【Rockman.EXE@】
いつか六月の花嫁と
◆ジューンブライドなヒノアツ♀
EXE4のシナリオ「ヒノケンの恋」について、タコ焼き屋のお姉さんとは結局どういう事だったのかなぁという自分の解釈を書いた部分(有)
ナビ達は気を遣ってお休みという事で



「やーっと晴れたス、こげなオープンエア?ちゅうンかな、青空の下で気持ち良く食事ば出来るレストランが見付かって良(い)がっただなオッサン」
「…おう。まあ…そうだけどよ」

漸く梅雨の晴れ間と重なった6月の休日。
輝くばかりの青空に誘われるように、ヒノケンとアツキは外でのデートへと出掛けていた。
お家デートも悪くはなかったが、特にアツキは雨続きの天気に相当フラストレーションが溜まっていたらしく、晴れと知るや「出掛けるだ!」とヒノケンを誘い。
そうして少し遠くの街に出てみたのだが、何かしら目的というのは設けている訳では無し。
適当に見て回る中で昼食をどうするかという話になったところで、オープンエアなバイキングレストランをアツキが見付け、ここが良いと中に入り。
新緑の輝く庭での食事に、アツキは満足げ。
…だが、ヒノケンは何か引っ掛かっている様子。

「どスただ?オッサン、気に入らねンか?」
「いや、飯は美味いしオープンエアも悪かねぇ。だから気に入らねぇとかじゃなくて…お前もしかして、此処が普通のバイキングレストランだと思ってんのか?」
「へ?ち、違うンか?」

やっぱりか、という表情のヒノケン。
それに対して理解していない顔のアツキ。
呆れるヒノケンは、ひとつの方向を指差す。

「そこの建物があるだろ」
「ン、何か白くてキレーな建物だなや」
「結婚式場だ、このバイキングはその式場が主催してるブライダルフェアだかイベントだかの一環で…こんな料理を出すってのを試しで提供してる場所なんだよ」
「…けっ…ぶ、ぶらいだるって…え、えっ?!」
「デカイ看板が有って、カップルしか入れねぇとか書いてたのに完全にスルーしてたのか。式場とは入り口が別で独立してたとはいえ、食い気に走り過ぎだろ」

お皿にガッツリ乗せた料理を食べていたアツキの手が、ヒノケンの説明でピタリと止まる。
自分達以外の客の事を見てみると。
確かに、カップルと思われる組み合わせばかり。
急な場違い感にアツキは襲われる。

「…ま、どうやらカップルには見られたから中に入れた訳だし、ジューンブライドだとかいう時期だからフェア内容もなかなか良さそうだ、これはコレで楽しめば良いんじゃねぇの」
「…オッサン…」
「どうせ他にアテがあって出てきた訳でも無ぇ、それに"そんな場所"だって分かってたら恥ずかしがって入らなかったろ。それとも、すぐに出るか?」
「…いンや、折角だから…ちゃンと楽スむだ!」
「へっへっ…そうそう、それでイイんだよ」

居心地を悪くし掛けたアツキだけれど。
特に動じた素振りを見せないヒノケンへの対抗心も無意識に混じらせ、前向きに返して。
ちょっとした…イベントへの参加だと思えば。

「あの、お食事中に失礼します。ウェディングドレスの試着には、もう行かれましたか?」
「わ、えっ?ドレス…?」
「ん…いや、まだだぜ」

会話をしていたヒノケンとアツキの席に、式場のスタッフであろう女性が訪れたかと思うと、フェアの1つであるウェディングドレス試着体験への参加は済んでいるかと話し出す。
ヒノケンは既に此処がどういった場所であるか理解していた為、先程からその女性が他の席のカップルに話し掛ける姿を見て大体の察しは付いていたらしく。
理解が追い付いていないアツキに代わって、まだ試着体験はしていない旨を女性に告げた。

「では宜しければPETに、試着体験への予約をお入れしますが…完全予約制ですので、指定時間内でしたら混雑せずにドレスを選んで試着する事が出来ますよ」
「ふーん、着てみたら良いじゃねぇかアツキ」
「だ、だけンとドレスとかオラ…」
「楽しむ気になったんだろ?折角なんだから、よ」
「…そ、そンなら…これ、PET…」
「では予約データを送らせていただきますね。男性の方も、スーツの試着が出来ますので」
「じゃあ俺のPETもか。…これで良いか?」

……PiPiPiPiPi!
"ヨヤク カンリョウ!"

