマンも同じ想いだった。
将来的にヒノケンは、フレイムマンにデータ圧縮等の手を加えても問題が無くなった際、空けた容量に「フレイムマン自身の言葉」を持たせてやる事にした。
ホントウの言葉を得る日は、まだ先。

『(…俺達以外にも、このままのフレイムを解ってくれるヤツが現れてるけどよ。言葉が使えるようになったらなったで、あの小僧は受け入れてくれる筈だ)』

アツキは初対面時から、人語翻訳プログラムが無くてもフレイムマンと打ち解けていた。
フレイムマンもアツキに対して、すぐに懐いた。
それはアツキが、同じ炎のココロを宿しているから。

『(…兄貴は…小僧達の事をまだ腹の内じゃ複雑に思っているだろうが、俺はオヤジがあの小僧と出会えて良かったんだと思ってる。…「今の俺達」が在る切っ掛けは…あの小僧だから)』

ちらりと、ヒートマンは雪合戦を窺う。
飽きもせずに雪玉を投げ合い、お前なんかよりも俺の方が上だという旨の台詞が飛び交い。
だが、主も兄も…満ち充ちた表情で。
ずっと切望していた、己の炎を満たすモノ。
やっと、自分と同じ"焔"を見付けた時。
探し求めるあまり気付けば踏み外していた道を―――「正す事」を、考え始める事が出来た。
そんなんじゃねぇ、と、主は言うだろうけれど。

『(タコ焼き屋の一件と立て続けのダブルパンチだったのも、相当キいたんだろうけどな。だが最終的に選んだのが小僧って事は…恐らく。…ん?)』
『うぉらああああっ!どうだファイアマンっ!』
『(……そういや)』

気合いの入った一球を投げるバーナーマン。
一際大きな声で辺りに響いた為、自然とヒートマンはバーナーマンに目を向けたのだが。
はたと気付く。

『(最近、フレイムはバーナーマンを噛んだりしてねぇな。前は見掛けりゃ噛んでたのに)』

初対面でアツキがフレイムマンと打ち解けた一方。
理由は今も不明だが、バーナーマンは何故か初見でフレイムマンに「噛むもの」認識され。
それでファイアマンは構わないといった様子だったが、流石に毎回噛み付きに掛かるのを見かね、ヒートマンは「あまり噛んでやるな」とやんわり諭す程度に数回言い聞かせていた。
もし、それが通じているのだとしたら。

『(…このままのフレイムでも、ちゃんと学習してくれているって事だ。このまま、でも)』

「そう創られた」ままのフレイムマンを尊重したい。
そんな自分達の想いに、フレイムマンも応えようと。
だから―――今だって解る。

『…もっと雪で遊びたいよな、フレイム』
『ヴォ!ヴォウッ!…ヴォ…?』
『ん?…ああ、俺なら休んだからもう平気だぜ』

静かに雪合戦の方を見ていたヒートマンだが、フレイムマンに目線を戻して雪遊びに誘う。
それを聞いたフレイムマンは、明るく返事をしたのだが…すぐに何かを心配する様な表情。
どうやら、息切れしていたヒートマンの心配を。
気遣ってくれる弟に、ヒートマンは眸を細めて笑みながら、自分はもう大丈夫だと告げる。

『…ただ、その…』
『ヴォッ?』

「そろそろ降参しやがれ小僧!玉に力が無ぇぞ!」
「やっかまスぃ!オッサンこそヘロヘロでねぇか!」
『テメエ!雪玉をヒノケン様に向かって投げるな!お前の相手は俺だと言ってるだろが!』
『ンなの知るかよ!2対2なんだから、俺もオッサンを狙ったって勝負は成立すんだよ!』

『……今からアレに加わるのもなぁ』
『ヴォウゥ…』
『兄貴に、すっこんでろとか言われそうだな』

再び雪合戦の様子を窺うヒートマン。
一度雪玉が当たればアウトのルールではなく、バーナーマンが言い出した「とにかく当ててぶっ飛ばした方が勝ち」を採用した為、まだまだ続いている。
ヒノケンとアツキのコートを見るに、お互い雪玉を当ててはいるらしいが決着は付かず。
まだ続くなら今からの参戦も出来るだろうが、あそこまで2対2で白熱していると、寧ろ邪魔をするなと言われてしまう未来が想像に難くない。

『ん〜…じゃあ雪だるまを作ってみるか!』
『ヴォオォ?』
『ええとな、まずはギュッと固めた雪玉を作って…よしっと、コイツを雪の上でアチコチ転がしてドンドン大きくしていきなフレイム』
『ヴォオオオン!ヴォ!』

