【Rockman.EXE@】
重ね求める理由は互いの炎
「…ん〜、やっぱりクロスシステムから応用していくってのは無しだな」
「駄目なンか?このシステムも一応、どんなナビでも炎が使えるようにはなるンだべ?」
「クロスシステムの考え方じゃ、俺が目指す汎用性には乏しくて駄目だ」

今、ヒノケンの家の研究用パソコンが表示しているのはヒートクロスの詳細な情報。
その表示を見詰めて自身の研究がまだまだ始まったばかりである事を痛感するヒノケンの隣にはアツキが居て、同じく真剣に画面を見詰めている。
炎ナビの研究助手という形でヒノケンはアツキを才葉シティに申請して学園の高等部に通わせており、時間が合う時はこうして日々の研究に関わらせていた。

「根っこの考え方はイイんだけどよ」

才葉シティが研究しているクロスシステムは、他のナビが持つ能力をクロスという形で纏い扱う事が可能なシステムであり、ヒノケンが目指す研究と似通うモノで。
しかし、確かに炎ナビの力を他のナビも使えるようになるシステムではあるが、授業を通して合格した者に限るという点で基本はハイレベルなバトラーに限定されてしまう。
ヒノケンが目指すのは、もっと広く誰もが炎のチカラを扱えるシステム。
二人が初めて出会った時の主張を考えると、意識は大きく「変わった」。
自分以外の炎ナビと、そのオペレーターの事を決して認めない思考だったのに、今は炎のチカラを誰しもが扱えるようにしたいと望んで研究に携わっているのだから。

「結果自体は同ズでも、使用可能範囲を拡げるとなると全く別のシステムを組ンでいかねばならねっちゅう事か…白紙みてなモンだなオッサン」
「ンなホイホイ出来ると思っちゃねぇよ。それに他人のシステムを応用ってのも気に入らねぇしな、どうせ完成させるんなら俺が1から組んだシステムだ」
「オッサン、オラも手伝っとるンだから一人の手柄にスるでねぇべ」

助手の話を受けて才葉に向かう事を決めたアツキも、同様に「変わった」。
お互いが「自分以外」を、表面には全く出さないが暗に「認めた」からこそ。
そう「変わった」のだ。
アツキの方は都会暮らしをしたい想いも少なからず抱いていたので、ヒノケンの話に乗っただけという意識の方が強い為、「変わった」意識は薄いけれども。

「小僧の手伝いなんざ、無いのと同じだっつうの。…ま、俺のシステムが完成した時は隅に小僧の名前を添えてやってもいいけどよ。小さくな」
「ったく、心の狭いオッサンだなや」
「俺の研究なんだから当然だ。…取り敢えず今日のところはここいらで終いにするか、研究データの保存と管理を頼むぜファイアマン」
『了解ですヒノケン様。…突っ立って見てねぇで、お前も手伝いやがれバーナーマン』
『はあ?何で俺もやらなきゃいけねーんだよ』

研究用のパソコン内には、ヒノケンのナビ全員とアツキのバーナーマンがプラグインしてデータの表示や処理を行い、彼等も電脳世界での炎研究に従事しており。
今日はここまでと言うヒノケンにパソコン内のデータ管理を任されたファイアマンは素直に従うが、そのファイアマンに指示されたバーナーマンは不服顔。

『未熟だろうとヒノケン様の助手のナビなら進んで手伝うのが当たり前だろうが、何よりもヒノケン様の研究データを扱わせて貰えるんだから光栄に思え』
『ンだとぉ?誰が未熟だってんだ、ケンカ売ってんのかよファイアマン』
『おっと…大事な研究データごと燃やそうとする奴なんて、そもそも助手でも何でもねぇな。才葉に居させてやる話が、お前のせいで無しになるかもな』
『…ちぇっ、分かったぜ。アツキに迷惑を掛けるってのはイヤだからな』