「はい!予約完了しました、表示されている時間の内に式場の方へお越し下さい。案内は式場近くに大きく看板を出していますので、分かると思います」
「看板な、分かったぜ」
「分かっただ」

ヒノケンとアツキのPETに予約の完了表示が出たのを確認し、必要な案内を言い終えると。
女性はまだ声を掛けていないカップルの席へ。
残された二人は、同時にPETの画面を。

「…大体、1時間半後ってところだな」
「…そう…みてだなオッサン」
「バイキングの時間があと30分とかだよな、そこからゆっくり向かっても大丈夫そうか」
「ンだな…」
「…どうした?何か元気無ぇぞ」

この場に対して前向きになった筈なのに、アツキの声のトーンは明らかに低く下降気味。
PETの予約時間を見ながら固まってしまっている。

「やっぱス、その…色々急で…オ、オラがちゃンと、どういう場所なンか見とらンかったのが悪いっちゅうのは…そなンだけンと…ウェディングドレスって…何だか緊張スてきただ…」

ぽつりぽつりと、話し出すアツキ。
下降している主な原因が"緊張"という事であるなら、決して後ろ向きになった訳ではない。
ヒノケン、と。
漠然とした「何時か」が少しだけカタチになる。
料理ならすぐに楽しむ方向に切り替えられたが、ウェディングドレスという象徴にも等しい姿の自分になる事は…降って沸いた展開で受け止め切れないのだろう。
けれど決して、イヤだと滲ませては。

「…こんな言い方すんのは普通無ぇんだろうけどよ、もう数年は"本番"で着させてやれねぇだろうし。今日のところはコスプレくらいに思えよ。…今は、な」
「…ホンっトに言う事で無ぇだなオッサン」
「お前の緊張を解してやろうってンじゃねぇか」
「ンっとに…だけンと、今は…そだな」

ちょっと緊張が残って、ぎこちないけれど。
アツキは笑顔をヒノケンに向け。
迫るバイキングの終了時間、ガッツリお皿に乗せた料理の続きをヒノケンと共に再開した。

ーーー…

「あンれ、あスこで何か展示スとるだなや」
「だな。試着体験をやっているホールの外だから、予約が無しでも見れるヤツだろうな」
「ンで寄ってみるだ、まだ時間あンべ?」
「ああ」

バイキング形式の食事を終え。
試着体験の予約時間には早いが、一先ず場所の確認も兼ねて式場の近くまで行ってみると、スタッフの女性が言っていた通り案内の看板が立っており。
それを見るに、どうやら式場内では試着体験の他にもブライダルの催し物が行われているようで、試着体験以外ならば予約はほぼ必要が無いらしく。
ならばと式場内で二人は時間を潰す事にした。
と言っても、やはり予約時間の事があるので遠巻きに催し物の様子を見て、普段は来る機会があまり無い式場内を眺めながら歩き回るだけだったが。
とある一角の展示に、アツキが興味を示す。
そう広い展示スペースでは無いと見え、時間潰しとして丁度良さそうだと思ったのだろう。
了承したヒノケンと共にスペースへ立ち寄る。

「あ…指輪、の展示だっただか」

低めのショーケースに並んでいたのは数々の指輪。
リング部分のデザインや宝石のカット等、イメージし易い様に並べられ、惹き込まれる。

「ゆっくり御覧になって下さいね、こちらの…」
「ドレスの試着体験までの時間潰しに少し寄っただけなんで、そう長居は出来ねぇけどな」
「そうでしたか、ではお時間まで」

指輪を見始めたところで担当スタッフの女性に話し掛けられたが、長尺の説明を続けられそうな雰囲気を感じ取り、ヒノケンが長居はしないと割り込む。
女性も察したのか、直ぐに切り上げてヒノケンとアツキからは離れて別のカップルの元へ。

「あんまりグダグタ説明されてもよ」
「そだな。…にスても、婚約指輪や結婚指輪は…やっぱり、宝石はダイヤモンドなンかな」
「まあ大体はそうだろうな。……ん、こっちにダイヤ以外の宝石の指輪も有るみてぇだぞ」
「えっ、どれだべ?」

ショーケースの中の整列は美しいが、アツキにとってはダイヤモンドのみの並びは少々物足りないのだろうか、他の宝石も有るという言葉にすぐさま食い付き。
ヒノケンが示したショーケースを覗き込むと、ダイヤモンドより展示の種類は多くないが、美しい色彩を放つ宝石が用いられた指輪が並ぶ。