ヒートマンから固めた小さな雪玉を譲り受け、言われた通りにフレイムマンは転がし始め。
転がす様子を少しだけ見守ったヒートマンはPETを取り出すと、雪だるまのキレイな頭と胴体の比率なぞを検索に掛ける為にフレイムマンから目を離す。

『…3:4辺りか。よし、フレイムは頭を…』
『ヴォウッ、ヴォヴォーッ♪』

僅かに目を離している間に。
フレイムマンは言われた通り雪玉を「ドンドン大きく」しており、既にヒートマンの想定していた大きさに迫っているが、フレイムマンは止まりそうにない。

『…アレを胴体にして、見合う頭を作れっかな俺…』

かまくら作りにすりゃ良かったかも。
少し後悔しながら、ヒートマンも雪玉を転がし始めた。


―――ビュンッ!ビュン…ッ!

「ったく、しぶてぇ小僧だな!」
「オッサンこそ、いい加減に諦めるだ!」
「うるせぇ!これで―――…」

「ぶっ倒れやがれぇっ!」「ぶっ倒れるだぁあっ!」

ビュウ、ビュウンッ!…バシバシンッ!!
……ずるっ

「うおおぉぉおおっ!?」「だああぁぁああっ!?」

ドサ―――ンッ!!

『ヒ、ヒノケン様っ!』『ア、アツキぃっ!』

コートを命中した雪玉で白に染めながら、尚も雪玉を投げ続けていたヒノケンとアツキ。
だが流石に体力の消耗は激しく。
この一投で決めてみせると放った、双方の渾身の一球は…どちらも命中はしたが受け止め、決着を付ける事は出来なかったように始めは見えた。
だが、受け止めた衝撃は確かに身体に伝わり。
本人達の想像以上にガタが来ていた脚の踏ん張りが全く効かず、足元の雪をかなり踏み固めてしまったのも相まって、後方に足を滑らせ仰向けに倒れてしまった。

『大丈夫ですかヒノケン様!』『大丈夫かアツキ!』

慌てて主に駆け寄るファイアマンとバーナーマン。
どちらが先に地に付いたとか、そんな場合ではない。
心配そうに主の様子を―――

「ふ…わっはっはっは!」
『…ヒ、ヒノケン様?』
「あー、チクショウ!この勝負引き分けだな小僧!」
「あっはっはっはっ!スっかたなぇべなオッサン!」
『…ア、アツキ?』

転んで雪の上に大の字に寝たまま。
悔しそうな旨の言い方はしているが、それ以上に何故か清々しいくらい笑っている主に。
ファイアマンとバーナーマンは、先程までのやり取りと投げ合いからの爆笑が意味不明で。
ただ、呆然と主を見守っていたが。
愉快そうに笑む主を見ていると、次第にそんな何故だとかがどうでもいい事に思えてきて。
同じタイミングで顔を上げたファイアマンとバーナーマンは目が合い、主達ほどではないが―――成る程、二人にも自然と笑みが浮かべられた。

「いやー、こんな雪の上に寝っ転がるとか久々だぜ」
『……気持ち良さそうですが風邪を引いてしまうから、そろそろ起きて下さいヒノケン様』
「へっへっ、分かった分かった…よっと!」
『ああもうっ、全身雪まみれで…』

ファイアマンに促されて立ち上がったヒノケン。
しかし雪まみれになっている事を気にしていない様子に、少々呆れを含ませながらもファイアマンは甲斐甲斐しくヒノケンに付いた雪を払う。

『アツキも、そろそろ起きようぜ』
「ン〜…別にイイでねぇか、天気が良い中で雪の上サ寝っ転がるンは格段に気持ち良いべ」
『…あのオッサンの事だから、先に起き上がった俺の方が勝ちだ!とか言い出しちまうぞ』
「…言いそうなこっただな、ンで…よいせっと!」

バーナーマンもアツキを促し起こす。
パタパタと適当に雪を払って、自分で見えない箇所はバーナーマンに払い落としてもらい。
ヒノケンとファイアマンに近付く。

「今回は引き分けにしといてやるだけだからな」
「なンね、その台詞はオラが言う台詞だべオッサン」
『ヴォオオオンッ!ヴォウーッ!』
『…あ〜…やっと雪合戦が終わったのかよオヤジ…』