渋々ではあるが、バーナーマンもパソコン内の研究データの整理を始め。
ファイアマンもテキパキと、ヒノケンが後で見直し易い形でデータを保存していく。

『ヒノケン様、この辺りの資料データも片付けて構いませんか?』
「そこらのデータは重要なモンじゃねぇから後回しでも…いや、おいフレイムマン」
『…ヴォッ?ヴォヴォ?』
「お前が片付けてみな、ファイアマンの真似をすりゃいい。解るか?」
『……ヴォウ……ヴォヴッ!』

急に自分の事を呼ばれてしまい、理解をするのに暫し間があったフレイムマンだが。
噛み砕いてヒノケンの命令に対する理解を進めると、見よう見真似でファイアマンがそうしているのと同じくデータの整理を拙いながら始めて。
元々の知性を考えると、フレイムマンを研究用のパソコンにプラグインさせても火力以外の点では意味が無いのかもしれない。
実際に先程までの研究に費やしていた時間の間、フレイムマンはその内容を不思議そうに見詰めているのみで、およそ理解しているとは見えず。
だが―――それでも、ヒノケンはフレイムマンを自身の研究の場に居させている。
フレイムマンを「そう創った」のは自分自身。
ならば「そう創った」責任を背負い、「そう創った」ままに少しずつでも。
普通のナビと同じ事が出来るようにする為に、例え理解が及ばずともナビの本分である場所に居させ、出来そうな事は積極的にやらせていくのが今の常になっていた。

「あ〜…それにスても、ちっと詰め込み過ぎだべオッサン」
「これでもお前に合わせてやってんだ、文句言うな」

クロスシステムからの応用で自分達が望むシステムが構築可能なのか。
今日はそこから研究を開始し、かなり集中して解析等を行った訳だが。
結果的には空振りに終わったと言わざるを得なく、アツキは集中した時間の反動に加えて成果無しの落胆を加えさせ、ドッと疲れが出たらしい。
ヒノケンの方は、この結果も想定したもので。
アツキ程の落胆等は見受けられないが…一服は必要。

シュカッ…

「…オッサン、オラの健康に配慮スて電子タバコにスっとか無いンか?」
「あんなモン吸った気にもならねぇ。つうか学園じゃ全く吸ってねぇんだから、俺の家でくらい愛用のライターで好きに煙草を吸わせろっての」
「ンっとに古臭いオッサンだべな」
「うるせぇよ。……ヒートマン、部屋の空気清浄機をオンにしてくれ」
『了解だぜオヤジ!』

返事をした、手の空いていたヒートマンの様子は何処か嬉しげに見える。
ヒノケンが手にしている愛用のオイルライターが、自身のモチーフだからだろう。
愛用しているモノと重ねてくれたのだ、使う姿を見れば我が事の様に感じ取れて。
そんなヒートマンの気持ちを汲み取るとアツキも愛煙家を止めさせるのは咎め、一応ヒノケンが配慮を見せた事もあって煙草に関してそれ以上は言及しなかった。

『…データ整理が終わりましたヒノケン様』
『はあ、疲れたぜ。アツキの為なら仕方がねぇけど、このテの作業は向いてねぇ』
『ヴォヴォウ!』
「御苦労さん、それじゃお前らも休憩しな」
「戻ってくるべ、バーナーマン!」

丁度、煙草をひとしきり吸い終えたところでナビ達の作業も終了を迎え。
整理された内容を軽く確認すると、ヒノケンとアツキは各々のPETにプラグアウトさせて終了処理を施し、長時間の研究作業からナビを休ませる。

「オラも疲れたな…脳ミソ使ったから甘いモンとか食べたいべオッサン」
「ンなモン無ぇよ。…と言いてぇが有るぞ、偶々な」
「えっ、ホントだべか?」
「ちょっと待ってろ」

正直なところ、アツキは言ってはみたが甘味の類いが有るとは思わず。
ヒノケンの返事に意外そうな顔をして、部屋を出ていく背中を見送ると。
恐らく冷蔵庫で保管していたであろう箱を持ち、すぐにヒノケンは戻ってきた。