「わ、ホントだ。キレーだなや」
「アメロッパなどでは、ダイヤモンド以外の宝石で指輪を贈る事も珍しくありませんよ」
「へー、そうなンか…」

先程とは別のスタッフの女性に捕まったが。
深く説明等を行う気配は無かった為、ヒノケンは特に横槍は入れず興味津々で指輪を眺めるアツキの様子を傍で静観する事にした。
ヒノケンとしても、無垢過ぎるダイヤモンドの輝きよりも…華やかな指輪の方が好ましい。

「…お二人には、それぞれのイメージに合う宝石を使った指輪の方が、良さそうですね」
「イメージだか?」
「ダイヤモンド以外を選ぶ際にも人気の宝石です、ルビーとサファイアなど如何ですか?」

そう言って女性はにっこりと2つの指輪を。
赤の輝きのルビーと、青の輝きのサファイア。
それぞれが填められた指輪は偶々なのか並んでいて。
ヒノケンとアツキが並び立つ姿の様な。

「…こうして見っと、ホント正反対だべな」
「確かにな、だがルビーとサファイアってのは元々は同じ鉱石から出来てるんだよな?」
「え、そ、そうなンか?」
「はい、どちらもコランダムという石からですね。異なる元素の混入で赤色になった物がルビーと呼ばれ、青色になった物がサファイアと呼ばれていますが…元となる石は共通です」
「ふぅン…そうなンかぁ…」

赤い炎、青い炎。
正反対な様で本質は同じ。
そんな自分達にピッタリな気がする。

「…ンで。オッサンがルビーの指輪で、オラがサファイアの指輪を填める感じなンだなや」
「逆だろ」
「う、えっ、逆?」
「填めてる指輪を見た時に相手を思い出すんだから、俺がサファイアでお前がルビーだ」

サラッと言おうとしているけれど。
ちょっと恥ずかしいのか、アツキの顔は直視せずに逆だという根拠を説明するヒノケン。
説明を聞くアツキの方がヒノケンを凝視。

「……そっか、そうだべな」
「ふふ、全くその通りだと思います」
「…へっ」

ついでにスタッフの女性にも聞かれていて。
ヒノケンは少しだけ苦い笑み。

…PiPi、PiPi…

「おっと、予約の時間みたいだぜ」

はぐらかした風だがアラームは正確。
PETは予約時間を表示している。

「これから試着体験ですか?」
「ンだ。…うう、またちっと緊張スてきただ…」
「そんなに気負わないで良いんですよ、気に入ったドレスを選んで…パートナーさんにステキな笑顔を見せてあげて下さい。ただ、それで良いんです」
「…そンだけ…だか」
「ええ!」
「…へへ…そだった、な」
「…そいじゃ、そろそろ行くぜ」

緊張が蘇り掛けたアツキだが、スタッフの女性に気持ちを解してもらえて気が軽くなり。
ココロの準備も整った表情を見て、ヒノケンはアツキの手を取ってホールへと足を向けた。
見送るスタッフの女性は、「いってらっしゃい」と。
二人の背中に、幸があらん事を投げ掛けて。

ーーー…

「パートナーさんのお着替えは、まだ掛かりそうですよ。こちらで寛いでお待ち下さい」
「ん?……ああ。選ぶのを含めて俺よか時間が掛かるのは予想通りだ、適当に待ってるぜ」

試着体験が行われているホールに無事入り。
そこからドレスやスーツ選びをどうするかという話になったところで、二人でアレコレ見て回るのも良いが…一緒にではなく各々、離れて気に入ったモノを選び。
着替え終わった姿で初めて見せ合う事にした為。
先に着替えを済ませたヒノケンは一人、新緑の庭が臨める大きな窓の傍でアツキを待っていると、このホールの担当スタッフから暫し時間が掛かる旨を伝えられる。
様子の報告を頼んだ訳でもないのに、何故わざわざとスタッフの女性が離れてから思うが。
恐らく自身の赤髪など、すぐに印象と記憶に残る組み合わせだったので、着替えがまだ終わらなそうなアツキを見掛けつつヒノケンの傍を通ったから、だろう。
深く考えずとも良さそうだと結論付けると、近くには椅子もあるが座らず窓の外を臨む。

