【Rockman.EXE@】
出会いとプチプチ
あらすじ。
近所の野良猫がやたらと喧しかったので何事かと様子を見てみたら、果敢に野良猫に挑むも返り討ちにされたらしい、ボコボコで気絶している手のひらサイズのちっこいのが居た。
仕方がないので野良猫を追い払って介抱してやったら、目が覚めたちっこいのはキョロキョロ辺りを見回した後、じーっとこちらを見たかと思えば此処に住んでやるとか言い出して。

「そげな訳で、ヨ・ロ・ス・ク!だべ!」
「勝手に決めるんじゃねぇよ!……そもそも、お前の正体は一体何だってんだ?チビ小僧」
「座敷童子みてなモンだ、多分!」
「多分かよ、つうか絶対に違うだろお前」
「まーまーオッサン、オラを置いとけばきっとイイ事が有るだ!オラ、アツキっちゅうだ」
「誰がオッサンだ!誰が!…ったく…しょうがねぇ」

生意気具合は身体以上。
よく分からないが、しかし気に入られたらしい。
ヒノケンの。
ちっこくて喧しいアツキと暮らす日々が始まった。
あらすじ終わり。

───…

「何スとるだ?オッサン」
「だからオッサンじゃねぇよ小僧。…届いた荷物の中に入っていた、梱包材を除けてんだ」
「こんぽーざい?」
「コイツだ。…プチプチって言やぁ良いのか?」

あるヒノケンが休みの日の午後。
頼んでいた荷物が届き、中身を開けて内容に間違いが無い事を確認すると、段ボール箱を畳んだり梱包材の分別をしていたところにアツキがちまちま近付いて来て。
丁度、手にしていたのはエアパッキンやエアキャップと呼ばれる気泡入りの大きなシート。
…なのだが、アツキに説明するなら"プチプチ"か。

「ふーン…ホントだ、プチプチだなや」

直感的な見た目通りの名称に、アツキは納得。
そして何やら目を輝かせており、興味津々の様子。

「…どうせゴミに出すだけだから、コイツで遊びたいってんなら好きに遊んで構わねぇぞ」
「え、ホントだか!よース、プチプチやるだ!」

ヒノケンがアツキの前にシートを広げてやると、アツキは表情をぱぁっと明るくしてプチプチの上にジャンプし、ぽすんと気泡の上にキレイな着地。
その様子を見てヒノケンは思ったのだが、今回のプチプチは通常の規格よりも気泡のサイズが大きいタイプ、ちっこいアツキにしてみれば乗って跳ねて遊ぶという事も出来そうな為。
遊びたいなら遊べとヒノケンは言ってみたものの、プチプチするという事がちゃんと分かっているのか見守ったところ、"潰す"のだとは理解しているらしく。
嬉々として目の前の気泡を両手で押し始めた…が。

ぎゅっ、ぎゅっ…
…ぎゅう…ぎゅうぅ…

「う…ぅ…」
「(…案の定、潰せねぇのか…)」

ちっこいアツキなりに精一杯。
両手を使って懸命に潰そうと押しているのだけれど、残念ながら気泡が割れる気配は無く虚しく押し返されてしまい、アツキからは悔しそうな呻き声が漏れ聞こえ。
これはコレで眺めていて非力な可愛いモノを見る気持ちにもなるが、あまりに一生懸命ぎゅっぎゅっと押す姿は、手を貸してやろうかとも思えてきて。
ヒノケンが軽く背中を押してやろうか等と考え始め、いたたまれなさの方が僅かに上回ってアツキから目を逸らした───瞬間。

プチンッ!

「ぅわッぷ!」
「!…おお、潰せたじゃねぇか。やるな」

アツキの目の前の気泡が弾け潰れた。
それが何故「やるな」なのか、言ったヒノケンにもよく分からない感情だが、とにかく懸命さが実った事への純粋な称賛が出たといったところか。
ヒノケンの賛辞にアツキは潰れた部分をぺそぺそ追い打ちを掛けるように叩き、誇らしげ。

「へへン、こげなのコツを掴めば簡単だべ」

そう言って得意満面なアツキ。
どう見ても全く簡単そうではなかったけれど。
ここはアツキの顔を立ててやろう。

「コツねぇ、ならもう一回やって見せてくれよ」
「おっ、よーっく見とくだオッサン」

ヒノケンからのアンコールを素直に受け、アツキは潰れた気泡の隣の気泡に両手を添える。
さて、割った瞬間を見ていなかった訳だがコツとは。

ぎゅ……かぷっ

「……は?」

かみっ…ギギ……プッチン!

「どわッぷ!」
「(…割れた瞬間にやたら変な声を上げてるとは思ったが、手で割れねぇから噛みちぎってたのかよ、そりゃ割れた反動で声が出る筈だぜ)」

アツキがどうやってプチプチを成し遂げたのか。
その方法を理解したヒノケンは呆れ混じりだけれど、当のアツキはやはり満足そうな様子。
確かに、アツキが満足なら良いのかもしれない…が。

「どうだべオッサン!ちゃんと割れたべ?」
「…まぁ確かにな。…だが、あんまりソレやるな」
「な、なスて!オラのやり方にケチ付けるンか!」

プチプチのやり方として間違っている、という事。
それもあるけれど。

「ちっこいお前がビニールを飲み込んだら危ねぇって話だ。…心配してやってんだよ一応」
「え……あぅッ」

ツン、とヒノケンはアツキのオデコを指先でつつく。
あくまで優しくではあるが、キチンと注意を促す気持ちも込められていて。それでいて、自分の事を心配してくれている気持ちも含む指先。
はじめは不満そうだったアツキも、ヒノケンが伝えたい事をちゃんと理解が出来たのか。
オデコをさすさすしながら…小さな声だけれども。

「ン…解っただ」

こくん、と頷くアツキ。
大きさが違い過ぎて指切りげんまんは出来ないけれど、ちっこくても約束は守れるから。

───それから暫く、プチプチは置かれたまま。
ヒノケンが家に居ない時に、両手でプチプチを潰す特訓をするアツキの姿があったそうな。

(ただし、すぐ飽きて気泡に寝転びゴロゴロしがち)

■END■

・ちっこいあいつ
https://odaibako.net/gacha/7226

38. アツキは梱包材のプチプチに興味津々。潰して遊ぶのかと見ていると、案の定両手でぎゅっぎゅと押しているが潰れる様子はない。プチプチも潰せないんだ……最終的に噛みちぎっていた。それでいいのか?

◆お題ガチャを色々やっていたら、手乗りサイズになっちゃった系にアツキで結果を見るのが楽しいし可愛いしで…ちっ恋アツキなお話を開始しちゃいました。
こちらは基本的に小ネタ短文のみだと思います。
それにしても手乗りアツキ…可愛いな〜(*´∀`*)

2022.07.01 了
clap!

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