「才葉じゃ有名なシュークリームの店で、コレが一番人気だとよ」
「…シュークリーム?オッサン、こういうの好んで食べたりスたっけ?」
「甘ぇのは得意じゃねぇよ。…ただ、学園の他の教員から此処のは美味いとか力説されたんで、後で話合わせにな。職場の付き合いってこった」
「ふーん…」

(…偶々なンかな本当に。用意とか…まさか)

真偽のほどは不明だが。
とにかくアツキの目の前にはシュークリームが入った箱が置かれ。

「…貰っていいンか?」
「お前が甘いモンはねぇのかって聞いてきたから持ってきたんだろ、何なら味の感想を聞かせろ、ソレをそのまま伝える事にするからよ」
「いやオッサン、流石にどうかと思うけンとも…まあいいべ、そンじゃ」

アツキは箱に手を伸ばし、封を切って開ければ綺麗に並ぶ黄金色の姿。
見たところ、一つ辺りのサイズはかなり大柄。
店名の入った洒落たワックスペーパーを使って取り出してみると、重量感もなかなか。

「美味そうだなや、どれどれ…っと」
「…そうだ、ソイツ普通よりもクリームが多くて皮が柔らかいから気を付けて…」
「どわっぷ?!」

ブシュウッ!
…ボタボタッ…ボタタッ…

ヒノケンの注意は少しばかり、遅く。
アツキはシュークリームから見事にクリームを暴発させて、口やら指やら服やらに飛び散らかし。
掴んだままの皮からは、大半のクリームが失せる。

「……はあ、何だクリームプレイがお望みかよ」
「ンな訳ねぇべ!…勿体無いけンど洗うスかねぇな…」

手に残っている、寂しいクリーム量のシュー部分をはぐはぐと食べきり。
改めて飛び散ったクリームの惨状をアツキは見直すも、風呂と洗濯は免れない。
しかし洗うにしても零れ散らかした量が量、下手に立ち上がっては床にも被害が及びそうで。
ヒノケンにタオルか何か、とにかく拭き取る物を持ってきてもらおうと。

……ペロ…ッ……

「勿体無い…か。だよな確かに勿体無いよな?」
「な、何をスてるべオッサン!」
「どうせ洗うんだからイイだろ」

クリームを暴発させた直後、アツキが僅かな時間だけ窺ったヒノケンの表情は呆れ顔。
だが、そこから目を離して零れたクリームに意識を向け。
何処からどう処理したものやら、あぐねていたところで不意に手を取られると、指に飛び散り零れた…甘く、濃厚なクリームを舐め取られ。
窺い直した今のヒノケンの表情に呆れは無い。
口角を上げて笑む―――まるで補食者。

「…オッサンそんなに甘いの好きでねぇべ、無理スるでねぇ」
「甘ったりいが…お前を喰ってるんだと思えば、そんな苦じゃねぇな。こんなカタチでお前と…お前ン中の炎を味わってみるのも、悪くはねぇぜ」

…「変わっていない」事もある。
炎そのものへの執着は二人とも「変わっていない」。
揺らめく炎が、焔が、触れる事の出来る姿を持って自分の前に現れた。
だから求めるのは、至極当然。