「(パートナー…か)」

先程から触れられている「関係性」。
オペレーターとネットナビの間柄をして、そう表現する場合もあるが…今、想うのは別で。
永遠を誓う伴侶に選んだ相手の事。
ヒノケンにとっては、少し前ならば考える事も無かった存在が、他者から見ても傍に居る。
どうして考える事も無かったか。

この世界を、終わらせてもいいと思っていたから。

何時の頃からだっただろう。
世界の終わりが見たかった。
終わってしまって、構わなかった。

なのに、そんな人間だとも知らず「彼女」は。
気紛れの修理に対して、ただただ素直に感謝をして。
本当に真っ直ぐ、向けられた好意に。
まだ、自分の中には残っていたと気付いてしまった。

誰かに対して「死んでほしくない」と思うココローーー

とっくに無くしたと思っていたのに。
そのココロを「彼女」はヒノケンに気付かせた。
それを自覚が出来た時。
この世界は、終わらせていい存在ではなくなったのだ。

「(もしかしたら、選んだのは)」

既にテロを計画していた中での自覚。
出来た筈の事といえば、発火装置を仕掛けたデンサンドームの中へ「彼女」を近付けさせない事だったが…「彼女」はドーム内へ来てしまった。
純粋に、ヒノケンの応援の為に。
まだ、自覚を拒もうとしていたココロは完全に消え去り、「死んでほしくない」と真に願い。
「彼女」の想いに応えたミライもーーー或いは。

「(いや、だが)」

テロ計画が部下に元から裏切られるモノだったと理解し、筋違いもいとわず光熱斗に助力を頼み、一先ずの解決は迎える事が出来た時。
部下だった連中を追おうとしたヒノケンの前に現れた「彼女」はきっと、分かっていた筈だ。
この事件はヒノケンも関わっていたと。
それでも、「彼女」は想いを伝えようとしていた。


"待って!あ、あの…"

"あたしとタコ焼き屋やってくれませんか!?"

"あたし、ヒノケンさんのこと…"


けれど、ヒノケンはその想いに応える事を拒んだ。
今のまま応えてしまっていい人間ではないと、「彼女」の性質とは違い過ぎるのだと告げて。
しかしそれからのヒノケンは本当に変わり。
元部下達との事も含めてWWWとの決別を遂げ。
「この自分」ならば、そしてもし「彼女」がまだ…自分を想ってくれているのならば、迎えに。
…そう考えた事もあった…が。

「(やっぱり…違ったんだ)」

何故なら。

「(あのコの炎は。…優し過ぎた)」

柔らかに輝く浄化の炎。
ヒノケンが「今の」ヒノケンになる為に必要だった炎。
理不尽な恫喝に怯まぬ毅然とした強さも持っていた。
だが。
出会う事が出来、そして自分を変えてくれた事に礼を抱いてもいるが、生涯のパートナーとして選ぶには…どうあっても自分の持つ炎と対等ではなかった。
世界が終わっても構わないと思い始めた一端には、自分と同じだけの炎を秘めた存在が見付からない事への渇望や失望から生まれた自棄も混じっており。
たとえ「今の」ヒノケンになったとしても。
自身の根幹である炎は揺るがぬ総てであり、手に入れたいのは対等に燃える炎に他ならず。
それがーーー


"オラがバーナーマンのオペレーター、"

「(やっと、やっと…)」

"火村アツキだべ!"

「(見付けた)」

"ヨ・ロ・ス・ク!"


「ーーー…サン、オッサン!!」
「誰がオッサンだ!…って、着替え終わったのかよ」

過去を思い返していて全く気付いていなかったが。
大声で何時ものように呼ばれ、ヒノケンが声の主に目をやれば、そこには花嫁姿のアツキ。
純白のヴェールに、やはりというのか豪奢よりもシンプルで純朴さを全面に出したウェディングドレスを纏っているけれど、中身は変わらぬアツキだ。

「というか、こんな場所でまでオッサンいうなよ。本当にカップルなのかと思われんだろ」
「う…そ、そっかもスれねっけど…」

花嫁姿で照れるアツキの様はしおらしい。
ちょっと目線をずらして、一呼吸置いて。

「ンで…け…ケンイチ…その、お待たせ…だべ」
「…へっへっ。待ってたぜ…アツキ」

花嫁見習いの手を取り、傍に寄せるヒノケン。
ヴェールの中のアツキは少しドキリと慌てたけれど、すぐに応じるように笑顔を向ける。
嗚呼、とても。

「…なあ、ケンイチ」
「何だ?」
「さっき…一人で何を考えとっただ?…何だか…オラでねぇ誰かの事…だったンでねぇの?」

笑顔を見せるアツキだけれども。
先程までのヒノケンの黄昏た様子が普段とは違うと感じたのだろう、聞かなければ良い事かもしれない。しかし、聞かずにはいられなくて。

「…そんな事は無ぇよ。お前の事だ」
「ホントだか?」
「ああ、あのじゃじゃ馬がどんだけマシになるんだかと思ってな。……綺麗だぜ、アツキ」
「は!?なっ、何ね急に!そっ、ば、バッカ!」