アツキ達が近付くのと時を同じくして、フレイムマンも勢い良くヒノケンの元に駆け寄り。
その後に、やたらと疲れた様子のヒートマンが。

「…そういやヒートマンとフレイムマンは、俺達が雪合戦やってる間、何してたんだ?」
『アレを作ってたぜ…』
「…うおっ、マジかよスゲエ雪だるまじゃねぇか」
『フレイムが作った胴体に合わせるとなると、頭も相当デカイのを作らなきゃならなくなってよ…作ったら作ったで、乗せるのがまた一苦労っつうか…』
『ヴォウヴォウッ!』

ヒートマンが示した「アレ」に全員が目を向けると。
そこには平坦な運動場では異彩を放つ程の、大きな大きな雪だるまが陽光の中に鎮座し。
完成した雪だるまを見てもらえてフレイムマンはとても満足そうにしているが、ヒートマンにとってはかなり負担の掛かる作業になってしまったらしい。

『頭を乗せんのに、腰…?腰に相当キた…』
『何で疑問形なんだ』
『兄貴は電脳世界でも人型だから擬人化プログラムを使っても感覚が共通かもしれねぇが、物質型の俺には脚だの腰だのの感覚は変な感じなんだっつうの』
「…まあ、大変だったみてぇだが、フレイムマンの面倒を見てくれて助かるぜヒートマン」
『…俺も楽しかったから、別に大変じゃねぇよ』

「弟」が元気で居てくれている。
それで良いのだと、笑顔を見せるヒートマン。

「へっへっ…さてと、流石にそろそろ校舎に入って見回りやらを終わらせちまうとするか」
「そういえば、見回りに学園サ来たンだったべな」
「休校中だって監視カメラは動いてるんだから、そんな見回りとか要らねぇと思うけどな」
「……ン?え、オッサン」
「何だよ」
「監視カメラって、運動場も撮ってるンでねぇか?」

『えっ』『えっ』『えっ』『ヴォ?』

アツキの発言に、一人は意味を理解していなそうだがナビ全員が一斉にアツキの方を向く。
もしそうだとすると、一連の雪遊びがバッチリと。

「なーに、抜かり無ぇよ。運動場のカメラは外に設置してあるから先に切っておいたぜ、今からカメラの映像データをちょいと編集すりゃ俺達は映ってねぇよ」
『流石ですヒノケン様』

何時の間にそんな事をしていたのか。
得意気に話すヒノケンに賛辞を送るファイアマン。
いい大人が雪合戦の為にそこまでするかという気がするが、本人は気を良くして自慢顔。

「いやでもオッサン」
「ンだよ、まだ何かあんのか?」
「オラ達は映らねぇかもスれねっけど、雪合戦の跡はまだスも…あのバカでっかい雪だるまが急に現れた映像になッツまうンでねぇの?」

……

「…学園の七不思議みてぇな話題になるんじゃね?」
「適当だなやオッサン…」

呆れるアツキだが、ヒートマンとフレイムマンが折角、作った雪だるまを崩すのも咎め。
結局はヒノケンの編集に任せる事にし。
二人の主とナビ達は、漸く校舎内へと足を進めた。


―――…


「あれ、早いっスねマッハ先生」
「ヒノケン先生こそ。私はこれから始業式の準備があるのですが、その前に冬休みの間に何か異変がなかったか学園の録画データを見に早く来たんですよ」
「相変わらず熱心っスねぇ」

冬休みが終わり、始業式の日。
かなり早くに学園へと向かったヒノケンは、職員室にはまだ誰も居ないものと思っていたが…中に入るとマッハ先生が先客として既に室内に居た。

「ヒノケン先生は、何故こんな早くに?」
「俺は冬休みの間に進めた研究データを、学園のパソコンにも反映させておく為っスね」
「ハハハ!それなら先生も随分な研究熱心だ」
「いやー、そっスかねぇ」

マッハ先生と軽い挨拶程度の会話を交わし。
そのままヒノケンは自分の第一研究室へ―――

「あ、すみませんがヒノケン先生」
「はい?何っスかね」
「…ちょっと見ていただきたい映像があるんですよ」

"雪だるまっスか?"

