【Rockman.EXE@】
火野さん家の元気な三男
ピーンポーン♪

「『オッサン、居るかー?』」

見事なハモりで火野家のチャイムを鳴らすのは、アツキとバーナーマン。
最も、ヒノケンが居ようが居まいが二人には基本的に関係が無く。
既に貰った合鍵で鍵を開け始めており、上がり込む気満々である。

ガチャ…

『ファイアマーン、居るかぁー?』

アツキより一足先に中へ入ったバーナーマンは、好敵手であるところのファイアマンの在宅を問う、と。

『ヴォ…』
『ん?』
「どスたべ?バーナーマン?」

中途半端な位置でバーナーマンが立ち止まっている為、アツキはまだ中に入れていない。
何故そんな事になっているのか、バーナーマンの背中に問い掛ける。

『いや、何か…変な声、が…!?』

後方のアツキへと振り向いたその時。
バーナーマンは、切れそうになる視界の端で…

素早く飛び掛かる物体を、捉えた。

『ヴォヴ―――ッ!!』
『ぎゃああぁぁああ!?!?』
「な、なンだべーっ!?」

びったぁーん!!!

『い、いかん!オイ、フレイム!客に何やって…る…って、何だお前等か』
『何だ、じゃねぇよファイアマン!何なんだコイツは―――ッ!?』

割烹着にオプションでスポンジという、恐らく風呂掃除の途中状態で現れたファイアマン。
それに向かって抗議するバーナーマンの身体の上には。
アツキとバーナーマンが初めて見る、擬人化プログラムを実行中のナビが乗っかっていた。

『ヴォウ、ヴォヴー♪』

あぐあぐ。

『俺の髪を噛むなああぁぁああ!!』
『ん…そうか、お前等…フレイムと会うのは初めてか』
「フレイム?」
『ああ、ウチの一番下だ』
「あのオッサン、三体もナビ持ってたンか。維持するの大変でねぇか?」
『ヒノケン様に掛かれば別に大変でもねぇよ』

あぎあぎ。

『ンな事より、コイツを離してくれーッ!いてぇ―――ッッ!!』
『ヴォヴー♪』
「最近、出来たナビなンか?」
『…いや、前から居たんだが…』

少しファイアマンは間を置く。
話すべきか否か、決めかねている様子。

『……色々、あってな……最近、やっとデータが復旧して再起動が出来た』
「復旧…?…ふーン…」

ファイアマンの選択は…「否」という事になるのだろう。
しかし、ファイアマンの言い様が普通ではない事はアツキもすぐに気が付いた。
普段は、立ち入った事にも首を突っ込む様な性格のアツキでも…それが憚られる様な。

そんな空気を感じたから。
だから。

深い詮索をアツキはしなかった。
「復旧」という台詞だけで大体の察しは付く。
そして、正確に言えば「復旧」という言葉は多分…正しくない。
敢えてファイアマンは、そう言っている。

「元通り」、かもしれない。

でも、きっと。


そうだ―――「デリート」という時間が、存在している。


それも普通じゃない。
限りなく無に近しいまでの。


「オリジナル」を、どこまで取り戻せているのか。
そこに立ち入る程にまでアツキは無神経でもない。


『話してねぇで、マジで助けろってー!!』

少し、重くなった空気の中で。
一人それどころではないのがそういえば居た。

『ヴォウ…』

がじがじ。

『噛むんじゃねぇっつうの―――!!』
「…普通に、喋れないンか?」
『元々、そういう奴だからな…擬人化プログラムを実行しても、それは変わらん』
「何言ってるか、分かるンか?」
『以前は人語翻訳プログラムを使ったりしていたが…それだとプログラムが勝手に変換するだけで、本当にフレイムの言葉なのか分からねぇから今は使ってねぇ。…だが』
「?…なンだべな」

今度の間は、少し違う。
ファイアマンは腕を組み直して、続きを話す。

『…まぁ、何となくだが…解るモンだ』
「ははは、そーゆーモンなンだべな…兄弟っちゅうンは!」
『…フン…』
『だーかーらー!ちょっとイイ話なのは結構だけどよ!俺を助けてからにしろおおおお!!』