多分、誤魔化されている。
でもヒノケンの言葉は真剣で。
熱い眼差しで告げられたら、どうしようもない。

「け、ケンイチは…カ、カッ…コ…」
「んん?何だよ言えよ」
「…お、お目出度い…だ」
「"カッコ"とその先は何処に行ったんだよ、全然違うじゃねぇか。そもそもお目出度いって何だ、紅白だからにしても明らかに馬鹿にしてんだろ」
「る、るっさい!ケンイチにはカッ、カッコいいとか100年早ぇだ!そンで充分だべな!」

結果的には本心の感想を晒した形。
燃える炎の様な赤髪に新郎用の白いスーツのコントラストはよく映え、ヒノケン自身の体躯の良さもあって、正直なところかなり似合うのは間違いない。
ドキドキが止まらないアツキの頬には朱。
紅白でお揃いに。

「わあっ、お二人とも…よくお似合いです!」
「え、あ、そっ、そうだか?」

普段と違う特別な衣装に身を包んだとしても、会えば普段通りのやり取りをしていた二人の元に、スタッフの女性が祝福を込めた声色で話し掛ける。
その手に持っているのは、カメラ。

「そちらのドレスとスーツで宜しければ、写真を撮らせていただきますが…如何ですか?」
「写真だか?」
「はい!一番気に入っていただいた衣装で写真を撮る事までが、試着体験の内容ですから」
「そだったか…オラは、このドレスで良いだ」
「俺もこのスーツで良いぜ。…って事で、よっと」
「わひゃあっ!?」

お互い選んだ衣装が気に入っている確認をした途端。
ヒノケンはアツキを抱え、いとも簡単に姫抱っこ。
突然、身体が浮いて驚いたアツキは反射的に…支えを求めようとしてヒノケンの首に腕を。
でもそんな事をしなくても確と抱え上げられていて、絶対に手放したりしないと伝わって。

「……ケンイチ」
「へっ…カメラの方を向けよ。笑顔で、な」
「…ン!おねーさん、撮ってほスぃだ!」
「はぁい!それでは撮りますよー!」

カメラに向けられた二人の笑顔。
ホントウの結婚式の様に、眩しいけれど。
いつか六月の花嫁と。
永遠の炎を誓う日には、もっと素敵に笑える筈。

■END■

◆ヒノアツ♀でジューンブライド!…は、アツキちゃんにはまだまだ早そうですね(*´ω`*)
しかし恐らく、ヒノアツ♀でのジューンブライドなお話は今回だけの事になりそうです。
何年か先の設定で、プロポーズや本当に結婚式を挙げるヒノアツ♀というのも勿論…女体化を扱うなら考えても良いんじゃないかと思うのですが。
今回のお話を書き上げた時点では、これで充分に二人の「結婚」に因んだ事は書けたと気持ちが満足しているので。これ以上は今は不要というトコロです。

充分に思う一因には、冒頭にも書いた通りEXE4のシナリオ「ヒノケンの恋」について、わりとガッツリ自分の解釈を書けたというのもあると思います。
タコ焼き屋のお姉さんが残してくれた最も大切な事は、誰かに対して「死んでほしくない」と思えるココロが、まだヒノケンには存在していたと気付かせた事で。
1や3のヒノケンの発言からすると、この気付きって本当にヒノケンにとって衝撃的な事だったんじゃないかなって…だけどシナリオで見ると、そうなのかよく分からなかったりで…
何でそこまで改心したの?と、正直レッドサンのEDでは思ったりもしていましたが、やっと自己流の解釈ではありますが…一番しっくりくるココロの動きが書けたかなと(*´∀`*)

ちょっとタコ焼き屋のお姉さんについてに寄ってしまいましたが、辿り着くのはヒノアツ。
指輪のくだりとか、ヒノケンとアツキちゃんだから書けたので…えへへ、楽しかったです◎

2021.06.20 了
clap!

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