【Rockman.EXE@】
貴方の傍で、ゆめをみる
◆シチュが似ていた短いお話2本入り
ベッドの中でsweet&bitterな貴方の夢を



【sweet…】

ゆるゆると眠りから目覚める。
カーテンの向こうには陽光の気配が窺え、既に朝を迎えているらしい。
けれど、まだ、ベッドの中で。
隣で眠る―――アツキを見ていたい。

「…すー…んん…」
「…呑気によく寝てるぜ。まあ、昨晩は相当…可愛がってやったからな」

アツキが起きぬよう、眠る様子を見詰めるヒノケン。
室内をカーテンで閉じられた二人だけの世界は、仄かな朝日だけを通し。
ほんのりと捉えるアツキの寝顔。
未だ夢の中に居る心地。
その中でヒノケンは昨晩の情事を想い返し、自然と口角が上がり笑む。
飽くこと無く沸き上がる熱のままに、アツキを。

(何だってんだろうな、俺の好みはもっと―――)

「……ン?…オッ…サン?もう朝…だべか…?」
「ああ、起こしたか?」
「…いンや、普通に目が…ンでも…あふ…」
「寝たけりゃ、もう少し寝ていろよ」
「……んんー…だけンと…」

どうやらヒノケンが起こしてしまった訳では無さそうだが、ふうっと目を覚ましたアツキはとろとろとした双眸をヒノケンに向けて夢と現の狭間。
その蕩けた眼差しには、何処か色を孕んでいて。
紛れもない昨晩の…余韻。
アツキは暫し寝惚けた眼でヒノケンを見ていたが、本能的に熱を求め。
もぞりとベッドの中で蠢くと横向きのヒノケンの胸元に顔を埋めて、ぎゅ…と抱き付く。

「へっ…可愛いじゃねぇか」
「…あったかくて、気持ちいいべ…」
「おいおい、別の意味に聞こえンぞ…へっへっ…」

昨晩の余韻が残るのはヒノケンも同じ。
無防備に自分を求めようとするアツキを前に、朝が来たからといって情欲は眠らず。
ムラ…と身体の芯から滾り沸く、堪らぬ欲に従い。
ヒノケンは胸元のアツキを抱き寄せると、掌をスルリとお尻に這わせ。
さわさわと撫で愛でる。

「ン…もぅ…どこ、触ってるンだ、べ…」
「お前がカワイー事を言うからムラっときたんだよ」

さわ…むに、むに…

「もっ…こンの…エロオヤジ…は…」
「やっぱり可愛いケツしてるよな、お前。俺の好みだぜ…へっへっへ…」

―――それ以外、は。
ガサツだし胸は無ぇし喧しいしオッサンオッサン言うし胸は…どう見ても無ぇし。
「好みだと思っていた女」に当て嵌まらねぇのに。
こんなにも夢中になってやがる。
…当たり前だ。

俺のココロを最も熱くさせる。
「俺と同じ炎を宿している」のだから。

今まで「好みだと思っていた女」なんてのは、勝手に組み上げていた思い込みでしかねぇと。
アツキは、俺に。

…むにむに…すりっ…すり…

「むー…オッサン…」

パジャマ越しでも掌に吸い付く双丘の感触。
抱き寄せるアツキの体温も心地好く。
まるで夢の中で、ひとつになっている―――熱。

「……むにゃ…すー…すぅ……」
「…は…おいおい、ケツ揉まれながら寝るのかよ」

そもそも眠り足りなそうではあったが。
ストンと呆気なく夢の続きを見始めたアツキに、ヒノケンは拍子抜け。
胸元ですうすう寝息を立てる姿を、少しだけ抱き寄せを緩めて確認する。
もう幾ばくか堪能したら、昨晩の続きと。
そう考えていたが安らかな寝顔を前にして…ココロでくすぶる情欲の火種を閉じ込め。
代わりに―――らしくない程、優しい口付けを。

……ちゅ…っ……

「ン、ん…」
「……へっ…アツキ……」

こんなヌルいとろ火の様な熱なんて。
全く全く、好みじゃなかった筈なのに。
燃え盛る炎よりも、ずっと、アツい。

「…俺も寝るとするか」

静かに瞼を閉じてアツキの寝息を聞けば。
何時しかヒノケンは、自身の身体もアツキの身体も形を持たぬ炎に還ったかの様な錯覚を覚え。
ゆるりと熱を交わし合い。
見るのはきっと、同じ夢。

■END■

◆診断メーカー様の結果から。

アツキの寝惚けた様子に朝からたまらない気持ちになっておしりをさわさわ撫でると、途中ですやすや眠ってしまいました。
#大好きだから意地悪したい #shindanmaker
https://shindanmaker.com/716347

なにコレ可愛い(確信)
お尻さわさわされながら寝ちゃうアツキちゃんとか、ヒノケンより自分の方が堪らんわ!とか意味不明な荒ぶりのままに書いておりました。まる。
アツキちゃんの胸はドンマイな感じですけど、お尻に関してはヒノケン好みっていう設定が密かにありまして、それを出す機会になりました(笑)



【bitter…】

常夜灯ひとつ、月明かりが照らしている様な。
先程まで情熱的な男女の交わりがあった、そんな室内は…今は静かに。
とろりとした心地好い余韻に浸り、微睡みの中に誘われようという夜半。

