【Rockman.EXE@】
ハロウィンの見習い魔女
「とりっくおあ、とりーとー!オッサン、お菓子を寄越スべ♪」

毎度毎度の事ではあるが、この娘さんの行動はいつも唐突である。
何処で調達してきたのやら、御丁寧にウイッチハットとローブを装備して。
それで英語の授業は大丈夫なのかと心配したくなる、完璧なニホン語英語発音で。
アツキは、ヒノケンにハロウィンのおねだりをしに来た訳である。

「…ファイアマンにでも頼め…つうか今、ハロウィンメニューのメシと菓子を作ってるだろ」

いい加減、アツキが突拍子も無いのはヒノケンも承知の上で。
そして火野さん家は、ある意味アツキ以上にハロウィン気分満載状態らしい。

「勿論、ソレも食べるけンど…オラはオッサンから欲スいンだべ♪」

えいっ、と。
ソファーで寛いでいたヒノケンの上に乗って、アツキは催促の続きをする。
そのついでに、被っていたウイッチハットをヒノケンの頭にちょこんと乗せてみたり。

「あはは、オッサンには似合わねぇべな」
「ったく、何処でこんなモン手に入れてきたんだ」

乗せられたウイッチハットをアツキに乗せ返して。
これまたついでに、ぐりぐりと頭を撫でてみる。

「へへ…ま、とにかく…お菓子を寄越さないっちゅーなら、悪戯スるべよ?」
「お前の悪戯はタチが悪そうだな」

半ば呆れながら、自分の上に乗るアツキを支えて皮肉混じりに返答をするヒノケンだが…
実際のところ、「Trick」を選んだ日には…アツキの事だ。
「悪戯」と称して大切なデータを燃やし破壊しかねない。

「ヘヘン、分かってるでねか…だ・か・ら、大人スくオラにお菓子を寄越スた方が身の為だべ♪」

お前は俺に何をする気だ。
と、ちょっと思ったが…それはそれ。

まだアツキは、ズルい大人の曲解悪知恵具合を理解しきれていない様だ。

「分かった分かった…じゃあ"Treat"を選ぶぜ」
「え?本当だべか?オッサ、ン…んっ…!ンふ…ぅ…っ…」


くちゅ…


水音が響く、濃密なキス。
けれど、味わう様なソレに激しさは無くて。
ゆっくりと侵食され、身体全体に染み渡る痺れは―――


やけに何時もより、甘く感じられた。

ちゅっ…


お互いの口唇からは、名残惜しそうな音が零れ。
閉じていた瞳を開ければ目線が交わって、アツキは思わず顔を伏せる。

「…なっ、何をスるべオッサン…」
「"Treat"を選ぶ…って言ったじゃねぇか」

ヒノケンから離された唇は、酷く甘さを欲している。
お菓子なんかよりも…もっと、ずっと。

「甘いモンをくれてやれば、悪戯はしねぇって事なんだろ?」
「う゛〜〜〜〜〜…こンの…屁理屈ばーっかこねるオッサンは…」
「気に入らなかったか?」

意地悪な笑みを浮かべながら、アツキの様子を窺うヒノケン。
分かってる、クセに。

「…ふーンだ、お菓子でねぇから…やっぱり、悪戯スてやンべ!」
「何だよ、素直じゃねぇな」
「…ンでも…」

ぎゅうっ、と。
アツキはヒノケンの首に腕を回し、ゆっくりとその身体を押し倒してソファーに沈める。
暫く何も言わず、ヒノケンの身体を抱き締めていたけれど。
腕に込める力を一際強くしたのを切欠に、ヒノケンの耳へ口唇を寄せた。

「…もっとくれる、っちゅーなら…悪戯スないでやってもいいべ…」
「へっへっへ…ったく、素直じゃねぇ上に…欲張りな嬢ちゃんだな」
「ふ、ふン…で、ど、どうするンだべっ」

自分で言ってからに、顔を赤くしているアツキにヒノケンは笑みを漏らして。
そんな、朱に染まっている顔を自分に向けさせる。

「悪戯されちゃ堪らねぇからな…たっぷり、甘いのをくれてやるぜ…」

もう一度、口唇は重ねられて。
蕩ける様な甘さは…より深みへと浸透を始めてゆく。


Trick or Treat?

No.

Trick or Sweet…

Happy.
Happy Halloween!!


■END■

2020.02.08 加筆修正
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