「つっても甘ぇなオイ、本当に人気なのかよ?」
「オラには美味かったべ」
「ふーん…じゃあ、もう少し味見するか」
「……っ……」

…れろ…っ…

舐め取る先を、指からアツキの口唇に変え。
クリームと口唇を味わう様、じっくりと堪能し。
それでも、まだまだ足りないと餓えるヒノケンの舌は徐々に顎から首へ。

「そ、げなトコロには零れて…」
「さあてな。零れていようがいまいが、もうどうだって構わねぇだろ」
「く…ぅ…オッサン、跡とか付けるでねぇ…っ!」

ぢゅうっと、わざとらしく音を立ててアツキの首を吸い上げた箇所にクリームは無い。
クリームはただの口実。
何時だって真に求めてやまないのは―――炎。

「そろそろ解れよ、お前の炎は俺のモノだ。だから…お前自身も、俺のモノなんだよ」

低く、そう囁き告げて。
ヒノケンはアツキの首に跡を増やす。
首への口付けは、執着。

ぢゅう、うッ…

「ンん…っ…!」
「…へっへっへ…ちっとは理解したか?」
「…スる、訳ねぇべ…!」
「ったく強情な小僧だな、まあ…解らせ甲斐があるってモンだけどな」

アツキの首から口唇を離すと、にぃっとヒノケンの口角が愉快そうに釣り上がる。
漸く巡り会えた自分の執着心を満たせる存在。
呆気なく手に入ってしまうのも―――味気無い。
そんなヒノケンの笑みに対し、アツキは黙ったまま反抗する眼差しを向けていたが。
ある瞬間を境に、への字に曲げていたアツキの口角も…ゆるりと上がり。
おもむろに口を開く。

「…オッサンは…オラを自分のモノにスとると思っとるかもスれンけど、実際のところはオッサンが…オラのモノになってるだけだかンな」
「…ぁあ?何だと?」
「オッサンが"そう"思い続ける限り、オッサンはオラから離れられねぇべ?」
「……小僧、オメエ……」
「だからオッサンの炎もオッサン自身も、オラのだ」

アツキが上目にヒノケンの表情を窺うと。
余裕は崩さずにいるが…どこか「してやられた」風の笑みに変わっていて。
にっ、とアツキは更に口角を上げ。
捕らえたココロに一番、近い場所。
ヒノケンの胸元に口唇を寄せて、静かなキスを。
胸への口付けは、所有。

「…へっへっ…言うじゃねぇか」
「炎はオッサンだけのモンでねぇ。ズッと、これからもオラのモンだ」
「聞き捨てならねぇ…が、そうでなけりゃ面白くねぇ。全くよぉアツキ…」


重ね求める理由は、炎への執着と所有。
互いのナカには炎が在ったから。
だから求め合うのは、当然で必然。
愛も恋も似合わない関係だけれども、互いが代わりの無い炎という存在。

(―――それでも、何時か)

互いが互いを自分だけのモノにする日を想い。
今はただ。
何故かクリームの様に、甘い甘い口付けを交わした。

■END■

◆今回の話で書きたかったのは3つ。
EXE6の時のヒノアツ自分設定は、ヒノケンがアツキを炎ナビの研究助手という形で才葉に呼んで高等部に通わせている、という事にしていますが。
どういう雰囲気で研究をしているのか書いた事が無かったので、それを。
ファイアマンとバーナーマンの絡みも少しですが書ける事になったし、フレイムマンも…こんな風になっていたら良いなあって思っていたのが入れられたかと。
ヒートマンは火野さん家の方でメインになりがちなので控えめに、でもオイルライターを愛用するヒノケンを見るのが嬉しい点は何時か書きたいと思っていました◎
2つ目は診断メーカー様の結果から。

シュークリームを食べると盛大にクリームを暴発させてしまうヒノアツ
#なんとなく可愛い #shindanmaker
https://shindanmaker.com/937109

本来は、この結果だけで短い話を書くつもりだったのですが…肉付けをしてみたら、書きたいと思っていた事の三点盛り合わせになったという(笑)
クリームを暴発させてるアツキ可愛い(*´ω`*)
そして3つ目がヒノアツの根幹みたいな、執着とか所有の想いですね。
「壊れた炎は、二つ」でエグゼ全盛当時に一応は触れて書いたのですが…あの話は当サイトの中でも、ちょっと毛色が違うし妙に長くなったので。
もう少し短く簡潔に、ヒノアツを成立させている双方の考えだとかを取り入れた話を書きたいなと思っていたから、それが漸く書けたかなと。
干支一回り以上前に書けよって本当(苦笑)

2020.07.01 了
clap!

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