と、危うく言い掛けたのを飲み込み。
しかし恐らく、突如として運動場に現れる雪だるまの事を見せられるに違いないと察したヒノケンは平静を装い、しらばっくれる準備を整える。

「…コレなんですが…」
「……あっ」

運動場に向けた監視カメラは確かに切っていた。
だが、才葉学園の事で忘れていた事がひとつ。

(…警備ロボットのヤツ…録画してやがった)

マッハ先生が開いた映像データはロボPCの電脳内に有るデータ、という事は監視カメラのモノではなく、才葉学園の警備ロボットが撮った映像。
そこにはバッチリと、ヒノケン達の雪遊びが録画され。
しかし警備ロボットならば、何か不審な出来事が学園内で起これば直接急行してくる筈。
だが学園の教師であり生徒であり、そのナビであると認証が出来た為に不審人物という判断は下せず、混乱した警備ロボットは取り敢えず様子を録画し。
後の判断を仰ぐという処理に至った模様。

「見回りはキチンとして頂いたので良いのですが」
「あ、ハイ」
「長期の休みの時は、特別開放日以外は生徒が運動場を使用する事は禁止している訳で、なのにコレを生徒に見られたら示しがつかないと言いますか」
「えっと、確かにそっスね、反省してるっス」

という事は監視カメラを細工したのもバレている筈。
これはマッハ先生からの注意だけでは済まないかもしれないなと、観念した様子だったが。
意外にも。

「…では、私はそろそろ始業式の準備に体育館へ行ってきますので。この録画データはヒノケン先生自身で削除しておいて下さい」
「……良いんっスか?」
「ワハハハ!随分と楽しそうに雪遊びをされていたみたいですからな、見ていたら私も加わりたくなりましたよ。だから今回だけは目を瞑ります。ただし!今回だけですからね先生」
「…恩に着るっス、マッハ先生」
「それでは、また後で」

職員室を出ていくマッハ先生。
残されたのはヒノケンと、再生を続ける録画データ。
職員室内でも一際大きなモニターからは、あの初雪の日の雪遊びが鮮明に撮られており。
校舎内からの録画の為、音声は大きくないが…それでも充分に楽しむ様子が伝わってくる。
そう、楽しむ―――アツキ達も、己のナビ達も。


何よりも、自分自身がココロから。


「……削除、か」

カタ…カタカタッ、カタ…タンッ…

"録画データの転送…実行"

"…準備完了、保存先?"

"PET接続確認、データ転送開始………"

"100%、complete!!"

「ま、削除には違いねぇ」

ロボPCの電脳内に保存されていた録画データが、転送により"削除"されているのを確認し。
転送先である自分のPETへ目を向けて。

『……ガッチリ、保管しておくぜオヤジ』
「へっ…そうしてくれ、ヒートマン」

図らずも残った初雪の思い出。
どれだけ燃やしても、溶かし焦がせぬ大切な記憶。

■END■

初雪に興味がないフリをしていた癖に、10分後には雪合戦を始めているヒノアツ
#shindanmaker
https://shindanmaker.com/687454

沢山雪が降ったので大の字に寝っ転がってみるヒノアツ
#なんとなく可愛い #shindanmaker
https://shindanmaker.com/937109

◆偶にはウェザーくん本人を出す(準レギュ状態)
最初は上の結果を見て、ああーEXE4のバーナー組シナリオみたいなアホ喧嘩をしながら本気で雪合戦をやっているヒノケンvsアツキとファイアマンvsバーナーマンを書きたいな!
って思いつつ、その後に下の結果も出て、相討ちで大の字に寝っ転がって爆笑するヒノアツまで書きたいなナーとまで去年の内に考えたのですが。
他に話としての肉付け部分が全然浮かばなくて、お蔵のネタになりそうだったんですけど…
年明け早々に、そういやウチのフレイムマンって復旧&再起動後は人語での意志疎通の表現は無しにしている事を何処にも記載していなくね??と気付きまして。
設定やら一部お話で説明の足りなかったトコロにこの点の修正は入れたけれども、新しいお話で今のこの設定に対する考え方を説明したいかな、と。
そう思ったりしたので、丁度コレなら火野家とバーナー組の話として扱えそうだったから、次男三男のやり取りでお話に組み込んでみました(*´ω`*)
個人的にフレイムは…言語を有していないなら、有していないままそれでも今の火野家ならちゃんと解り合えているって方が良いなぁとか。
あと擬人化時のヒートって、脚があって走るのが変に感じそうみたいな小さいネタとか。
加えてヒノケンの研究がEXE6のエンディング後の世界で役に立つとしたら何だろう?ネットバトルは有るにせよ、犯罪からの自衛需要はカネアイのシステムで減ってるだろうし…
なんて事も考えていたので、バトル以外でってなると寒い国での需要なのかなぁとかとか。

そんな2021年の初小噺でした!
今年も火野家とバーナー組の面々を中心に、まったり書き書きしていきたいです(*´∀`*)

2021.01.10 了
clap!

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