……モゾ…ぎゅ、っ……

「…寝てなかったのかよ」
「誰かさんのせいで疲れとるけンと、何となく…まだ寝たくねぇべ」
「言うわりに、珍しく甘えるじゃねぇか」

ベッドの中のヒノケンは、隣で横になるアツキが既に眠っているものと思ったが。
不意に身体をこちらに向けたかと思うと黙って胸元に縋り、しっかりと捕らえる。
それをからかいを含めて「甘える」と表したヒノケンだが、何かが―――違うとは解っていた。
決して離すまいと、逃がすまいとする様な。

「…オッサンは…こうして捕まえとらンと、何処かに行きそうな気がする」
「…馬鹿言えよ、少なくともお前を手放すってのは無ぇ。俺の女だ…傍に居させる」
「ホントだべか?」

縋り付く胸元から顔を上げ、アツキはヒノケンを射抜く様な瞳で見詰め。
常夜灯の明かりは最低限、僅かな光。
そんな弱々しい光の中に浮かぶアツキの瞳が、どうしてか眩し過ぎて。
反射的に目を逸らしたくなる衝動をヒノケンは抑え込み、射抜く瞳を見詰め返す。

…きゅむっ…

「…手…あったかい、身体もだけンと。手が…一番」

暫しの沈黙が流れた後。
そっと、本来の体温以上に熱く感じさせられるヒノケンの手を取ると。
この手が自分に触れていない箇所は自身に残っているだろうかと、アツキは想う。
熱を持った指先で隅々まで触れられた、その手。

「アツキ…俺は…」

―――「今の俺」、は。
確かに犯罪からは足を洗った。
けれど、犯罪で染めてしまった手は、そのまま。
そんな手でアツキを繋ぎ止めておく事が。

「……」

アツキに握られている自分の手にヒノケンは目を合わせると、仄かな常夜灯の中でも色の識別は出来る、出来る筈なのに見えている色は何なのか。
黒い、ドス黒い。
まるで手そのものが炭になってしまっているかの様。
アツキを…穢してしまいそうで。
"本当か"を問うアツキに返す事も出来なかった。
返そうとしたその時、嘘を吐いてきた口の中には黒い煤の苦味が広がり。
無かった事には、ならない。

「……ケンイチ……」

言葉を躊躇うヒノケンの口唇に、何も知らない筈のアツキは自らの口唇を重ね。
それだけでも普段には珍しい事なのだけれど。
アツキの柔らかな口唇が重なりながら蠢いたかと思うと、舌を覗かせ。
ヒノケンの口唇を、そうっと舐める意味は。

…くちゅ…っ…

「…ふ…ン、ん…」

アツキからヒノケンの咥内を求め、舌を交わらせる。
拙い舌使いながら懸命に求める様は愛しさを覚え。
同時に、罪悪をも想う。
自分の咥内は―――苦くないのだろうか?
しかし拒めば、アツキには更なる不安の種火を点してしまう事になりかねない。
けれど…自分を拒まずにいるアツキに、救われる想いも抱いてしまって。

……ちゅ……

「…なあ、アツキ」
「何だべ?オッサン」
「苦く……なかったのか?」

だから。
拒まれない筈だと信じたココロは問うた。
自分の咥内に広がり蝕む…煤けた罪の苦みは、果たして在ったのかを。
嘘偽り無いココロと口で。

「……苦いって、オッサン別に煙草を吸ったばかりでもねぇべ?そげな事とか感ズなかっただ」
「そう、か」
「ンっとに、おかスなオッサンだなや」

知っとるけンと、と付け加え。
ヒノケンに向けてアツキは笑顔を向ける、少しだけ…儚い夢の様な笑顔。
過去に何かがあった事だけはアツキも感付いている、それを知る時は。

「オッサン…まだ、今は」

笑顔から一転、アツキは目線を下げて物憂げな。
らしくない面持ちで静かに口を開く。

「オラが…もっとちゃんと、オッサンと向き合う事が出来る…そン時まで」
「……そうだな、アツキ……」

拓かれている身体。
それでもココロは未だ少女。
まだ、夢を信じていても。

「だけンとオラは、きっと…受け入れる。だから」

どうか今は、貴方の傍で夢を見させて。
優しい嘘でも、構わない。

■END■

◆アツキにしてもアツキちゃんにしても、ヒノケンが元WWWな事を知っているのかどうかって事に触れて書いた話って無いなあと。唐突に気が付いたので。
まあ知らないですよね、解っていないから「オッサン」連呼も出来ただろうし…一般人の間では素性をバラさないまま6で完全に足を洗ってるという形なんだろうなと。
とはいえ「手を染めた」のはそのままだから、ふとした時に迷う時があったりするのかな…と思ってみたり。それは改心したからこそ、ですね。
でもエグゼ世界、日暮さんだってそうで…リーガルなんかも良いのかそれでってくらい寛容だったりするから、深く考えなくてもいいかも(台無し)
というかアツキと喧嘩した時の火災っぷりの方がWWW時代よりも酷い気がする件、秋原の一部とパークエリア丸々を炎上させてるもんな(苦笑)

2020.08.08 了
clap!

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