未だフレイムマンに懐かれている(?)バーナーマンに。
多少なりとも、いい気味だという気持ちからファイアマンは放っておいたが。
そろそろ、解放してやってもいいかと。
フレイムマンを呼び寄せようとした。

『大体、割烹着でカッコつけてんじゃねーよ!!バアアァァアアカ!!!』


ぴきっ。


『……フレイム』
『ヴォ?』
『噛んでいいぞ』
『ヴォーヴ♪ヴォヴッ!!』

がぶがぶ。

『いでぇえええ―――ッ!ファイアマンてめぇ―――ッッ!!助けてくれアツキいぃいい!!!』

一言多かった。
最早こうなってはアツキに助けてもらうしかない。
のだが。

「いいでねかバーナーマン、何だかめんこい奴だべ」

なでくりなでくり。

『ヴォウ?ヴォ〜〜〜♪』
『ア、アツキぃ〜〜〜…』

いかん、そうだった。
アツキは、このテの元気がいい動物系を目の前にすると合わせてテンションが上がるようなタイプだった…
どうも、フレイムマンの事がそういった方向で気に入ったらしい。
それを察したバーナーマンは、若干遠い目になっている。

『さて、と』

ドレスアップチップを解除し、いつもの外装に戻るファイアマン。
風呂掃除は終わり際だった模様。

『俺は、そろそろ晩飯の買い物に行って来るからよ』
「肉頼むべー!ファイアマン!」
『…食ってくのか…いいけどよ、少しは遠慮っつぅモンを…』
『ヴォウ!ヴォウ〜♪』
「フレイムマンも、肉がいいっちゅーてるべ?」
『ヴォ〜♪』
『あいででででででで!!』

アツキの台詞に同調する様にフレイムマンは嬉々として腕をぶんぶん振っているのだが。
その振り下ろした拳の先には、バーナーマンが居たりする。

『…分かった分かった、んじゃ行って来るからフレイムの事を頼んだぞ』
『ちょっと待てええぇぇええ!連れて行かねぇのかよ!?』
『ハッハッハ、別に構わんだろう…フレイムはお前が気に入った様だし』
『ンなこと言われても嬉しくねぇよバカヤロ―――ッ!!』
『じゃ、仲良くしてろよ』

ひょい、と。
ファイアマンは未だに玄関先でぶっ倒れているバーナーマンと、それに乗っかっているフレイムマンの脇をすり抜けて。
そしてバーナーマンの叫びを爽やかに、しかし黒いオーラを出しながらかわして、さっさと買い物に出掛けてしまった。

『待てやコラぁあああ!!テメェ!帰ってきたらぜってぇ泣かすからなー!!』
「まあまあ、とにかく中サ入るべ!バーナーマン!」

そういうアツキは、いつの間にか既に上がり込んでいる。

「ほれ、フレイムマン!こっちサ来るべ!!」
『ちょ、ちょっと待てアツキ!今コイツを呼んだらこの体勢だと…!』
『ヴォ!!』
『げほぉッ!!』

バーナーマンの腹を踏み台に、見事な跳躍と着地をするフレイムマン。

『てめぇえええ!!もう我慢ならねぇぞコンニャロ―――ッッ!!』

何だか、既に意気投合気味のアツキとフレイムマン。
そしてその二人の後を、やっとの事で起き上がり追い掛けるバーナーマンの三人はリビングへと消えていった。



数時間後…

『兄貴ーフレイムー、今帰ったぜ!』
「ん…小僧、来てんのか?」

科学省へ、これまでのリンクナビ状況やクロスシステム研究のレポートを提出しに出掛けていたヒノケンとヒートマン。
家へと帰ってきたそんな二人が、リビングで見たものは。

「『……何、やってんだ?』」

これでもかという程に錯乱したリビングの惨状に関して、烈火の如く怒るファイアマン、と。
正座で反省させられ中の三人だったそうな。

■END■

2021.01.05 加筆修正
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